作品タイトル不明
配信2日目
新人探索者発掘&オススメスレ
30 名前:名無しさん
素手でダンジョンの壁壊す探索者がいる。
こいつマジでヤバい。
https://www.danjonlive.com/〇〇〇channel
https://www.danjonlive.com/watch!〇〇〇
31 名前:名無しさん
は? なにこれ
32 名前:名無しさん
AI映像じゃないの?
33 名前:名無しさん
リアタイで見てた。ガチ。震えた。
35 名前:名無しさん
>>32
検出アプリ通したけど“本物”だったぞ
36 名前:名無しさん
ダンジョンの壁って壊れるのか?
39 名前:名無しさん
>>36
そんな現象起きたらニュースになるレベル
40 名前:名無しさん
協会、大慌てだろうなぁ……
41 名前:名無しさん
バズ確定。いずれ勧誘も殺到すると思う
☆
翌朝。
昨日と同じダンジョンに向かうと、受付の職員が妙に丁寧だった。
名刺を数枚渡された以外は、特に変わったことはない。
探索者アプリのマイページには、通知ゼロ。
(……やっぱり、ただコメントが騒いでるだけか)
影山はそう思いながらダンジョンに入り、いつものように配信を開始した。
視聴者数――3523。
「……は?」
思わず、声が出た。
数字を二度見する。
3523。
駆け出しの新人が集めていい人数ではない。
コメントが一気に流れ始める。
『お、来た』
『待ってたぞ壁破壊ニキ』
『“えっ”の声が完全に嫌そうで草』
『目立つの嫌いそうなのに、目立つことしかしない男』
「なんで、こんなにいるんですか」
影山は思わずカメラに問いかけた。
『むしろ来ないと思った理由を聞きたい』
『昨日の切り抜き、もう海外で回ってるぞ』
『透視スキル見せて』
『壁壊し再び頼む』
「……はあ」
深いため息が漏れる。
しゃべるのは得意ではない。
だが、これだけ見られている以上、今日の方針くらいは伝えるべきだ。
アイテムボックスから斧を取り出す。
「すいません。今日は……多分、壁は壊しません」
『お?』
『まあ危ないしな』
『昨日のクモは運が良かっただけ』
「俺もそう思います。だから今日は、練習だけします。透視スキルと……戦い方の練習を」
死んだら終わりだ。
まずは基礎を固めるべきだと影山は判断していた。
『いい判断』
『壁壊し見たかったけどな』
『昨日は突っ込みすぎだった』
「……」
影山は雑談を切り上げ、斧を構えて無言で歩き出す。
『雑談短くて草』
『てか、斧を選んだのね』
『この淡々さがクセになる』
『壁破壊ニキはこれくらいでいい』
コメントは勝手に盛り上がり続ける。
その中で――妙な文字が目に入った。
『お前、チー牛だよな?』
『影山 光だろ?』
反応はしないようにする。
配信タイトルは“駆け出し 生配信”。
名前は出していない。
昨日の配信でも名乗っていない。
なのに。
(……これが身バレというやつか)
背筋が冷たくなる。
影山は、誰が書き込んでいるのかをすぐに理解した。
辞めた会社の、誰かだろう。
(それで解決にはならないだろうけど、ブロックはしておくか……)