作品タイトル不明
推しが専属オペレーターとなる
人形に関しては修理が出来るだから大丈夫……と、朝日は言っていたが、影山は落ち着かなかった。
5億稼いだとはいえ、その感覚はまだ庶民。
本当に大丈夫だろうか、と思った。
(まあ、あさひちゃんすごい人みたいだし。なんとかしてくれるはず……きっと……)
そう思いながら、1人素振りをした。
テストは入念に重ねる。
だが、結果は明らかであった。
撃ちやすいし、振りやすい。
前のガンブレードにもう戻れないくらい、手に馴染んでいた。
(これが最新鋭の技術で作られた、専用装備か)
企業勢のメリットを、しっかりと肌で感じた。
と、そんな影山の元へ朝日が戻ってきた。
その両手には、缶コーヒーが握られている。
「ごめんね~、取り乱して。はい、コーヒー……うわわわっ!?」
朝日は影山に近いところで、盛大にずっこけてバランスを崩した。
(そんなベタベタな……)
しかしそんなベタベタなドジをするのが、あさひチャンネルであった。
やっぱり彼女はあさひちゃんなんだと思いながら、影山が素早く踏み出し、朝日を受け止めた。
胸に飛び込む形になる朝日。
柔らかな感触と、甘い香りに影山はドキドキした。
朝日もまた、影山に受け止められ、心臓が高鳴る。
見上げると、影山の顔と目が合った。
朝日は耳まで真っ赤になる。
「あわわわ、ごめんなさい」
(あううう、かっこいい……髪切った時の配信は、モニターの前でびっくりしたよ……)
「いや……大丈夫だ」
(すごかったな……色々と……)
影山も男である。
そんなこともありながら缶コーヒーを受け取り、ゴクゴクと飲む。
微糖の甘いコーヒーであった。
「あ、そういえば。言ってなかったけど、明日から私が専属のオペレーターになるからね」
「え? そ、そうなのか?」
こくりと朝日はうなずいた。
「チャンネル運営も私がサポートするから。あと影山さん、変な誘いに乗ったりしたらダメだよ? 最近、ダンジョン配信界隈はそういう炎上事件が多いんだから。特に男の人はすぐ女の人絡みで問題起こすからね~、ネオ・ファンタジアでもそういう配信者さんは本当に多いの」
「はぁ……そうなんだ」
「女性視聴者にモテるからって、手を出したらダメなんだから! 気をつけてね! 絶対だよ! あと、それからね――」
なにやら強く押されてしまった。
陰キャなのでそんな度胸はないが、正直、あわよくば……なんて考えていたが、ダメなようだ。
企業勢だから、イメージとか、そういうのもあるのかもしれない。
(やっぱり、これから大変になるのだろうか……)
だけど今もなお、ペラペラとあれに気を付けて、これに気を付けて、と過保護になっている可愛らしい朝日を見てしまうと、これで良かったと思えてしまう。
推しとの距離が近づいて戸惑うところも、正直ある。
だけどこうやって、元気に生きていてくれるなら、それだけで幸せだ。