軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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元の景色……。戻って来たのね。

私は花畑に倒れ込んだまま、ウィルおじさんを見上げた。彼はどこかバツの悪そうな表情を浮かべている。

私がウィルおじさんなら、こんな世界憎くてたまらない。

私のせいでもう一度ウィルおじさんはデュルキス国の為に働くことになったの? 私が目なんて与えたから……。

「アリシアのせいじゃない。アリシアのおかげだ」

私の心を読み取ったのか、ウィルおじさんはそう言った。

「どうして、……どうしてそんなに優しさに溢れているのですか?」

私にはそんな器はない。今までの人生を振り返っても、自分のエゴを押し付けただけだったかもしれない。

体に力が入らず、私はその場に倒れた状態のままウィルおじさんに質問した。それと同時に自分の瞳から涙がとめどなく流れていることに気付いた。

「優しさに溢れてなどいない。ただ、自分の使命を全うしただけだ。わしの知っている優しさで溢れている人はアリシア、君だ」

「わ、たし……?」

私は悪女なのに、と言おうと思ったが、ウィルおじさんが先に話を続けた。

「わしは間違いなく君に生かされた。もう一度自分の人生を歩むことができたのは、アリシアのおかげだ。この国の為に働くことなど絶対にしたくないと思ったが、君やジルのいるデュルキス国で働くのは悪くないと思った。大切な存在を作ることは怖い。いつか失うのかもしれないからね。……ただ、大切な人がいるおかげで強くなれる」

大切な者たちを守りたいと思う気持ちが、私たちに成長を与えてくれる。

ただ、大切な人を守る方法は分かるのに、大切な人を失った後の対処方法が分からない。

「…………私たちが大切ならもう少しこの世にいて下さい」

ウィルおじさんが最も困る言葉だと分かっていても、発さずにはいられなかった。

止まらない涙をウィルおじさんはそっと拭ってくれた。そして、私の体を抱えて体を起こしてくれた。

私はぺたんと花畑にお尻をつけたまま、ウィルおじさんと目を合わせた。

「アリシア、ジルを頼んだ」

ウィルおじさんのその真っ直ぐな瞳に私は少しだけジルを羨ましく思った。

ねぇ、ジル。あなたはこんなにもウィルおじさんに愛されていたのね。

「任せて下さい」と、私は確かな声でそう言った。

「君の理想の悪女像をこれからも貫きなさい。……ただ、裏切りには注意するんだ。君はあまりにも裏切られることに慣れていない」

裏切られた方が悪女らしさが出るからいいかもしれないわ。……なんて馬鹿なことを今は考えないでおこう。

「大きな力を持てば持つほど、常に人を疑わなければならない。時にそれがアリシアを苦しめることになるだろう。汚い大人の世界に入っても、自分を失わず、いつまでもウィリアムズ・アリシアでいておくれ」

どんな環境であろうと私は自分を見失わない自信がある。だって、確固たる目標があるのだもの。

「心配ご無用です」

私は悲しい思いをグッと堪えて、笑みを浮かべた。

それでもどこかウィルおじさんは心配そうに私を見つめていた。

「……この世に絶対なことなどない。もしかしたら、ジルが裏切るかもしれない」

ウィルおじさんの言いたいことはよく分かる。

たとえ、全幅の信頼を置いている相手でも寝返られることなんてある。権力の座に居座るには、他人からの支持が必要不可欠だ。

優秀な人材から信用を得るには、自分の価値を上げなければならない。

「…………それでも私は信じています。裏切られてもいいから信じているのです」

私はウィルおじさんを見据えた。「それに」と私は付け足した。

「ジルに裏切られるぐらいのウィリアムズ・アリシアには価値がないもの」

私がそう言うと、ウィルおじさんは暫く固まった後に声を上げて笑った。ウィルおじさんがこんな風に笑うのは珍しい。

……私、そんなおかしなこと言ったつもりないのだけど。

「ああ、本当に愛おしい娘じゃ」

そのウィルおじさんの表情と声で、これで最後なのだと実感した。

私はまだその現実を受け入れることができないまま、ウィルおじさんのことをただ見つめることしか出来なかった。

「アリシア、わしはいつまでも君の幸せを願っている」