軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第51話 御用だ御用だ

財務長官フアン・フォン・クレーマーは、大きな金庫に入っている金銀財宝を見て、自身の不安を和らげた。

フアンは伯爵家当主で自由にできる金銭も多く見られがちだが、法服貴族で、俸給や領地の収入はあるが、健全な運営にはお金が掛かった。

だが、フアンの妻がかなりの浪費家で、伯爵家の運営は厳しくなり、フアンは財務長官という身分を利用して、横領に手を染めた。

そして、数年前、部下の一人が神殿の人身売買に気付き、フアンに報告してきた。

フアンは表向きには真面目な男だから、相談しやすかったのだろう。

その日のうちにフアンは神殿の神殿長と話をした。というか、手を組んだ。

そして、報告してきた部下をフアンは神殿長に売った。

神殿長が行っている人身売買などの悪事の情報をもみ消す代わりに金銭を受け取るようになった。

悪事のもみ消しはフアンの私兵や傭兵たちによって行われた。

もみ消す度に、フアンは私兵や傭兵に報酬を与えた。

金品や酒、豪華な食事など……、お金はいくらあっても足りない。

それでも、フアンの私的な金庫には多くの金銀財宝が入っていた。

その金銀財宝は、フアンが国庫から少しずつ盗んできたものだった。

(いつかバレるかもしれない不安もあるが、この輝きに勝るものはない)

フアンは金銀財宝を見て癒され、また仕事に戻ろうとした。

そのとき、ノックもせずに執事長が入ってきた。

「どうした」

「大変です!旦那様、騎士団がやってきております!!」

「なに」

カシャン、と鎧のこすれる音と足音が聞こえた。複数人の騎士がこちらに向かっていることは明白だ。

フアンは椅子に座り込み、溜息を吐いた。

(とうとう私も終わりか)

そう思った矢先、騎士たちが姿を現した。騎士の中には、珍しく少年騎士もいた。

「クレーマー財務長官、神殿長との癒着の罪で捕らえる。立て」

その言葉を聞いて、フアンは目を瞬かせた。

(国庫からの横領はバレていない、あの金庫さえ見つからなければ……)

フアンの私的な金庫は隠し部屋にある。

隠し部屋さえ見つからなければ、罪に問われないだろう。

「エッシェンバッハ卿、この者には、まだ余罪があるようです」

そう言ったのは、少年騎士に扮したルクスだった。

ルクスのマップには隠し部屋が映っており、金庫の位置もしっかり記されていた。

「シュトラウス卿……、それはどういうことですかな?」

「隠し部屋があります。この隣に」

「なんと!お前たち、隠し部屋を探せ」

騎士たちにより、隠し部屋はすぐに見つかった。そして、金庫と金庫の鍵も。

フアンは歯噛みし、ルクスを睨んだ。

「……なぜ分かった」

「シュトラウス卿、答える必要はない」

エッシェンバッハがルクスを庇うようにフアンの前に立った。

「ちっ」

フアンは舌打ちし、金庫の中身が騎士たちによって運び出されていく様を見ているしかなかった。

(陛下がシュトラウス卿に同行を依頼した理由がよく分かった)

エッシェンバッハは此処にはいない国王の深慮に感服していた。

(我々だけでは余罪を暴けなかっただろう)

シュトラウス卿に感謝だな、とエッシェンバッハはしみじみ思った。

王城に戻ってきたエッシェンバッハとルクスを迎えた国王シリウスは笑顔だった。

「ルクス殿のお陰で、国庫の金品が戻ってきて良かった」

「お役に立てて光栄です」

「エッシェンバッハも元財務長官を捕らえてくれてありがとう」

「ははっ、此度は、陛下の深慮に感服いたしました」

「深慮……ルクス殿のことを言っているのか?」

「はい」

「あれはただの偶然だな。ルクス殿がいれば何か収穫があるかもしれないと思って依頼したのは事実だが、深慮というにはあまりにお粗末だ」

「陛下……」

「まあ、此度は運が良かったということだ。運を味方に付けられた者ほど強い。良いことだ」

シリウスはにかっと笑った。

「エッシェンバッハも運を味方につけられるよう、励むと良い」

「ははっ」

エッシェンバッハは、シリウスの言う運がルクスを指していることに気付き、深々と頭を下げた。

ルクスはまさか自分のことを指しているとは思っておらず、臣下らしく行儀よく立っていた。

「今回の立役者であるルクス殿には、後日、褒美を渡す。ルクス殿、すまんが、今日はこれで解散だ」

「大丈夫です。では、私はこれで失礼します」

ルクスは騎士に連れられ、帰路に就いた。

「それで?どうであった、ルクス殿は」

「どうもこうもありませんぞ、陛下。凄まじい魔力と神聖力、そして闘気を持っておられますが、調和していて、驚きました。隠し部屋を見つけたスキルも気になりますが、何より」

神聖力と闘気とは何かといえば、神聖力は魂に宿る力、闘気は身体に宿る力で、神聖力は神官などが用い、闘気は剣士など武器を使うジョブに就いている者が使う力のことだ。

「戦ってみたいか?」

「はい。魔法など使われてしまえば、到底、勝てそうにありません。本人はジョブが剣士と仰ってましたので、剣を交えてみたいものです」

「次の武闘大会でルクス殿が出るならば、剣を交えることもできよう」

武闘大会は武器を扱う全てのジョブを持つ者が参加できる大会だ。

「陛下、武闘大会は成人した者しか参加できませんので、ルクス殿が参加できるのは、早くて五年後かと……」

「おお、そうだったな。ルクス殿は大人びているので、偶に子供ということを忘れてしまう」

「はは、確かにそうですな」

エッシェンバッハは騎士に紛れて財務長官の屋敷に突入したときの、冷静なルクスの表情を思い出した。

(年相応とは言えない子供だったな……妙に大人びているというか、まあ、あの強さを手に入れるのに苦労したのだろうな)

エッシェンバッハはそう思いつつ、しばらくシリウスの話に付き合わされることとなった。