作品タイトル不明
職員がめちゃくちゃ慌ててドタバタする
(たしか、ここのはず)
土壁を透視。
ナイフでもいけるのかと試すため、ナイフで線を斬ってみる。
瞬間、壁がガラガラガラ、と音を立てて崩れていった。
『草』
『もうなんでもありだな』
『ダイナマイトかな?』
『また復活するだろうから、早く出よう』
影山は元の通路へと出る。
しばらくすると、壁がゴゴゴゴゴ、と音を立てながら元に戻っていった。
『すごい映像だよな、これ』
『壁って壊れるし、自動で直るんですね』
『リアタイ勢、良いもの見れたな』
『貴重映像だ』
『探索者協会、大慌てだろうな』
その後、何体かスライムを素手狩りまくると時刻は17時をすぎた。右手が痛くなってきたので、帰ろうと思い、出口へと向かう。
「今日は終わります。お疲れさまでした」
影山そう言うと、コメントがすらすらと流れていく。
接続数は184と表示されていた。
『最後まで大人しいの逆にクセになる』
『おつ! めっちゃ面白かった!』
『次も絶対見る』
『もうファンになった。推せる』
『フォローします』
アプリでの配信を終了し、ダンジョンを出た。
☆
受付にいる職員に魔石の買い取りをお願いする。互いに格納スキルによるアイテムボックスを使い、魔石の引き渡しを行う。
今日の成果はスライムの魔石25個と、Dランクのクモの魔石1個だ。
若い男性職員が魔石を取り出し、魔力測定器である大きな箱型の機械で査定を行っていく。
そこに表示された内容に、職員は「え?」と声を上げた。
「Dランクの魔石!? な、なぜ……ここはEランクダンジョンのはず。フロアボス以外、Eランクしか……ちょ、ちょっとあなた、この魔石をどこで?」
「……壁を壊したら、クモが落ちてきました」
「壁を壊した? クモ? 一体、なにを言って……こ、これは大変なことだ。この魔石を拾った時間は? 配信のアーカイブで確認させてもらいます」
「時間……ええっと……」
説明が終わると、4人の職員達がドタバタと動き始める。
顔色が変わっていた。
(なんだか、騒ぎになっている……)
ちなみに査定結果は、スライムが一個100円。クモが一個1500円。
合計4000円。
こんなものか、とショックを受けた。
(バイトより少ないな……駆け出しあるあるならしいけど)
だが、職員達はそれどころではない。
「な、なんだこの映像は!? なにかの間違いじゃないのか!」
「AIの作った映像の可能性は!?」
「これはライブ配信のアーカイブだぞ!」
「おい! 監視AIが未知の座標を検知している! なぜ、誰も報告をしていない!」
「冒険者の名前は!? 何者だ!?」
「ええっと、すいません、ライセンスの方を見せてください」
戻って来た職員へ、ライセンスを見せる。職員は入室記録をパソコンで検索。
「影山 光。今日初めてダンジョンへ潜った、レベル1の探索者です」
「レベル1がDランクモンスターをソロで撃破だと!? ありえん! しかも映像では、グーパンチとレンタルナイフだぞ!?」
「そ、そんなこと私に言われましても。本人に聞いてくださいよ……」
その中で、一番慌てていた髭のイケオジが前に出た。
どうやら責任者なようだ。
「影山 光さん……にわかには信じがたいですが、今日起きたことはなにもかもが、規格外です。正直、我々の手には負えない。協会に……上に報告をしますが、よろしいですね」
「はぁ……えっと、まずいこと、なんですか」
後ろの方を見ると、さらにドタバタしている人数が増えて、9人ぐらいの職員であれやこれやと騒いでいる。電話をしたり、映像を解析したり、とにかくてんやわんやだ。
なんだか、悪いことをした気分になる。
「いえ、悪いことではありませんが……前例がないことで、これからどうなるか想像がつかないです」
「そうなんですか」
「はい。あなたの今日の配信は、間違いなく拡散されるでしょう。協会もどう対応をするのか……ちなみに、今後の活動の予定は?」
「明日、またここで狩りをしたいです」
「なるほど……例の壁の中へも行くご予定で?」
「まずいですか」
「安全のため非推奨ですが、罰則はありません」
「では、行くと思います」
「……わかりました。明日、お待ちしております。本日はお疲れ様でした」
「ありがとうございました」
やや小さな声であいさつして、ダンジョンを去っていく。
帰りのバスでアプリを開くと、フォロワーの数が205を超えていた。
だけどまだ、実感は 湧(わ) かなくて。
疲れたなぁ、と欠伸をしたのであった。