軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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運動会当日、私は来賓の方々へ先生方とともにご挨拶に回ったり、朝から忙しかった。

瑞鸞の誇るピヴォワーヌメンバーと吉祥院家の肩書を、先生方にフルに利用されている気がする。

そしてそれは隣の円城も同じだ。

その後はすぐに、実行委員のテントに戻って放送案内係だ。

こういうのは放送委員がやるものだと思っていたのだけど、放送委員は運動会で流す音楽などを担当して、マイクは握らないらしい。

放送係は、競技に出ていない委員が順番に担当していく。表の仕事が苦手な人は裏方に回る。

もちろん私も裏方志望だ。あがり症なので、案内放送なんて確実に声が震える。

プログラムと原稿の内容に不備がないか確かめてから、放送係に渡す。

そのほかにも、リレーのコース取りの為に、ポイントで旗を持ってひたすら立っているような地味な仕事をこなす。

お母様に塗りたくられた日焼け止めが役に立ちそうだ。

先生から頼まれた雑用をこなして、テントに戻るとやっと一息つけた。

冷たいお茶を飲んでボーッと障害物リレーを見物する。

やっぱりパン食い競争とかはないのねー。それがあんぱんだったら絶対出たのに。

「吉祥院さんは本当によく働いてくれるね」

先生のひとりに声をかけられた。

「そうですか?ありがとうございます」

「午前中は動きっぱなしだったろう?午後はほかの人にまかせて、少し休むといいよ。吉祥院さんはなんの競技に出るの?」

「借り物競争です」

運動神経よりも運に左右される、わりと無難な競技かなと思ったのだ。

あとはダンスとか徒競走とか大玉送りとか。

徒競走は嫌だな~。なんとか3位までには入りたい。

借り物競争の順番が来たので、クラスに戻る事にする。

借り物競争、変なお題が出ないといいなー。メガネとかそういうのがいい。

一応、客席を見回して、どこにどんなアイテムがあるか確認しておく。

取り乱してみっともない姿だけは晒さないようにしないと。

一緒に出るクラスメートと「頑張りましょうね」などと励まし合う。

うー、ドキドキしてきた。

借り物競争が始まり、お題を引いた生徒達がアイテムや人を求めて右往左往している。

頼む、簡単なお題!

私の番が来て、引いたお題は「足の速い友達」

誰だ、それ。

私は頭で考えるより、体が先に動いてしまった。

私が知っている足の速い友達はただひとり。

「秋澤君!一緒に来て!」

驚く秋澤君の腕を引っ張り、ゴールを目指す。

秋澤君は何がなんだかわからないながらも、一緒に走ってくれる。

秋澤君と一緒にいた男子達がわあわあ騒いでいる。誤解すんな。

ゴールして係員にお題の紙を渡すと、それをマイクで読み上げられた。

確かに秋澤君はリレーの選抜メンバーだ。

私はなんとかクラスに貢献できる成績を出せた。

「足の速い友達かぁ。いきなりびっくりしたよ」

「うん、ごめんなさい」

秋澤君しか思い浮かばなかったんだよ。「足の速い友達」じゃなく「足の速い人」だったらほかの人も思い浮かべる事ができたかもしれないけど。

「違うクラスに協力して、僕みんなに怒られるかも」

そう言いながら、秋澤君は笑っていた。

もしかしたら面倒事に巻き込んじゃったかもしれない。反省。

「もし誰かにからかわれたり何か言われたら、私に言ってね。対処するから」

「大丈夫、大丈夫」

すると今度はゴールにいた私に、借り物の依頼が来た。

ほかのクラスの男子に引っ張られ、走らされた。私のお題はなんだ?

一度お題の場所まで戻り、ゴールまで走る。

ゴールで読み上げられたのは「頭にリボンをつけている子」

良かった。「頭を縦ロールにしている子」じゃなくて。

今回の借り物競争のお題は人が絡むものが多かった為、特に秋澤君と妙な噂になることもなかった。

迷惑かけたらどうしようかと思ってたので、ほっとした。

ちなみに「好きな人」というお題が出て、無謀にも鏑木に声をかけた女子は見事玉砕した。

無茶すんな。

午後もテントでお仕事だ。

要領がわかって、午前よりも楽になった。

今もパイプ椅子に座って、競技を見物している。

選抜リレーと共に、運動会の目玉は5、6年男子合同の騎馬戦だ。

クラスから二騎選出し、ハチマキを取り合う。

私達のクラスからも男子達が騎馬を作って出場するけど、今年は大本命と言われる騎馬がいる。

鏑木が出るのだ。

もちろん騎手で。

ヤツが馬などやるはずがない。

鏑木と同じクラスの菊乃ちゃんが興奮して教えてくれた。「これで騎馬戦は私達のクラスが優勝だわ!」と。

そんなこと言って、いきなり始まってすぐに落馬したら笑えるのに。

なんて思っていた私が愚かでした。

スタートの合図とともに、鏑木の騎馬は縦横無尽に駆け回り、次々にハチマキを奪い去っていく。

果敢に鏑木と対決する騎馬もいたけど、体当たりされ、鏑木に腕をひねりあげられ、あっという間にハチマキを奪われ落馬した。

もう実力差がありすぎた。

あんた達、これ相当練習しただろうってくらい、一糸乱れぬ動きだった。

馬役の子達にしてみれば、万が一鏑木を落としでもしたら、多くの人間を敵に回すことになるので、必死だろう。

怯えて逃げる騎馬がいようものなら、その後を追いかけ背中を刺す。

肉食動物の狩りみたいだ。

ほかの騎馬達はさぞや恐ろしかろう。

私のクラスの騎馬達もいつの間にか終わっていた。いやいや、君達もよく健闘したよ。

「あ~あ、雅哉も容赦がないなぁ」

後ろに座っていた円城が苦笑いしていた。

うん、本当に容赦がない。

結局最後は鏑木率いる騎馬だけが残り、完全勝利を収めた。

後日、騎馬戦での鏑木の勇姿を誰かが英雄ナポレオンに例えて、やがてそれが皇帝に変わった。

これが鏑木が、後々まで皇帝と呼ばれることになるきっかけだった。