軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フォロワー1万人を突破する

次の日。影山はシクシクと、枕を涙でぬらした。

「ううっ……嘘だ……信じない……」

突然の推し引退は、この世の終わりのごとく重くのしかかった。

しかも最後の配信に参加できなかった。

さらにアーカイブを見る限り、本当に引退をするようだ。

『――探索者との両立が難しくなっちゃったんだ~。本業の方でね、やりたいことができたの。実は私ね、アイテムや装備品の開発に携わってるんだ。だからこれからは探索者をサポートしたり、支える仕事を頑張るの!』

前々から本業がある、というのは聞いていた。

「寂しすぎる……。まさかこんな突然、辞めるだなんて」

会社員時代の支えが、思わぬ形で消えてしまった。

ドジなところも可愛い、とても良い女の子だった。

辛い時期は、彼女が希望だった。

アーカイブにお礼のコメントは書いておいたが、リアルタイムで届けたかった。

それくらいに感謝の気持ちがある。

「……今は、俺が配信者か」

しかしふて寝をしても、明日は来る。

推しとの別れも、いつかは起きるものだ。

そしてそれは仕方のないことである。

昼。ベットから降り、スーパーで買った唐揚げ弁当と冷凍ブルーベリーを食べつつ、配信アプリを確かめた。

フォロワー10080。

涙を流している間に、10000人を突破したようだ。

「明日から頑張るか……こんな俺でも、誰かの励みになっているかも」

そして改めて探索者スレなどを見ると、DQNを成敗した映像やら、色んな書き込みを発見する。

自分がバズっているという事実を、少しずつ実感し始めた。

配信6回目。

昨日の休みを経て、今日から活動再開だ。

『待ってた』

『休みの時は告知してほしい』

『それは壁破壊二キの自由じゃね』

『好きにしてええんやで』

「昨日は推しの引退に涙していたので、休みました」

『草』

『それは悲しい出来事だったね……』

『推しいるのね』

「まあ、同じ探索者で」

『お?』

『そうだったのか』

『誰?』

「それは……本人に迷惑がかかったら嫌なので、伏せておきます」

今日のスタートは、接続数7510。

自分の発言に影響力が出てしまうという自覚は、持とうとした。

『気になるなぁ』

『壁破壊二キが認めた探索者とはいかに』

『まあ、引退や休止はよくある話だから』

『元気だして』

『桃猫 桜だったりして』

『オ〇パコで炎上した女じゃん』

『他の配信者の名前出すのはやめよう』

微妙にコメント欄が荒れはじめたので、影山は先へ進むことにした。

接続数が増えると、影響力が増えたり、荒れたりすることもあるのだろう。

気をつけようと思った。

「あと、フォロワー10000人突破ありがとうございます」

『おめ!』

『おー』

『次は接続数10000突破ですね!』

『まあ、すぐ達成するだろうね』

『さすがです!』

突破記念ということで、またしてもスーパーチャットが打たれていく。

あっという間に4000円分が投げ込まれて、歩きながら軽く頭を下げた。

「ありがとうございます……というか、いいんですか」

『もちろん』

『少なくてごめんな』

「いや、多いと思いますけど……」

会社員時代からすれば、人から金を投げ込まれるなんて、考えられないことであった。

しかもフォロワー10000で投げられるのだから、接続数も同じ現象が起きるのではないだろうか。

「今日はボスフロアの近くまで行きます。このEランクダンジョン踏破へ向けて、動き出そうと思います」