軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第40話 商隊の護衛

護衛依頼出発前日の朝。

ルクスは、ベネディクトゥスの授業を受けていた。

「では、本日は名前について勉強しましょう」

「名前……」

「はい。実は、このアルヒ王国では、貴族と平民で名前の付け方が違います。何が違うか分かりますか?」

ルクスは思案し、口を開いた。

「響きが違う感じがする……もしかして、それぞれ違う言語を元にしているのかな?」

「ご明察です。そうです。貴族と平民は違う言語を元に名を付けています。貴族は古代帝国である古代ウェトゥム語、平民はモルゲン語を元にしています」

「へぇ」

「ルクス様のお名前も古代ウェトゥム語ですよ」

「!!(あ、そういえば、印章貰ったときに手紙に書いてあったな)」

「意味は【光を齎す者】、ですね」

「へぇ……ベネディクトゥスとラエティティア、それにヘレナも貴族だったけど、名前に意味があるの?」

「そうですね、ベネディクトゥスは【祝福された者】、ヘレナは【明るい者】、ラエティティアは【喜びを齎す者】という意味です。因みに、モルゲン語由来の名前にも意味がありますよ」

「え、じゃあ、アランとバートは?」

ベネディクトゥスは微笑んだ。

「アラン君は【輝く】で、バート君は【温泉】、ですね」

「バート……温泉……ぶふっ」

ルクスはツボった。

暫く笑い続けるルクスをベネディクトゥスは微笑みつつ、見守った。

「ふぅ、ごめん、ベネディクトゥス」

「いいえ、問題ありません。では、次に姓の説明をしますね、実は姓は貴族も平民も一緒の言語を元に付けられています。その言語はモルゲン語です。貴族の場合は前置詞の『フォン』が付くので、前置詞で聞き分けることができます。何故、貴族は姓も古代ウェトゥム語にしなかったのかといえば、ウェトゥム帝国には苗字が無かったので、苗字を古代ウェトゥム語にできなかったんです」

「へぇ……」

「なので、ルクス様の姓、シュトラウスもモルゲン語の姓なのですよ」

「なるほど!」

「ちなみに、領地を持つ貴族の姓は二つあることが多いです。爵位を得るときに姓と土地の姓が与えられる、もしくは、爵位を得る前から持つ姓と土地の姓を名乗る者もおります」

「ふぅん」

「では、次に貴族の敬称について説明しますね」

ベネディクトゥスは黒板に敬称を記載していく。

「貴族が使う敬称は、殿、卿、閣下、殿下、陛下の五つです。陛下は国王陛下にのみ使います。王族の方には殿下を使えば、まず問題ないです。爵位持ちの場合はややこしくて、爵位が上の者が下の者を呼ぶときは、主に姓+爵位で呼びます。少し砕けた場面では、卿を使います。私的な場面だと殿を使うこともあります。爵位が下の者から上の者を呼ぶときですが、公爵・侯爵・伯爵の場合、正式な呼び方は姓+閣下になります。少し砕けた場所では姓+爵位もしくは卿でも良いでしょう。伯爵以下の場合は姓+爵位か姓+卿呼びで問題ないです」

「……ややこしいな」

「ですが、ルクス様は伯爵ですから、覚えていただく必要がありますので、みっちり練習しましょうね」

「ひゅ」

ベネディクトゥスの圧にルクスは息を呑んだ。授業は時間ぴったりまで続いた。

護衛依頼出発当日(宙日)の朝九時前。

西門前には、幌馬車が四台用意されており、その周りには御者らしき男や、使用人らしき男、そして、冒険者パーティーらしき男たちがいた。

ルクスたちは冒険者パーティーらしき五人に近づいた。そして、ルクスが代表して話しかけた。

「こんにちは、あなた方は、銀級パーティーの風任せさんですか?」

「いかにも、おお、君たちが期待の新星と呼ばれている黄金の導かな?」

大盾を持った屈強な男が愛嬌ある笑みを浮かべて応える。

「期待の新星?ですか……あ、黄金の導です。これから護衛として行動を共にすることになります。護衛は初めてなので、不慣れな部分もあると思いますが、よろしくお願いします」

「固い固い!もっと砕けて良いぞ!」

ははは!と屈強な男が笑うと他のメンバーも笑った。

「お前みたいなデカいのに話しかけられたら固くなるに決まってるよ」

とツッコミを入れたのは魔法使いらしき男だった。

「そうだな、とりあえず、自己紹介しよう」

剣士らしき鍛えられた身体を持つ焦げ茶の髪の男が前に出てきた。

「俺は風任せのリーダーで剣士のフランツ・ベッカー」

大盾を持った屈強な茶髪の男がその隣に立つ。

「俺は騎士のゲルト。言っておくが、ジョブが騎士なだけで、俺は騎士の身分はないからな。野良の騎士だ」

魔法使いらしき杖を持った灰色の髪の青年がゲルトの横にやってきた。

「僕は魔法使いのハイノ」

動きやすそうな格好の黒髪の青年がフランツの横にやってきた。

「 某(それがし) は、藤の国出身の藤野兼継……こちらでは、カネツグ・フジノという。ジョブは斥候だ」

日本人っぽいうすい顔のカネツグ。

名前も日本人っぽい。

ちなみに、藤の国は大陸の東にある島国のことだ。

カネツグの横に聖杖を持った神官らしき男がやってきた。

「私は神官のアルバンです。よろしくお願いします」

黄金の導の面々も自己紹介していった。

「じゃあ、バッハ商会のエーリヒさんのところに行こうか」

フランツはそう言って、爽やかな笑みを浮かべた。

「「はい」」

黄金の導は、フランツに連れられ、エーリヒの元にやってきた。

「エーリヒさん」

馬車の裏で何か書き物をしているエーリヒにフランツが声を掛けた。

「あ、フランツさん、それに、黄金の導の皆さんも来てたんですね」

「ええ、彼らにも指示を出して下さい」

「分かりました。黄金の導の皆さんには、二台目つまりは真ん中の馬車を守っていただきます。守る方法はお任せしますので、工夫してみて下さい」

「「はい!」」

「頑張ってくださいね」

エーリヒは微笑んだ。

そのとき、一の鐘が鳴った。

「時間ですね……皆さん!出発しますよ!」

「「はーい!」」

御者は御者席に乗り込み、使用人たちは、幌馬車の空いている場所に乗り込んだ。

風任せは配置につく。

「黄金の導の皆さんは真ん中の幌馬車の中で待機していて大丈夫ですからね」

エーリヒはそう言って、幌馬車に乗るよう促す。

「えっと、良いんですか?」

「体力は温存しておいた方が良いですからね。風任せのハイノさんとアルバンさんは幌馬車の荷台に乗ってますし」

「分かりました。みんな、乗ろう」

「「はい」」

黄金の導は真ん中の馬車に乗り込んだ。