軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

173 二十歳 ケンウッド家長男 カーティス

二十歳 ケンウッド家長男 カーティス

「疲れた~」

フィンが手を上に伸ばしながらそう言った。フィンとはクラスが違うが、優秀だから俺達と一緒に課外授業を受ける事が出来る。フィンだけでなく、ヘンリもそうだ。ヘンリとアランは双子だが、どうやらヘンリの方が頭が良いみたいだ。エリックも頭は良いが、フィンやヘンリ程ではない。

フィンは俺の方をじっと見つめて、満面の笑みを浮かべた。彼の金髪が太陽に反射していつもに増して眩しい。

こいつのこの表情は何か俺に強要しようとしてくる時の表情だ。俺達の中で一番純粋そうに見えるフィンだが、彼が一番裏があるように思える。俺の考えすぎかもしれないが、フィンは可愛いを武器にして何もかも手に入れようとしている気がする。

「なんか食べようよ」

「男二人で?」

「……女の子と遊ぶのもほどほどにしておかないと、いつか刺されるよ」

フィンは呆れた調子で軽く俺を睨む。

確かに俺は女は好きだが、いつも一緒にいるのは疲れる。ずっと特定の人を愛せるような性格じゃない。

「デュークってすげえよな」

俺の言葉にフィンは大きく頷く。

「食堂に行くか」

俺達は食堂の方へと足を進めた。

食堂の前にアリシアとジルが立っていた。どうやら食堂をこっそりと覗いているようだ。

「アリシアって授業さぼるんだ」

「そんな風に見えないのにな」

アリシアの表情がどんどん険しくなっていく。食堂の中で何か起こっているのか?

「一瞬、光ったね。あれってナイフ?」

どうやらジルから何か貰ったようだ。

「アリちゃんがナイフを使うのか?」

「僕に聞かれても分からない」

俺達はアリシア達の様子を見るために食堂へ近づいた。

そういえば、フィンってアリシアの事をどう思っているのだろう。リズを好きって感じはなさそうだし……。けど、アリシアの味方って雰囲気を醸し出しているわけでもない。

「何? 僕の顔に何かついてる?」

「いや、何も」

ついフィンをじろじろと見てしまっていた。

「見て、あれ」

フィンは俺の事など気にせずに、アリシア達の方を指さした。

アリシアは女子生徒三人組の前に立って、じっと彼女達を睨んでいる。

……凄い殺気だ。まさか本当にあのナイフで何かしようとしているのか?

「どうして貴方がこんなところにいるのよっ!」

「突然現れて気持ち悪いわ……」

「もしかして今までの話を全部聞かれていたとか?」

アリシアは黙って彼女達の言葉を聞いている。

一体彼女達は何の話をしていたのだろう。アリシアをあそこまで怒らせているんだ。よっぽどの事を言っていたのだろう。

「もしかして、エマが何か言ったんじゃない!?」

「リズ様を裏切ったわけ? やっぱり最低だわ」

「あんな奴、早くこの学園から消えればいいのよ」

エマって確か、リズを慕っていた子だよな……。

女子生徒三人組の悪口はどんどん酷くなっていく。エマを罵倒する言葉はとても貴族が使う言葉だと思えない。それでもずっとアリシアは黙って話を聞いている。

……流石に言い過ぎじゃないのか? まだ止めないのか? 確かに、アリシアはエマのためにこの悪口を止める義理はないだろうけど。

「突っ立ってないで、何か話したらどう?」

「もしかして、私達に怯えて言葉が出ないとか~?」

彼女達はアリシアを馬鹿にするように笑う。アリシアは少しも動かず、彼女達を睨む事もせず突っ立っている。

どういう事だ? 何しにアリシアは食堂に入ったんだ……?

俺はフィンの方をちらりと見た。フィンは首を少し傾げて肩をすくめた。

どうやらフィンもアリシアの行動を理解できていないらしい。

「本当に何も話さないわよ」

「なんだか気味悪いわ」

「ウィリアムズ家のアリシア様も大した事ないのね」

「いつもあんなに威張っているくせに、三人相手だと怖気づいたんじゃないかしら」

女子生徒達は本人の前でアリシアの事を貶し続ける。

アリシアがこんな状況になっても何も言わないなんて、おかしい。

俺は彼女達の悪口を止めようと食堂に足を踏み入れた。