軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

576

「…………それで、ここで何をしてたんだ?」

クシャナの質問に私はクシャナと目を合わす。

「貴女の願いを聞きにきたのよ」

私は確かな声でそう言った。

ウィリアムズ・アリシアは約束を破る女ではない。マディを採取し、クシャナが治めている森で私は過ごした。

その恩は返すわ。

クシャナは私の言葉に「待っていたよ」と優しく答えてくれた。

クシャナが歩く方向へ私も一緒に足を進めた。象もしっかりとついてくる。さっきみたいに乱暴に走ってこない。大人しく歩いている。

もっと早くクシャナが来ていれば、私と象は無駄な争いをせずに済んだのかもしれない。

まぁ、喧嘩するほど仲が良いっていうし……、少しは絆は深まったんじゃないかしら?

私はチラッと象の方へと視線を向けた。彼は私が見た瞬間、急に表情が硬くなる。

…………どうやら、嫌われたみたいね。

「ねぇ、クシャナ」

「なんだ?」

「この象は私のことが嫌いみたい」

私がそう言うと、クシャナはまたハハッと声を出して笑う。

「そんなことはない」

「けど、象を転倒させてしまったもの」

「負けたから悔しく思ってるんだよ。この象はとても負けず嫌いでね。まだ考え方が子どもなんだ」

「だから、この子だけ私を追いかけてきたのね」

私が納得したように呟いた。

負けず嫌いなところは私にそっくりだ。同族嫌悪されているってことよね?

クシャナは「彼の名はモリスだ」と教えてくれた。

モリス、と私は小さく彼の名を口にした。

「私はモリスと仲良くはなれそうね」

「こいつは気難しいが……、まぁ、アリシアなら」

クシャナはそれ以上何も言わなかった。

私なら、気難しい象モリスとなら仲良くなれる可能性があるということ?

そんなことを考えながら、私は暫くクシャナとモリスと共に歩き続けた。

「ここだ」

クシャナはそう言って、崖の近くまで来た。

この森の崖からは落ちた記憶しかない。よく無事だったわね、私。……あの時、デューク様に助けてもらったのだけど。

丁度夕日が沈む瞬間だった。

地平線に大きな太陽がゆっくりと姿を隠していく。茜色の空と陽光が森に反射して、とても美しい景色だった。思わず息を呑む。

「綺麗な場所ね」

私がそう言うと、「ここで少し話そう」とクシャナは腰を下ろした。

それを見て、モリスも腰を下ろす。……象が腰を下ろす姿はなんだか可愛らしかった。

さっきまで憎き敵みたいな雰囲気を私に醸し出していたのに、今では少し場が穏やかだった。

やっぱり、象も素晴らしい景色を見たら、心が落ち着くのかしら……。

私も彼らと共に腰をその場に下ろした。

ん~~!! なんて良い画なのかしら。

まぁ、ちょっと奇妙な状況ではあるけれど、とても良い場所で良い人と動物がいる。

「私の記憶を消してくれ」

この状況に感動していると、突然のクシャナの言葉で我に返った。

私は何も言えず、真剣な彼女を見る。

デューク様が私のことを忘れた日を思い出した。……あれはただの記憶喪失のふりだったけれど。

だけど、本当に誰かの記憶を消すなど考えたことはなかった。