作品タイトル不明
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「……なに?」
「私が自分勝手な人間なのは知っているでしょ? ……ジルのことを利用する、と言ったのも覚えているでしょ?」
ジルは不服そうに「そうだけど」と呟く。
「今回、ジルを利用しなかった理由を自分の頭で考えなさい」
「…………僕が力不足だから」
「ジルって、自己評価低いのね?」
「アリシアの前だとね」
「貴方を簡単に失うわけにはいかないからよ」
ジルを見据えるように伝えた。役に立たない場所へと連れて行き、わざわざ危険に近づけるような馬鹿なことはしたくない。
だからこそ、あらかじめ何も教えなかった。
「計画を教えれば、昨晩は眠らなかったでしょ?」
私がそう言うと、ジルはなにも言わなくなった。
…………けど、まぁ、王宮爆破計画の規模なら教えてほしいわよね。ちょっとウサギを狩ってくるわね、みたいなノリで行ったけれど、かなりの大事件だもの。
「……令嬢じゃなくなった感想は?」
「最高の気分よ」
ジルの質問に私は満面の笑みを浮かべた。
本来なら、もっと悲壮感に浸かっていてもいいのかもしれないけれど、悲しいことなど少しもない。
「疲れたでしょう、一晩眠りなさい」
お母様は私に優しい声でそう言った。それだけだった。
一見冷たく感じるだろうけれど、私はお母様のことをよく知っている。これはお母様の愛だもの。
これまでの騒ぎを起こして、一切私を責めることなく、休息しなさいと言ってくれる。
「ありがとうございます」
私はお母様に向かって軽くお辞儀をする。
「ああ、休みなさい。明日、また話を」
「明日は私はもうこの家にはいません」
お父様は私の言葉にスゥッと息を吸い込み、目を瞑る。どうやら現実を現実と受け止めきれないようだ。
放っておけば、そのまま天に召されてしまいそう……。
「アーノルド、しっかりしなさい。私はアリシアほど強い女性を見たことがないわ。この家の名の元でなくても、生きていけるわ」
「そ、そうだな、レイラ」
「我が子がいつでもこの家に帰って来れるようにしておくのが私たちの仕事よ」
お母様はそう言って、この場を去って行った。
ああ、と頷き、お母様を追うようにお父様もこの場を後にした。
良い夫婦のバランスだわ、と二人を見ていて思った。……というより、お母様が強すぎる?
おしとやかで朗らかな淑女というより、賢くてクールな美女なのよね。
「とても、良い家族ね、私たちって」
私は破顔した。心の底からそう思えた。
ウィリアムズ家の元に生まれて良かった、と。色んなことはあったけれど、この家があったから今の私がいるのだもの。
もうウィリアムズ家を名乗ることはできないけれど、十六年間この家の元で過ごせて私は最高に幸せだったわ。
自分が悪役令嬢に転生したと知ってから、これまでの時間を私は有意義に過ごせた。
いつか、また「ウィリアムズ」という名を名乗ることがあるのだとすれば、私はこの名前を誰よりも抱きしめよう。