作品タイトル不明
第133話 みんなで迷宮都市大探索 後編
翌朝、屋敷の三階の談話室に黄金の導は集まっていた。
ちなみに、自由の翼の他のクランメンバーはレベリングのため、奈落ダンジョンに潜っている。
「昨日に引き続き、迷宮都市を探索しまーす。今日は商人街と市民街を探索します!」
「「はーい」」
「メモと鉛筆は持ってるね? じゃあ、行こう」
ルクスたち黄金の導は雪に包まれた冒険者街を通って商人街にやってきた。
商人街には、市場があり、新鮮な野菜や果物、塩、干し肉などが売られていた。
市場以外には店舗だ立ち並んでおり、魔導具店や武器防具屋、雑貨屋など様々な店が軒を連ねていた。
奥まったところにスキルスクロールが売られている珍しい店があった。
(こんなところにスキルスクロールが売られているなんて……ゲームにはそんな店なかった筈だけど)
とルクスは思いつつ、仲間と共にスキルスクロール以外にもポーションや珍しい品が売られている『妖精の店』という名の店舗に入った。
「いらっしゃいませ」
店の主人は金髪に緑の瞳を持った美形で、その耳は人族と違い、尖っていた。
(もしかして、エルフ?ゲームでは、東大陸でしか見られない種族が中央大陸で見れるとは思ってなかったな)
仲間たちはエルフの尖った耳に興味津々の様子だ。
「なあ、兄ちゃん、その耳って本物?」
アランは何の遠慮もなくエルフに問う。
「え?ああ、本物だよ。坊やはエルフを見たことがないんだね?」
「エルフ?って、勇者伝説で勇者の仲間だった弓使いの種族だね……まさか、生きている間にお目に掛かれるとは思ってなかったな……」
バートが感動した様子でエルフを見上げた。
「あはは、僕はそんな大したエルフじゃないよ」
「(いや、大したエルフだろうな。隠しているけど、このエルフは 強者(つわもの) だ)お兄さんはどうしてこの迷宮都市でお店を出したんですか?」
ルクスは無邪気な少年を装いつつ、エルフに聞いた。
「あー、昔は世界中を旅していたんだけど、どこか一所に住みたいと思ってね。この迷宮都市が気に入ったから、この店を出したんだ」
「そうなんですね……良ければ、旅の話を聞かせていただけませんか?」
「んー、大したことない旅の話だけど……」
「実は俺も、将来、世界中を旅したいんです。先輩の話を是非聞かせて欲しいなって思ったんですけど……」
だめでしょうか? と、ルクスはしゅんとした表情を見せた。
「いや、ダメじゃないよ。可愛い後輩のために、旅の話をしようじゃないか」
エルフは、天まで届くくらい大きな木がたくさんある森の話や、まるで星空のような光景が見れる洞窟や、小舟で入れる海の洞窟が青く輝き、とても美しかったこと。どこまでも広がる塩の湖に雨が降ったあと、水が溜まった湖面に青空が映ってどこまでも続く光景が忘れられないということ。とある高い山に登ったとき、眼下に雲海が広がり、言葉にならないほどの美しさだったこと。
エルフは楽しそうに、様々な絶景が見れた話しをした。
「どうだった?」
「凄く、旅が楽しみになりました」
「そう、良かった」
エルフは笑みを浮かべた。
「その、旅をするときに注意した方が良いことってありますか?」
「んー、そうだな、人との出会いを大切にすることと、盗賊とか悪い奴には容赦しないってことかな?」
「なるほど……」
「あとは、旅をするときは大容量のアイテムポーチを使う方が良いね。色々物を入れられると便利だから」
「(アイテムポーチは持ってるし、アイテムボックスもあるから問題ないな)はい」
「あとは、思いっきり楽しめば大丈夫」
エルフはにかっと笑った。
「はい!ありがとうございます」
「良かったら、この店にあるスキルスクロールを見て行くと良いよ。僕が世界中回って集めたものだから、役に立つスキルスクロールも見つかるかもね」
「ありがとうございます、見させてもらいます」
ルクスは仲間と一緒にスキルスクロールを見た。
スキルスクロールの棚には、所狭しとスクロールが並んでいた。
「『金剛不壊』……良いスキルだな。これは、アランが買った方がいいね」
「これってどんなスキルなんだ?」
「一定時間、どんな攻撃を受けてもダメージが入らなくなるスキルだったと思う」
「へえ」
「いつも肉壁になってくれるアランには必要だと思うよ」
「言い方ぁ……せめて 盾役(タンク) って呼んでくれ」
「分かった分かった。ほら、買っておいで」
アランはぶつくさ「俺は肉壁じゃない」と文句を言いつつ、『金剛不壊』のスキルスクロールを持ってエルフのもとに向かった。
「『疾風迅雷』はクラーラさんだね」
「ありがと、ルクス。買ってくる」
「え、説明は?」
「後でいい」
クラーラは颯爽とスキルスクロールを持って店主であるエルフのもとに向かった。
ちなみに疾風迅雷は、風と雷を 纏(まと) って、風や雷よりも早く移動できるようになるスキルだ。
「バートは……『精神一到』かな」
「僕は説明を聞くよ」
「うん、精神一到は、集中力をかなり高めて、命中率と精度を上げてくれるから、魔法の威力が上がると思う」
「うん、買いだね」
バートは『精神一到』のスキルスクロールを持って、購入すべくエルフのもとに向かった。
「ティアは、『歌舞優楽』かな……これは、歌と舞を楽しむことで、舞歌のバフ効果が上がるよ」
「まあ、素敵なスキルですね。買ってきます」
ラエティティアは『歌舞優楽』のスキルスクロールを持って、エルフのいるカウンターに向かった。
「アスターとシアーシャは『相互扶助』かな?このスキルを持っている者がパーティーに複数人いると、その人数分、他のパーティーメンバーのステータスが向上するんだ」
「ふーん、僕らはあんまり前に出ないから良いかもね」
「私も良いと思う」
アスターとシアーシャは二つある相互扶助をそれぞれ担いで、カウンターに向かった。
「さてと、俺はどうしようかな?」
ルクスの視線がある一点で止まった。
「『完全無欠』……」
ゲームでも完全無欠というスキルはあった。ルクスも取得していた。
メインストーリーのあとに出てくるサブストーリーのクエスト報酬だったが。
(メインストーリーも始まってないのに、俺の目の前に『完全無欠』のスキルスクロールがある……驚きだ)
と思いつつ、ルクスは『完全無欠』のスキルスクロールを買うべく店主のいるカウンターにやってきた。
仲間たちは既に会計を済ませた後のようだ。
「お、ルクスは何のスキルを買うんだ?」
「んと、『完全無欠』だね。一定時間ステータスが向上して、無敵になれるスキルだよ」
「なんか、俺たちのスキルより凄いような……」
「気にしない、気にしない」
と言いつつ、ルクスはスキルスクロールをエルフに渡した。
「はい、金貨千枚になります」
「えっと、はい、どうぞ」
ルクスは大金貨百枚をエルフに渡す。
「丁度お預かりしました。お品物です」
ルクスは『完全無欠』のスキルスクロールを受け取った。
「お兄さん、色々お話してくれて、ありがとうございました」
「どういたしまして、僕も、旅のことを話せて嬉しかったよ。ありがとうね」
「いえ……また、いつか寄りますね」
「待ってるよ」
「はい!」
ルクスたちは『妖精の店』の店主であるエルフに見送られ、店を後にした。
屋敷に戻ったルクスたちは、スキルスクロールを使って、新しいスキルを手にした。
ルクスたちは午後、市民街の探索をした。
迷子の女の子をお家に送り届けたり、おばあさんの荷物を持ってあげたり、道に迷っている人を案内してあげたりと、人助けをしつつ。
あっという間に夕方になったので、ルクスたちは屋敷に戻った。
迷宮都市を全て探索できた訳ではないが、ほぼほぼ探索できたので、ルクスたちは満足し、迷宮都市探索を終えた。