軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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秋は相変わらず、運動会に学習発表会と忙しかったが、運動会では選抜リレーでアンカーの皇帝が、最下位だったクラス順位から、まさかのごぼう抜きで1位に躍り出るという偉業を成し遂げたので、女の子達の黄色い悲鳴で大変な騒ぎになった。

「リレーは残念でしたわねぇ。秋澤君のクラスは」

秋澤君のクラスは皇帝に抜かされるまでは1位だったのだ。

しかも秋澤君はアンカーだった。

「相手が鏑木君じゃしょうがないよ。円城君が出てたら違ってたかもしれないけどね」

実は秋澤君は円城と同じクラスだ。

今回、円城は運動会前に足を怪我したとかで、リレーやその他の主だった競技に参加できなかった。

「でもアンカーだし、秋澤君って足早いのね。確か去年もリレーに出てましたよね」

「アンカーは怪我した円城君の代わりに、直前に回ってきたんだけどね。走るのは嫌いじゃないよ。中等科に上がったら陸上部に入りたいんだ」

「へぇ」

中等科に上がった時の事まで考えた事なかった。

そもそも私、特にやりたい事もないんだよな。強いて言えば駄菓子の買い食い?

う…我ながらひどい。

「吉祥院さんは玉入れに出てたね」

「えぇ、1位でした」

玉入れには、足を怪我していても出来るという事で円城が出場していたが、円城と同じクラスの女子達が玉入れより円城のそばに寄ろうと、違う競争をしていたので、秋澤君のクラスの順位は悪かった。

私は他のクラスのそんな騒ぎを尻目に、せっせと玉を拾っては投げを繰り返し、玉入れマシーンと化していた。

運動神経がさほど良くない私は、他の競技ではほとんどクラスに貢献できなかったので、せめて玉入れぐらいは頑張りたかったのだ。

1位が獲れて満足、満足。

「運動会が終わってしばらくは、鏑木君の教室に女子達が押しかけて、凄い騒ぎになってたね。結局最後は鏑木君が怒っちゃったみたいだけど」

「そうでしたわね」

でもあの騒ぎは毎年の事だから。

普段から鏑木雅哉の周りでは女の子達が騒いでいるけど、運動会などのイベントの後はその規模が大きくなる。

毎年ブチ切れられているんだから、いいかげん学習すればいいのにと思うんだけど。乙女達の恋心は止められないらしい。

「バレンタインも毎年大変な事になってますものね」

「確かにあれは凄かった!廊下にチョコ持った女子の列が出来てたし、机の上にはチョコが山盛りになってたよ。凄いよな~。僕なんてお母さんとお姉ちゃんと幼馴染だけだったよ」

「私も渡したのはお父様とお兄様だけです」

私は2年前から毎年、バレンタインデーにはお父様とお兄様に手作りのチョコをあげている。

今年はお兄様が遠慮して、「手作りは大変だから市販品でいいよ」なんて言ってくれたけど、私が大好きなお兄様への手間暇を惜しむものですか!

特に今年は大事な高等科の内部受験もあったから、合格祈願も兼ねて愛情たっぷりの手作りチョコをプレゼントしましたよ。

お兄様もおいしそうに食べてくれたから、大満足だ。

あんなに喜んでくれたんだから、来年もぜひ頑張りたい。

「あれ?吉祥院さんは鏑木君にチョコ渡さなかったの?」

「えっ、なんで私が?」

なんだその、不穏な発想は。

「いや、てっきり吉祥院さんも鏑木君の事が好きなのかと思って」

「それはないです」

思わずきっぱり否定。

冗談じゃない。誰がそんな恐ろしい事。

「そうなんだ。あ、もしかして円城君?」

「それも、ない」

だからなぜ、その二択しかないのか。

大体、あんなモテる人達はイヤだ。

客観的に見て確かにかっこいいと思うけど、あれだけモテる人はライバルが多すぎて怖いもん。

う~ん。しかし好きな人か…。

そういえば今の世界では、好きな人って出来た事ないな。初恋もまだなのか、私。

前世では、初恋は従兄のお兄ちゃんだったなぁ。

げっ!これって璃々奈と同じじゃん。

しかし私はあんなにはた迷惑な子ではなかったはず…。

確かお正月に凧揚げしたりして遊んでくれたから、優しくて好きになっちゃったんだよなぁ。

同級生の男子達みたいに乱暴じゃなかったっていうのがポイント高かったんだ。

前世の私の小学校の同級生の男子達は、掃除の時間にホウキでホッケーやって、とばっちりで女子にボールをぶつけてきたり、何が面白いのか牛乳一気飲み競争したり、遠足に持って行った私のお菓子を横取りしたあげく、「こんなモンばっか食ってるからデブなんだよー!」などという捨て台詞まで吐くような大馬鹿者ばかりだった。

なにが「デブ」だ、物知らずめ! あの頃の私サイズはデブではなく、ぽっちゃりだ。

ぽちゃかわさんだ。

あの愚か者には雪の日にギュウギュウに固めた雪玉をぶつけてやった。速攻隠れた。犯人がわからなくてめちゃくちゃ怒ってた。ざまーみろ。

おかげさまで瑞鸞には、あんな大馬鹿者どものような男子はいないけど、同学年には鏑木、円城という輝かしくも突出した男子2名がいるので、残念な事にほかの男子生徒の影がいまひとつ薄い。

もう少し年齢が上がれば、それぞれ個性が出てきてあのふたり以外にも、それなりにモテる子が出てくるとは思うんだけどね。

それまで耐え忍べ、不遇男子。

しかし、優しい男の子か。

私の周りの優しい男の子というと、お兄様と…

隣の秋澤君をジッと見る。

「えっ、なに?」

秋澤君も優しい子だよね。

塾では気軽に話しかけてくれるし、今では学院でいつも一緒にいる女の子達よりも、秋澤君としゃべっている時のほうが、素の自分が出てる気がする。

この前は帰りにドアを開けてくれた。紳士だ。

顔も茶色いリスのようで可愛い。

「あの吉祥院さん、僕なにかした?」

「いえ、別に」

にっこり微笑んでごまかす。

秋澤君は、優しくてとってもいい子なんだけど、なぜか「いいお友達」にしか思えない。

「いい人止まり」って、秋澤君の将来のポジションが見えた気がした──。

私がそんなろくでもない事を考えているとは露知らず、秋澤君はニコニコと塾の教材を机の上に出していた。

…ごめんよ、秋澤君。