作品タイトル不明
専属契約後の初配信
配信準備中という文字と共に、影山のライブ配信に“待機画面”が表示された。
デフォルトで描かれた影山のイラストの目が青く光ったり、金色の剣を持った腕を上げたり、下げたりする可愛らしいキャラが右下にいる。
BGMもこのために用意したものが流れていた。
装備といい、諸々の準備は影山が契約する前から進んでいる。
――契約しなかったら、どうするつもりだったんですか。
昨日、影山は帰り際に営業担当取締役、橘 遠矢にそう聞いた。
彼はにこりと微笑んだ。
――今回は私のクビをかけて、本気で影山さんを引き入れようと思ったのです。今だから言えることなのですが、ね。
どうやら知らない間に、勝手に人生をかけられていたようだ。
そしてプロレベルの待機画面を見せられた視聴者達は、当然混乱した。
『っ!?!?!?』
『なにこれ』
『イラスト可愛い』
『チャンネルの説明欄でネオファン所属になってたぞ』
『マジか』
『ネオファン良かったね』
『これからもっと楽しくなる予感!』
『期待しかない』
そしてオープニングの途中で、オペレーターである朝日がスタンドマイクの電源を入れた。
オペレーターはリモートでの参加が基本となる。
2台体勢となった高性能ドローンで配信及び戦闘のサポートをするのだ。
「はじめまして! 壁破壊二キの専属オペレーター兼装備技術アドバイザー、あさひと言います!」
『って、めっちゃうるさい!?』
『マイクの音量デカすぎるし、なんでエコーかかってんだ!?』
『絶対、設定ミスってるって!』
「はっ!? あわあわ、エフェクトかかってたし、マイクの音量がすごく高くなってました、すいません!」
じじじじじ、と設定を調整する。
「こ、これでどうでしょうか、みなさん」
『まあ、おk』
『壁破壊二キのオペレーターがドジっ子なのか……』
『足ひっぱらないようにしてね』
『その感じでちゃんとサポート出来るの?』
(あううううっ。初回から怒られてる……)
朝日はいきなり心が折れそうになるも、すぐに立ち直った。
(か、影山さんの力になるって、決めたから)
「はいっ。せいいっぱいがんばりますっ」
『声可愛いな』
『埋もれる女性声優って感じ』
『あー、わかるわ。可愛いけど売れないタイプ』
『配信でも微妙に伸びないタイプ』
『可愛いけどバズらないやつね』
『あるある。共感しかない』
ネットの世界は 辛辣(しんらつ) であった。
しかも配信者として大成しなかった朝日なので、中々の精神ダメージである。
「き、気づいた方もいらっしゃるようですが、このたび! 壁破壊二キさんはネオ・ファンタジアと専属契約を結ぶことになりました!」
『8888888』
『楽しみ!』
『壁破壊二キ大切にしろよ、ネオファン』
「そして専属契約にあたり、装備を一新しました! それでは二キさん、どうぞ!」
待機画面から、配信画面へ切り替わる。
映るDランクダンジョン。
広がるのは、広大な草原だ。まるで外にいるかのよう。
天井はなんと空になっていて、太陽のような光が輝き、雲が浮いている。
――そして木を支えに、美しい三点倒立をする影山が映った。
「あ」
『ちょwww』
『どういうこと?(笑)』
『開幕からツッコミどころが多すぎる件』
「ああいや、突然始まるから……待機中、やることないし……」
『暇はわかるとして、なぜ三点倒立?(笑)』
『オペレーターも配信者も天然すぎる』
『やべぇ、腹痛い』
影山が三点倒立を解除し、アイテムボックスからガンブレード……ウォールブレイカーを取り出した。
「この間の金属はSSSランクアイテムで、“オリハルコン”と名づけられました。これはその金属を使った武器です」
かっこいい、とか、すごい、とかそういうコメントを影山は期待した。
しかし。
またもやツッコミどころのある状況に――コメント欄は一瞬、固まった。