作品タイトル不明
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どうしてデューク様が私の部屋へ?
出来れば一番来てほしくなかった方なのだけど……。
呻き声を聞かれたのよね。なんだか弱みを握られた気分だわ。
今の私の姿は本当に惨めだわ。これから悪女になるっていうのに……。
喉の痛さも引かないし。私、今傍から見れば呼吸困難レベルに息が出来ていないの。
体も動かせないくらい苦しいのよね。
「アリシア、これを飲め」
デューク様が私にコップを差し出した。
今の私にコップを持てる力すらないわ。
体を起こす事が出来ないのにどうやって飲めばいいのかしら。
私はデューク様が差し出してくれたコップをはねのけた。
デューク様、ごめんなさい。けど、本当に苦しいの、分かってほしいわ。
暫く沈黙があった。怒らせてしまったのかしら。
私の荒い呼吸と呻き声だけが聞こえる。
デューク様が今どんな顔をしているか分からないわ。
すると私の首にデューク様の手が添えられた。
驚く暇もなくデューク様の顔が私の前に現れた。
目を閉じていても色気を感じるって凄いわ。それに凄く良い匂いね。
デューク様の唇が私の唇に重なった。
……え? そのまま水が口の中に入っていくのが分かる。
何か考えようと思っても頭が回らないのと衝撃で何も考えられない。
今何が起こっているの?
私は口に流し込まれた水を飲み込んだ。
だんだん楽になってきた。呼吸も整ってきた。
やっぱりジョザイアって本当に効果が早いのね。自分が使って体感すると、凄さがよく分かるわ。
……今何が起こったのか考えましょ。
柔らかい唇が当たって……、これって口移し?
これってファーストキスにカウントされるの?
……ただの人命救助よね。だって私死にそうだったんだもの。
それに歳を考えてみて、私は十歳よ。そしてデューク様は十五歳。
五歳も離れているんだから、デューク様も何も考えずにしたに違いないわ。
ただ小さい女の子を助けようっていう優しさよね……。
アリシア、ちゃんと冷静に考えて。鈍感な女は嫌いなんだもの。私はヒロインじゃないのよ。
嫌いだと思っている人には口移しで助けようなんて思わないわ。
そもそも薬って使用人に飲ましてもらうものよね?
という事はデューク様は私を好きって事?
でも恋愛感情じゃないわよね。
……恋愛感情じゃなくても私を好きなら大変だわ。
だってデューク様ってヒロインと恋に落ちる設定じゃない!
もし私が虐めてもデューク様が私に乗ってきたら、それってただの弱いもの虐めよ!
悪女は虐める事は好きでも弱いもの虐めはしないのよ!
というか魔法学園にヒロインっているわよね?
ヒロインと会っているはずよね?
あれ、もう恋しちゃったのかしら。
なら私に口移しなんかしないわよね?
次々と疑問が浮かんでくる。皆、学園での話を全くしないから分からないのよね。
「落ち着いたか」
デューク様は優しい声で小さく呟いて私の頭を撫でた。
今度は違う意味で死にそうだわ。このままだと心臓が飛び出てしまうわ。私はなんとか平常心を保った。
……頭が回転してきて、ようやく思い出したわ。
貴族の男の子って菌や毒の免疫力をつける為に小さい頃に菌や毒の弱いウイルスを飲んで抗体を作っておくのよね。
だから、菌が移らないのよね……。
幼い時に苦労した分、大人になったら少しは楽出来るって事ね。
すぐ横にデューク様がいるのが気配で分かる。
いつ出て行くのかしら……。
目を瞑っているだけだけど、これって一応寝顔よね。
あんまり寝顔を見られたくないわ。
薬の副作用でだんだん眠くなってきたわ。効き目が早いの同様、副作用も早いのね。
私はそのままもう一度眠りについた。