軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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春になり、私は5年生になった。

今年はクラス替えの年だ。

私の必死の祈りが通じたのか、今回も鏑木、円城コンビとは見事違うクラスになった。

自分の強運が怖い。

どちらか一人とは3回ある初等科のクラス分けで、1回くらいは同じクラスになってしまうかもと、心のどこかで思っていたのだ。4クラスしかないし。

それなのに、私のこの引きの強さときたら!

あぁ、これで初等科卒業までは静かに暮らせる。

5年生にもなると、下級生がどんどん増えて、鏑木、円城コンビに憧れるファンもどんどん増えていっている。

同級生の、ふたりの取り巻きの女子達は、「下級生のくせに私達の鏑木様、円城様に馴れ馴れしく近づかないで欲しいわ!」と睨みを利かせている。

特に彼らと同じクラスの女子達のガードは堅い。教室の外まで彼らを見に来た勇敢な下級生を絶対に寄せ付けない。まさに鉄壁のディフェンスだ。

そんな女子達の攻防を見ていると、奴らの外見に騙されるな!と言ってあげたくなる。

塾には蕗丘さんが入ってきた。

さんざん秋澤君が説明したはずなんだけど、やっぱり私に対しての疑惑は払拭しきれていないみたい。

本人は女子校だし、共学に行った秋澤君の事は心配でしょうがないんだろうな。せめて男子校だったらね。

「桜子。吉祥院さんが塾に来ればいいってアドバイスくれたんだからね。仲良くしなよ」

「…こんにちは。あの、誘ってくれてありがとう」

ちょこんと秋澤君の洋服の裾をつかんで、ご挨拶。

う~ん。和風美少女、これが守ってあげたくなる可愛さというやつか。

「こちらこそ。大好きな秋澤君と一緒に過ごせる時間が増えて良かったですわね」

「えっ」

「ちょ、吉祥院さん」

私の言葉にポッと赤くなる蕗丘さんと、あたふたと焦る秋澤君。

諦めたまえ、秋澤君。優しい君ではもうこの幼馴染から逃れることは出来まい。

可愛い幼馴染ちゃんが目の前でぽろぽろ泣いたら、秋澤君には突き放すことなんて出来なさそうだもんなぁ。

だいたい、男の子が守ってあげたくなるタイプって思う女の子って、同性からみたら普通の子よりもよっぽど根性据わってるしたたかな子が多いんだよね。

ほとんどの男の子はそれに気づかないんだけどね。

前世の私だって、何度利用され踏み台にされ、煮え湯を飲まされたか…。

いや、別に蕗丘さんがそのタイプって言ってるわけじゃないよ?

その初日のご挨拶以来、秋澤君が蕗丘さんと隣り合って勉強するようになったので、今の私は塾でひとりだ。

優しい秋澤君は一緒に座ろうと言ってくれたけど、蕗丘さんが嫌がりそうなので遠慮した。人の恋路を邪魔する趣味はありませんよ。

そんなわけで、私は久々にコンビニに行ってみた。

新作のお菓子があったので試しに購入。ついでに庶民の食べ物、納豆巻きも購入。

なかなかの収穫だ。

塾に戻って時間があったので、トイレに行っておこうかなと向かったら、中から女の子達の噂話が聞こえてきた。

「あの縦ロール、新入りに彼氏取られてたね」

「そうそう。振られてぼっちになってた」

「かわいそ~。振った男とその新しい彼女と一緒の塾って、きつくない?」

「ねー」

「縦ロール、プライド高そうだし」

「瑞鸞だもんねー。しかも縦ロールだし」

──なんという事だ!

私はどうやら、周りから彼氏を取られて振られた女の子として見られているらしい。

とんだ濡れ衣だ。

しかも私、陰で“縦ロール”って呼ばれてるんだ…。

縦ロールって…。せめてロココとかアントワネットとかにして欲しかった。

縦ロールじゃ何かのパンの名前みたいじゃないか。

うわぁ、落ち込むなぁ。

私、プライド高くないよ?髪型は縦ロールだけどさ。

マンガの吉祥院麗華だったら、そんな事を言われているのを絶対許さないだろうけど、私には乗り込んで行って文句を言う勇気なんて全くないので、そのままトイレを素通りして教室に戻った。

家に帰ってやけ食いした。

塾に関してはもうひとつ。

私は今まで塾では国語と算数のクラスのみに通っていた。

しかしいよいよ理科と社会科があぶなくなってきたので、今年度から理・社クラスにも通う事にした。

理科と社会に関しては、実は数年前から怪しかった。

私が小学生の時って理科と社会でこんな事やってた?っていうような授業内容だったのだ。もちろんやっていたのだろう。私がすっかり忘れただけだ。

私が覚えている小学校の理科は、磁石で砂鉄取ったな~くらいだ。星座の名前だって、覚えているのはオリオン座くらいだった。

使えない…。

社会科に関しては、市町村合併が激しくて、気が付けば知らない地名ばかりだし、都道府県の特産物もたいして知らない。それどころか山陰地方あたりは県の位置も怪しい。

川の名前わかんな~い。平野の名前覚えてな~い。

完全にほかの子供たちとスタートは一緒だ。

すでに前世の学力の恩恵は皆無だった…。

使えない…。前世の私、全然使えない!

毎日のんびりお菓子食べながら、ごろごろ少女マンガ読んでへらへら笑っているような惚けた生活送ってたからだ、バカ!

どうでもいいことはいっぱい覚えているのに、勉強はすっかり忘れているなんて!

家光将軍はホ〇だった、なんて腐ったことしか覚えていない脳みそなら、いっそ潔くすべてを忘れてしまえ!

それでもこれまでは、自力で予習復習と、お兄様に家庭教師をしてもらって凌いでいたけど、授業内容は難しくなっていくし、お兄様も受験勉強があるのであまり邪魔も出来ないしで、塾に通う事にしたのだ。

通い始めた理科、社会クラスには、瑞鸞の男子生徒も何人かいた。でも秋澤君のように私に話しかけてくる子はいなかった。

なんかやたらこちらをチラチラ見てはくるけど。

ふんっ、縦ロールにびびっているな。

こうしてみると、秋澤君という子は貴重だったんだなぁ。

失ってみてわかる、秋澤君のありがたみだ。

あの人懐っこいリスな笑顔が懐かしい。

ちょっとセンチメンタル気取りの今日この頃。