軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32

秋になり、また運動会の季節がやってきた。

高学年になると、運動会の実行委員という役目が回ってくる。

そしてなぜか私のクラスからは、女子の実行委員に私が選ばれてしまった。

特別運動神経がいいわけでもなく、企画力や行動力があるわけでもない私がなぜ?と最初は思ったけど、どうやら先生の、下級生をある程度従わせる事ができるだけの権力を持っている生徒のほうが、スムーズに事が運ぶだろうという思惑があったようだ。

正直言って、面倒くさい…。

小学生なので、実行委員といってもそれほど大した仕事はない。

クラスごとに提出する各競技の参加生徒が書かれた紙をまとめるとか、先生の雑用係とか、まぁ細々とした事ばかりだ。

そして当日も実行委員のテントで、進行を担当するらしい。

本格的な運動会準備が始まる前に、5年6年で構成される実行委員が集められ、初の顔合わせがあった。

その中には、円城秀介の姿もあった。

女子生徒達は色めきたった。まさかあの円城が実行委員なんてやるとは思わなかったらしい。私も同感だ。

他の委員達の顔ぶれも見たけど、たぶん円城も私と同じ理由で抜擢されたんだと思う。

プティピヴォワーヌのメンバーなんて、私と円城くらいだ。

でも円城なら私と違ってはっきり断れそうなのにな。

意外と協調性のある人間なのか。

そういえば、君ドルの中では皇帝と周囲の調整役だったっけ。

実行委員の自己紹介が行われ、実行委員会の仕事の概要の説明があった後、いざ仕事を始めようとした時に、問題が起こった。

女子達が円城をわらわらと取り囲み、まるで仕事をしないのだ。

円城本人は、プリントを印刷したり部数ごとにまとめたりと、真面目に働いているのだが、彼を取り巻いている女子達は円城に話しかけるだけで、全く手が動いていない。

ほかの男子委員達から注意されても、「円城様を手伝っている!」と言い張り、それどころか「自分達がモテないから嫉妬~?」とバカにされ、男子達はそれ以上何も言えなくなってしまった。

円城にも注意されて、一応は働くようになったが、そばから離れるような仕事は一切拒否だった。

これ、完全に人選ミスでしょう…。

そんな中、私は騒ぎから離れた席で、黙々とプログラムを折っていた。

円城大奥のせいで人手が足りないので、大変だ。

プログラムは外注で届くのだが、なぜかふたつに折るのは実行委員に回ってきた。

どうせ外注するなら、最後までやってもらえばいいのに。よくわからん。

紙は手の水分を奪っていって、上手く1枚ずつ取る事が出来なくなった。

困った…。指サックがあればいいんだけど。

キョロキョロと周りを見渡すと、指サックはなかったが、輪ゴムがあった。

指先に輪ゴムを巻く。

紙を取る。

おぉっ!取りやすい!

はかどる、はかどる。

取っては折り、取っては折りをマシンのように繰り返す。内職ママさんが取り憑いたかのように、一心不乱に作業する。

通りすがりの男子が「えっ、輪ゴム?!」と呟いていたが、気にしちゃいられない。所帯じみていようが効率重視だ。

大奥の女どもの楽しげな笑い声が響く。働け。

それからも実行委員の女子達は円城主体に動いていて、ほとんど役に立たない。

ほかの男子委員達はとっくに諦めたらしい。

そのぶんこっちにどんどん雑用が回ってくる。

次の日からは、ラメ仕様の指サックも用意した。肩こり用の無臭液体塗り薬も完備だ。

すっかり事務作業が板についた。

コピー機の扱いもお手の物。縮小、拡大、両面コピーなんでもござれだ。

6年生の男子委員長は「さすが吉祥院さんだね」とおだてて、雑用を押し付けてくる。

そんな見え透いたお世辞に騙されるもんか。

でも断れないので、コピーしたプリントを束ねてホッチキスで打つべし、打つべし、打つべし。

あれ?おかしい。

私は特権階級のピヴォワーヌメンバーで、女子の中でも上位カーストに位置しているはずなのに、気が付けば一番パシられている。

あまりにも有能な、内職麗華に成長しすぎたか。

大奥の女どものするべき仕事を丸ごと被っている気がする。

くっそー!あいつら働け!

ある時、下級生のクラスで、競技の参加選手に重複があったので直接クラスに注意しに行く事になった。

こういう時はピヴォワーヌの威光を背負う私と円城が行くべきなのだが、円城が動けば大奥も動いて、御鈴廊下状態になりそうなので、私ひとりで行く。

問題の3年生のクラスは休み時間で、特に男子がなかなか言う事を聞いてくれない。

ここ最近の実行委員のストレスで、すっかり私の心はやさぐれていた。

あんた達、この私を誰だと思ってるの!吉祥院麗華様よ!!天下の!!

と心の中で叫ぶ。

口に出して叫ぶ勇気は全くない。

くっそー!どいつもこいつも!

女子生徒は私の言う事をよく聞いてくれ、協力してくれようとしているのだけど、一部の男子が言う事を聞かない。

っていうか、あんたが重複選手だろうが!話聞け!

「ですから、この競技は両方出ることは出来ないのですわ。どちらか一つを選んで、残りは他の生徒に出てもらってください」

「えーーっ、それじゃ勝てないじゃん!」

知るか、ボケ。

「とにかくこの二つの競技に両方出る事は出来ないのです。こちらの競技が終わった後、すぐに始まってしまうので、間に合わないのですわ」

「じゃあ走っていく」

「そういう問題ではありませんわ」

なんだこのバカ、本当に瑞鸞の生徒か?

前世の公立小学校の男子達を思い出すなー。

「ちょっと麗華様の言う事聞きなさいよ!」

「は?知らないし」

なんだと、こら。

梅干しの刑をお見舞いすっぞ!

そのうち、私を放って女子対男子の言い争いになってきた。

あぁもう収拾つかない。

「はい、そこまで」

円城がパンパンと手を叩きながら教室に入ってきた。

「桂木、あまり吉祥院さんを困らせないでくれるかな。いいからさっさと重複競技を訂正しろ」

悪童は円城の知り合いらしく、途端におとなしく従った。

騒がしかったクラスもすっかりおとなしくなり、女子は円城のその統率力にうっとりだ。

くっそー、これが本物のカリスマ性とハリボテの差か!

円城が来たことで、あっという間に問題も解決し、私達はそのまま実行委員の教室に戻る事になった。

「吉祥院さん、行くなら声かけてくれれば良かったのに」

「円城様の周りは賑やかで、忙しそうでしたので」

チクリと嫌味。

「あー、あれね。僕も困ってるんだけど。吉祥院さん、随分仕事まかされてるよね。僕も手伝うよ」

余計なのがくっついてくるから、いらん。

「大丈夫ですわ。円城様はご自分の仕事をなさって」

「そう?」

教室に戻ると、大奥の女どもが上様に群がる。

「円城様、私達も一緒に行きましたのに」

「これ、円城様に頼まれた仕訳、終わりましたわ!」

私は先輩に訂正してもらった事を報告して、残りの書類をまとめて職員室に持って行った。

あぁ、癒しが足りない…。