軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第71話 国王からのお届け物

持ち帰った商会の案内書をルクスは使い魔のソルを庭に放して、屋敷の談話室で確認した。

二つの紹介の名は、バッハ商会、ベッシュ商会だ。

バッハ商会は以前、ルクスが商隊を護衛した商会だ。王都でも指折りの商会の一つで、食品・武具・家具・日用品など幅広い商品を取り扱っている。

ベッシュ商会は代々家具や日用品などを取り扱っている歴史ある商会で、堅実な経営をしており、多くの物作りの職人を抱えている。

「二つともいい感じだな」

ルクスはそう呟きつつ、書類を隅から隅まで確認する。

「ルクス様、ここにいらしたんですね」

ラエティティアは赤いベルベットの布に包まれた荷物を持っている。

「ん、ラエティティア、どうしたの?」

「王城から使いの方がいらっしゃって、ルクス様にこのお荷物を渡すように言われましたの」

ラエティティアは持っていたベルベットの布に包まれた荷物をルクスに渡した。

「うん、ありがとう。ラエティティア」

「いえ、どういたしまして」

ラエティティアはいつもと違い、視線をルクスに合わせたり、逸らしたり、そわそわしてる。

「ラエティティア、何かあったの?」

「え?いえ、その……」

頬を薄っすら赤く染めたラエティティアは意を決し、ルクスの目を見た。

「ルクス様、明日はアルヒ王国の建国祭ですね」

「あ、そうだね」

国月(マルクト) 十一日は、初代国王がアルヒ王国を建国した日とされている。

王都では建国を祝う建国祭が毎年行われていて、多くの恋人が祭りを楽しむ。

「もし良かったら、私と行きませんか?」

ラエティティアは真っ赤になりつつ、ルクスを誘った。

「良いよ。一緒に行こう」

「……!嬉しいです。ありがとうございます」

「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。ラエティティア」

「えっと、どういたしまして……私、用事がありまして、失礼します!」

恥ずかしさで、いたたまれなくなったラエティティアは、ありもしない用事を理由にして、談話室から出ていった。

女性から男性をお祭りに誘うという行為はラエティティアにとって些かハードルが高いことだったし、はしたないことだったから。

現代人としての感覚を持つルクスは、女性、しかも想い人に誘われて嬉しいという気持ちはあったが、ラエティティアの機微を察知することはできなかった。

「建国祭……後で、ちょっと調べるか」

ルクスは先に、先程届いた荷物を調べることにした。

赤いベルベットの布を取ると、中には書類の束と手紙が入っていた。

手紙の差出人は国王だった。

ルクスはまず、手紙を開く。

内容はルクスたち黄金の導、全員を王都の学園に通わせたいというお願いだった。

書類は願書と推薦状と学園の詳細が載っている案内書だ。

「学園……か」

ルクスはソファーの背凭れに背を預け、天井を見上げた。

(ラエティティアたちは全員強くなった。奴隷から解放しても大丈夫、だよな……)

学園に通うならば、奴隷から解放しておかないといけないだろう。もし、奴隷のまま通うことにでもなったら、バレたときにラエティティアたちが蔑まれる可能性が高い。

(なんで怖いと思うんだろう……もし、ラエティティアたちを解放したら、俺の元を離れてしまうかもしれないから、だろうか?)

自身の不安に気づいたルクスは苦笑した。

(馬鹿なことを、皆は俺の仲間なんだから、大丈夫だ)

どこかで拭いきれない不安を感じつつ、ルクスは学園の案内書を読み進めた。

大体の書類を読み終えた頃、談話室の扉が開いた。

「あら、ルクス様」

「ヘレナ?」

ラエティティアの母、ヘレナが談話室にやってきた。

「お渡ししようと思っていたものがあるんです。これをどうぞ」

ヘレナはルクスの近くまでやってきて、金糸で太陽の紋章が施された赤いリボンを渡した。

「特に効果はありませんが、明日のお祭りで必要になると思いましたの」

「必要?」

「あら、ご存知ありませんか?」

「ええ、教えて欲しいです」

「そうですね……明日のお祭りで、このリボンを生涯共にいたい人の右の手首に巻いてください。そうすれば、その相手と生涯を共にすることができる、というジンクスがありますの」

「ジンクス……か」

ルクスは確証のないおまじないにも縋りたいような気持になる弱い己を自覚し、苦笑した。

「何か悩み事でもありまして?」

「あ、いや、別に……」

「誰かに吐露するとスッキリしますよ?」

ヘレナは微笑みを浮かべ、優しい目でルクスを見ていた。

「あ……、例えばなんだけど、俺が、綺麗な猫を飼っていたとする。俺は、猫が綺麗だから、鎖の付いた首輪で猫の行動範囲を制限していた。でも、ある日、気が変わって猫の首輪を取るとする。そうしたら、猫は逃げてしまうよね……」

「そうですわねぇ……、どこかに散歩に行くかもしれませんが、逃げることはありませんわ」

「なぜですか?」

「その猫は飼い主のことが好きだからですよ」

ルクスは目を瞬かせた。

「好き……」

「何があったかは存じ上げませんが、ルクス様がなさりたいようになされば大丈夫です。今までだって、貴方は間違ったことはしてませんから。例え、間違ったことをされそうでしたら、私たちがお止めしますよ」

ヘレナはそう言って、ルクスの頭を撫でた。

「大人になっても失敗したり間違ったりしますわ。それに、何があっても私たちは、ルクス様の味方です。だから、大丈夫です、ルクス様。堂々と自由に生きてください」

ルクスは目頭が熱くなった。目をしばしばさせ、涙を我慢するルクスを見て、ヘレナは苦笑した。

「あと、泣きたいときは泣いてくださいね。では、ルクス様、私はこれで失礼します」

「……うん、ありがとう、ヘレナ」

ヘレナが談話室を出たあと、ルクスは泣いた。