軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話 言語の成り立ちと歴史

一週間後。

朝食を食べたルクスと仲間たちはそれぞれ、やるべきことに取り掛かる。

ヴォルフとアデリナ、クラーラは食材の買い出しと料理。

アランとバートは屋敷の掃除。

ヘレナとラエティティアは縫い物。

そして、普段、家計簿を付けたりしているベネディクトゥスは、本日からルクスたちの教師としての仕事がある。

最初の授業は朝の九時からルクスに対して行われる。

「ルクス様、今日はアルヒ語と文字についてお話します。よく聞いてくださいね」

「うん」

ベネディクトゥスはアルヒ語の成り立ちから語り始めた。

今から約千年程前。

現在アルヒ王国がある地には、ウェトゥム帝国という国が古代から存在した。そのウェトゥム帝国が革命によってモルゲン王国という国となり繁栄していた。

しかし、突如、復活した魔王によって壊滅しそうな状況に追い詰められ、魔王に支配されていた。

これに危機感を覚えた他国に、二千年前、勇者を召喚したという伝承が残る国があった。

その国が勇者を召喚し、その勇者がモルゲンの魔王を打ち倒した。しかし、モルゲン王国の王族は全員、魔王によって処刑されており、国家再建は絶望的な状況だった。

そこで、勇者が新しい王国を立ち上げることになった。

アルヒ王国を。

勇者は仲間である賢者の勧めで、新しい言葉を作ることになった。

勇者の故郷の言葉である日本語を元にアルヒ語という言語を作った。

文字については難航した。

何故なら日本語には漢字とカタカナ、ひらがなという三種類の文字があったから。

勇者は、複雑な漢字を分かりやすくする為に、簡易化したり記号化したりした。

そして、カタカナとひらがなは元々あったモルゲン文字を使用することにした。

そして、アルヒ・モルゲン文字(表音文字)とアルヒ文字(表意文字)が産まれた。

口語と文字を浸透させるのはそこまで難しくなかった。

何故なら、魔王が殺し過ぎて人口が本当に少なかったから。

ただ、勇者の王国ということで、移民が相当にやってくることになるので、人口はどんどん増えていった。

勇者が作った言語ということで、アルヒ語はすぐに浸透した。

移民たちは全然違う地域からやってくることが多く、言語圏も全く違う。

言葉の壁は円滑なコミュニケーションの妨げになるので、アルヒ語で言葉を統一することは最適な解決方法と言える。

勇者の仲間である賢者は、かなり頭の切れる人物で、移民問題を予想していたようだ。

勇者にアルヒ語を作るように早くから進言していたらしいという記録が、賢者の弟子の手記に記されているので、恐らく言語の問題を予想していたと伺える。

賢者の助けや勇者自身の努力、文官たちの献身の甲斐あって、それから千年、勇者の考えたアルヒ語はしっかりと受け継がれている。

ベネディクトゥスが語り終えると、ルクスは納得したような表情を浮かべていた。

(だから、話し言葉は日本語っぽいというか最早日本語なのか……文字は、漢字を簡易化させたり記号化させたりしてるし、カタカナ・ひらがなはモルゲン文字にしてるから全然分からなかったんだな……)

ベネディクトゥスは納得したようなルクスを見て思った。

(まさか、ルクス様はこの歴史を予測しておられたのだろうか……素晴らしい)

勘違いである。

ベネディクトゥスが感動している間、ルクスは思案していた。

(ゲームには千年前のことは描かれてなかったから知らなかったな。……この世界は現実だから、ゲームの知識ばかりに頼ってもいられないな)

臨機応変に対応できるようにならないと、とルクスは思った。

「では、基本的な文字の勉強をしましょうか」

ベネディクトゥスは興奮を抑えつつ、ルクスに文字を教え始めた。

まるでスポンジが水を吸うように、文字を覚えるルクス。

(なんて、素晴らしいのだろう……ルクス様は天才だ!)

ルクスはセフィラの 知恵(コクマー) がMAXなので、その補正が効果を現しているのだろう。

まだ十歳なので頭も柔らかい。当然の結果ではある。

「ベネディクトゥス、もうすぐ十時になるけど」

「はっ、そうですね。今日は此処で終わりにしましょう。お疲れ様でした。ルクス様」

「うん、お疲れ様」

「ルクス様、既に冒険者活動を始められたと聞きました。護衛はいりますか?」

「どこで聞いたの?」

「とある伝手がありまして」

ベネディクトゥスは微笑んでいる。

絶対零度という感じではないが、ルクスはちょっぴり怖かった。

(ゴブリンはあっさり倒せたし……)

問題ないかな、とルクスは判断した。

「護衛は良いよ。授業に集中して欲しい」

「かしこまりました」

「それから、もし、夕方の十七時に時間があれば剣術を教えて欲しいのだけど、大丈夫?」

「勿論でございます」

「じゃあ、また十七時に」

「お気をつけて」

「うん、いってきます」

ルクスは屋敷を出て、王都の中心地に向かうことにした。