軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11 吉祥院貴輝

僕には7歳年下の妹がいる。

この妹の様子が、最近おかしい。

妹は甘い両親に育てられたおかげで、我が儘で生意気な子どもだった。

思考や好みはいつも一緒にいる母の影響で、すっかり母のミニチュア版のようになり、これは将来、僕の通う学院にもよくいる、上流階級指向の、気位の高い令嬢になるんだろうなと、少し冷めた目で見ていた。

両親の事は尊敬もしているし、家族として大切にも思っている。

しかし両親の、自分達より下の者を見下す考え方は僕にはどうしてもなじめない。吉祥院の会社を支えているのは、むしろそういう人たちなのに。

僕は長男なので、いずれこの家と会社を継ぐことになるだろう。

その時僕は、父のやり方と対立するのかもしれないな。

妹の話だ。

母のミニチュア版だと思っていた妹が、初等科に入った頃から変わった。

なんというか、いい意味でバカになった。

無邪気と言ったほうがいいのかな?

そして、何かこそこそとやっている。

成績は悪くないらしい。前は我が儘を言って、時々行くのを嫌がったりもしていた習い事にも、真面目に通っている。

6歳のくせに道理をわきまえた態度をとるし、たまに子供には難しい事を言ったりもする。

そこだけ見ると、とても優秀な子に思える。

でもやっぱり、時々おかしな行動をとって、それが僕にはちょっと面白い。

最近の僕のマイブームは、そんな妹の観察だ。

妹は、前から僕に懐いてはいたけど、最近はその懐きっぷりが激しくなった。

僕を見ると嬉しそうな顔で駆けてくる。なんか子犬みたい。

見えない尻尾をブンブン振っている。

まぁこれだけ素直に好意を示されれば、実の妹だし、やっぱり可愛い。

そこで優しくしたら、更に懐いてきた。

ソファでは、僕の隣が定番席になったようだ。

妹が、ある日突然、塾に通いたいと言い出した。

家庭教師ではなく塾がいいのだと力説する。その理由は、胡散臭いものだった。

しかしその情熱だけは伝わったので、ほんの少し口添えしたら、満面の笑みで感謝された。

少し意地悪をするつもりで理由をつついたら、案の定目が泳いでいた。

やっぱり違う目的があるようだ。まぁ別にいいんだけどね。

目線の位置で嘘がばれるよ、と言ったらわかりやすいくらい固まった。

妹、反応が面白すぎ。

口を開けたまま固まった妹は、ちょっと間抜けな埴輪像みたいで、思わず笑ってしまった。

今度埴輪に変身したら、あの口に飴でも放り込んでみようかな。

目が右上を向いていたのは本当だけど、それ以外に実は妹には、本人も知らない癖がある。

妹は何かを笑ってごまかそうとする時、えくぼがピクピク動くのだ。

これは最近、懐いてくる妹と過ごす時間が増えたため、気が付いた癖だ。

その癖を、妹は全く気付いていないんだろうなぁ。

でも教えてあげるつもりはない。

だってその方が面白いから。

夏の旅行では、今までは母の影響で日焼けをしたくないとかで、あまり海に入りたがらなかった妹が、我先に海に走って行った。

スイミングスクールに通っている成果を見せたいのか、張り切って泳ぎだしたが、すぐに溺れた。

なぜあんなに自信満々だったのか不思議なくらいの、絵に描いたような溺れっぷりだった。

何をやっているんだ、妹。

その後は心配だったので、常に見張っていたら、僕の背中に乗っかって楽に泳ぐという技を見つけた。

あっちに行って、こっちに行ってと僕の背中で偉そうに指示を出すので、時々わざと波がかぶるように体を沈めてみたりした。

波をかぶってガボガボいってる妹が、間抜けで面白かった。

ごめんね気づかなかったと謝ったら、お兄様のせいじゃない、波が悪いと言われた。

バカな子ほど可愛いって本当だな…。

去年まではほとんど海に入らなかった妹なのに、今年は海に行きっぱなしなので、どんどん焼けてくる。

あとで母に怒られそうだから、日焼け止めをマメに塗りなおすように言ったのに、うん、うん、と適当な返事でまた海に入っていく。

案の定、真っ黒に日焼けした妹を見て、母はショックを受けていて、妹はオロオロしていたけど。

だから言ったのに。ホント、バカだなぁ。

ある日、家に帰ったら両親は不在で、ピアノ室に行ったら妹が何がそんなに面白いのか、やたら楽しそうに、猫ふんじゃったを弾いていた。

ブンチャッチャ~と変な歌詞までつけて、体を揺らしてノリノリで歌っていた。

でも夕食の時間、母に今日は何をしていたか聞かれて、「ピアノの練習をしていました。発表会の課題曲です」としれっと嘘をついた。

嘘つけ!お前の弾いてたのは猫ふんじゃったじゃないか!

いつからピアノの発表曲が変わったんだ!

妹はひとりの時、一体なにをやっているのか、凄く怪しい。

バレンタインデーには、僕がもらってきたチョコレートのチェックに余念がなかった。

集合写真を見せろと言われたが、絶対嫌だ。

僕を見てニヤニヤしていた。ちょっと気持ち悪い。

妹からも、手作りだというチョコをもらったが、学年末試験を控えているので、食べるのをためらった。

お手伝いさんに手伝ってもらったから大丈夫だと言い張るので、覚悟を決めて食べてみたけど、

……味がしなかった。

味のないチョコってなんだろう。

妹は自信満々の笑顔で感想を待っていた。とりあえず、おいしいよ、ありがとうと言っておいた。

来年も手作りなのかな…。

来年は内部受験もあるので、どうにか上手く回避できるよう、策を練りたい。

極め付けが、これだ。

ある夜、目が覚めて水を取りに行った時。

妹の部屋のドアが少しだけ開いていて、中から妙な声が聞こえてきた。

何事かと思い、そっと隙間から中をのぞいたら、ベッドライトだけが点いた部屋で、ベッドとクローゼットの間の床に座り、こちらに背を向けている妹が、不気味な笑い声をたてていた。

…………妖怪かと思った。

僕に気づかないで妹は、ブツブツと何かをつぶやきながら笑っている。

怖かったので、そのままそっとドアを閉めて、僕は自分の部屋に戻った。

妹は、なにか変な物に取り憑かれているのだろうか。

しばらく様子を見守ることにする。

そして夜中に妹の部屋に近づくのは絶対やめようと決めた。

他にもいろいろとあるけれど、妹のおかしな行動を見ているのは、やっぱり面白い。