軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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キャザー・リズの言葉にアリシアは言葉を失っている。きっと予想外の言葉だったのだろう。

僕も言葉を失っている。

「どういうこと……?」

アリシアがいつもの喋り方になっている。

「国外追放なんて罪が重すぎるもの」

「今回は私の殺人罪も兼ねて……、というより私がいうのもおかしいけど、一国の王子の記憶を消すなんて相当なことよ?」

「それでも、貴女は私の大切なお友達よ」

いつから友達になったんだ、みたいな表情を露骨に浮かべる。

どうして、皆キャザー・リズに騙されているんだ?

「……リズさん、貴女はただの平民でしょ? 貴女にデューク様が下した決断を変えることなんて出来ないと思うわよ」

段々、落ち着いてきたのかアリシアは真顔でそう言った。

「どうして? 私とデュークは」

「お友達?」

アリシアは嘲笑してそう言った。

「お友達だったら王子の下した決断に平民の貴女が口出しすることが出来るの?」

「そういうわけじゃ……。私はただアリシアちゃんの為に」

「私の為? 笑わせないで。リズさんは確かに凄い存在かもしれない。けど、あまり自分がなんでも出来ると思いあがらないことね」

冷たく蔑んだ目、こんなことを言うのも変だと思うが僕はアリシアのあの目が何故か好きだ。

いつもならアルバート達がなにか言ってくるが、今回ばかりは空気がピリピリしているのか、黙っている。……このままキャザー・リズの洗脳が溶けたら面白いのに。

「それはアリシアちゃんの方じゃない?」

アリシアは一瞬目を見開いたが、すぐにニヤリと笑った。

キャザー・リズがそんな風に返してくるなんて思わなかったのだろう。もしかしたら彼女もアリシアに影響を受けて変わり始めているのかもしれない。

「そうかしら?」

「その結果が今の状況でしょ? どんどん欲張りになるのよ。一つ手に入れたらまたすぐに新しい欲が生まれる。それが一番恐ろしいことよ。十三歳で特別にこの学園に入れたら、次はこの学園を支配したくなる」

「……確かにそれは一理あるわね」

認めるんだ。僕は軽く心の中で突っ込みを入れた。というか、この学園を支配って規模が小さい。彼女はそんな女じゃない。世界をも支配するかもしれない力量だ。それに……、例えが分かりにく過ぎる。本当に彼女が聖女で大丈夫なのか? ホワイトエンジェルさん。

「それの何が悪いの?」

アリシアの言葉にキャザー・リズは固まった。

僕はこの瞬間が好きだ。アリシアがキャザー・リズのお花畑の脳みそを踏みつぶしていく感じ。

「欲にきりがないのはいいことだと思うのだけど。野心があれば上へ這い上がることが出来る。欲は人が成長する時に一番重要なものだわ」

「……その野心が大きいほど独裁者となるのよ」

彼女の言葉に少し焦っているのか、一度深呼吸してからキャザー・リズは静かにそう言った。彼女はいつも丁寧に穏やかな口調で話す。その話し方には人の心を掴む何かがある。流石聖女だ。

「それは支配者になった時の問題でしょ。欲が狂気へと変わる瞬間は何かを統べる者となった時。小さな集団のリーダー、村長、国王……」

「欲は人をも支配するのよ。人間というものはそういう生き物なの」

「……リズさんからそんな言葉が出るなんて、貴女も変わったわね」

私の監視のおかげかしら、彼女は心の中でそう思っているに違いない。

「私はね、とても聡明で素晴らしい支配者を知っているわ。……私が思うに、欲という凶器は使い方を誤らなけば人を守る武器となる」

きっとその支配者はじっちゃんのことだろう。アリシアの口調から彼女はとてもじっちゃんの事を尊敬しているのだということが分かる。

アリシアの言葉にキャザー・リズは押し黙る。

「上に立つものは、必ず下のものを見て把握しなければならないわ。それが出来ずに欲をかく人間は独裁者に、それが出来た上で欲をかく人間はよき支配者になる。お分かり?」

キャザー・リズを馬鹿にするように彼女は口の端を軽く上げた。

その表情に僕はゾクゾクした。やっぱり、僕にはアリシアしかいないみたいだ。

「それに安心して、暴君は長続きしないわ」

「……アリシアちゃんみたいにね」

「誉め言葉として受け取っておくわ」

アリシアはニッコリとキャザー・リズに対して笑った。アリシアの反応ではなく、僕はキャザー・リズに驚いた。

彼女はアリシアに対して完全に敵意を向けている。今まで結構色々あったが、こんなにもアリシアに対して敵意を向けたことは一度もなかった。むしろいつもアリシアを説得しようとしている有り様だった。

……デュークか。自分の好きな男の好きな女に対しての嫉妬心から生まれたものか? 乙女心というものはよく分からないが、それで人が変わるのならなかなか恐ろしいものかもしれない。

「アリシアちゃん、一度貴女がどれほど恵まれた環境にいたのか再認識すればいいわ」

「あら、一度ということは、いつかリズさんが私をこの国に戻してくれるの?」

「ええ。私、お友達は絶対に見捨てないわ」

いつものキャザー・リズの表情に戻っている。純粋な女の子の表情だ。

自分のエゴを他人に押し付けるなんていい迷惑だ。僕は彼女を見ながらそう思った。