軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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初めてのジョギングは、太陽が昇ったばかりの早朝だった。朝なのに元気いっぱいの笑顔で迎えに来てくれたのは、護衛の三原さん。

「おはようございます!麗華お嬢様!さぁ!今日から頑張りましょう!」

「おはようございます…。よろしくお願いいたします…」

庭で足を中心としたストレッチをした後、私達は家の周りをゆっくりと走り出した。

三原さんの提案で初日は3キロだ。私は3キロも走ったことがないと渋ったのだけど、これ以上短い距離では意味がないと言われてしまったのでしょうがない。

「今日はタイムを競っているわけではないので、自分のペースでゆっくり走りましょう!」

「はい」

三原さんに促されて最初は元気よく走ったが、門を出てしばらくすると、すぐにバテた。肺が痛くなってきたのだ。

「えっ!麗華お嬢様、どうしました?!」

「…苦しいです」

「まだ500メートルも走っていませんよ?!」

そんなの知りません。もっとペースを落とさないと3キロも走れないと思います。

私のひ弱な根性を、熱血体育会系の三原さんは許してはくれなかった。

「麗華お嬢様!それじゃあ歩くよりも遅いですよ?!しっかり!」

ムリです。苦しいです。もうギブアップです…。

1キロも走っていないうちから、私の呼吸はゼイゼイいいだした。上半身が前に傾き、手が犬かきのように空気を掻く。気管支が…気管支が、ヒリヒリする…。口の中に血の味が…。

「麗華お嬢様!もっと腕を振って!ほら、いっちに!いっちに!」

三原さんは併走しながら手拍子で私を鼓舞する。

「麗華お嬢様!自分に負けるな!」「麗華お嬢様!まだ半分も走ってませんよ!元気出して!」「ほら顔を上げてしっかり前を向く!はい!はい!はい!」

朝の高級住宅街に三原さんの声が響く。

苦しい…、なんで走ろうなんて考えちゃったんだろう…、エンドルフィン放出はまだか…。待てど暮らせどランナーズハイがやってこない…。苦しい…、苦しいよぉ…。

最後は三原さんに背中を押されながらも、私はなんとか家の周り3キロを走りきった。

ガクガクする足をもつれさせ、私はそのまま庭に倒れこんだ。芝生がチクチクするけど気にしてらんない。

「麗華お嬢様!ジョギング後のストレッチが残っていますよ!」

ムリです…。もう起き上がる力も残っていません…。心臓がドドドドドドド…ッて危険なビートを刻んでいます。

ぐったりと庭を転がる私の姿を、様子を見にきたお兄様が目を丸くして発見した。

「麗華、大丈夫か…?」

呼吸が戻らず声を出そうとするとヒューヒューと変な音がするので、首だけを振って意思表示をした。

「三原さん、どのくらい走ったの?」

「約3キロですが」

「う~ん、3キロでこれかぁ…」

お兄様の困った声が聞こえます。不甲斐ない私でごめん、ふたりとも。

「でも大丈夫ですよ!毎日走り続ければ体力もついてきますから!」

えっ!毎日走るの?!

拒絶したくても苦しくてしゃべれない。やだよ、すでに今日一日で懲りたっていうのに…。もう走るのやめたいよ…。

でも三原さんは私のジョギング専用の護衛さんだ。私の気まぐれに付き合わされたあげく、たった一日でやーめた!は、あまりに我がままだよね…。でもつらい…。

日差しも強くなってきたので、このまま転がっていると焼けてしまう。よっこらしょと、重い体をなんとか起こし、三原さんとお兄様に支えられながら室内に入った。そしてまた転がった。

三原さんの熱血叱咤激励のおかげで、私の醜態がお昼にはご近所中に知れ渡っていた。それに対し、外聞を人一倍気にするお母様激怒。最悪だ…。

次の日から、私達は車で家から少し離れた公園まで行き、そこで走ることになった。

しかしお母様の機嫌は未だ直らない。最悪だ…。

唯一の心の慰めは、ベアトリーチェからの“今日は5キロ走ったよ!”“今日は夜も走っちゃった!”というメールだ。私はひとりじゃない──。

お母様の損ねてしまった機嫌をとるためにも、私はお母様の勧めるデトックスプランに参加するしかなくなってしまった。

行きたくないな~。でもこれで私が行かないなんて言ったら、今度こそお母様が怒り狂うだろう。恥をかかせたペナルティとして、甘んじて受けるしかあるまい。

今回は去年の断食のようなダイエットプランではなくデトックスプランなんだし、そこまでつらくはないだろう…。

お母様と一緒に、今回のプランが開催される鏑木グループのホテルにやってきた。後ろからポーターさんが私達の大荷物を運んでくれる。案内された部屋にはお母様とお付き合いのある上流階級のマダム達が揃っていた。去年と似たような顔ぶれだ。この中にダイエットが好きなマダムがいてみんなを誘っているんだろうなぁ。迷惑なことだ…。

ふと見ると、そこになぜか着飾った舞浜さんの姿があった。

「あら、麗華さん。貴女も来たの」

舞浜さんが私に気づき、こちらに近づいてきた。

「ええ。舞浜さんもいらしてたのね」

舞浜さんの攻撃的な視線を、私は笑顔で受けた。

「断食に続き、今年はデトックス?貴女も必死ねぇ。そこまでして雅哉様のお母様の気を引きたいなんて」

はあ?

「誤解なさっているようですけど、私はあくまでも母の付き添いですわ。舞浜さんこそ、断食をあれほど小バカになさってたのに今年は参加されるなんて、どういった風の吹き回しかしら。将を射んと欲すればまず馬を射よ。ご自分がそうだからと言って、私まで同じだと思われるのは心外ですわ」

「なんですって」

ふん。舞浜さんに睨まれたって怖くもなんともない。あんたは今日も巻きが甘いんだよ。

私は笑顔でごきげんようと挨拶をし、その場を離れた。

なんだか面倒なことになりそうだなぁ…。

あっ、耀美さんだ!おーい!

舞浜さんの視線が背中に突き刺さっているけど気にしなーい。

全員が揃ったところで、鏑木のお母様がバーンと登場した。