軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

111

アリシアは安堵の笑みを浮かべている。

無事に魔法が成功して安心しているみたいだ。

じっちゃんはアリシアの方を見ながら固まっている。

まだ、自分に何が起きているのか理解できていないようだ。

……やっぱり、そうだ。じっちゃんは、そうだったんだ。

僕の予想は確信に変わった。

「ウィルおじいさん?」

アリシアがじっちゃんの方に少し顔を近づける。

じっちゃんがアリシアの頬にゆっくり手を置いた。その手は小刻みに震えていた。

「アリシアはこんなにも綺麗な顔をしていたのか」

じっちゃんは涙を堪えながら震えた声でそう言った。今にも涙が落ちそうだ。

今までに聞いた事のない声だった。

僕は胸の奥から何か熱いものが込み上げてくるのを感じた。

「ウィルおじいさんは……」

アリシアは目を瞠ってじっちゃんを見ている。アリシアも気付いたようだ。

「信じらんねえ」

「ウィルじいに目がついたぜ」

「あの美少女って何者……」

「私達を救ってくれるのかな」

「けど、貴族っぽいぜ」

一人が喋り始めると皆が一斉に話し始めた。

一気にざわざわと騒がしくなる。

この村の人達の会話が……いつもと違う?

妙におとなしい気がする。

アリシアが魔法を使えると知って勝ち目がない事が分かっても、いつもなら間違いなく罵る奴らがいるはずだ。

それに、じっちゃんやレベッカがこの村を従えているみたいだ。

「何があったんだ」

「アリシアが頑張っているんだったら、私達も頑張ろうってなったのよ。まぁ、私は手伝っただけで実際は師匠がほとんどここの治安を良くしたんだけどね」

レベッカが僕の独り言に答えてくれた。

じっちゃんの事を師匠って呼んでいるんだ。

「他の奴らはこの村の奥に逃げて行ったよ。だから、前までは全体的に治安が悪かったけど、今は良い所と悪い所で分かれているって感じかな」

「これからどうするの?」

「それをさっき話し合っていたんだよ」

レベッカはそう言って軽く笑った。

実際にはじっちゃんとレベッカがこの村を良くしたんだろうけど、軸となっているのはアリシアだ。

彼女は意識していないんだろうけど、自然と人を魅了する。そして、人の心を掴むのが上手い。

けど、リズ宗教の人達の心を動かすのは今や難しいかもしれない。

まだ、アリシアには言っていないけど……リズ宗教の洗脳っぷりは半端ない。

リズのファンクラブみたいなのもできたそうだし、とりあえず、リズは崇拝されている。

二年間で彼女の純情さが魔法学園の皆に浸透した。全員とは言い切れないが。

まぁ、アリシアの事だからもうそれには気付いているだろうけど。

「アリシア、本当に有難う」

じっちゃんの言葉で周囲はまた静まり返った。

一滴の雫が静かにじっちゃんの頬を伝った。

彼の涙はこの村全員の心を痺れさせた。

じっちゃんが泣く所を僕は生まれて初めて見た。

皆、目を見開いて茫然としている。

「師匠が死んだらアリシアに目が戻ったりするの?」

この静けさを破ったのはレベッカだった。

レベッカは僕の顔を覗き込む。

「そうだよ。死んだら持ち主の所へ戻る」

けど、たとえそうだとしてもなかなか自分の目を人に渡そうとは思わない。

アリシアはじっちゃんには見返りなんて求めていない。

……悪女の道のりは遠いな。

僕は自然と笑みがこぼれた。

アリシアがじっちゃんに目を移して分かった事がある。

じっちゃんは僕の想像よりも結構若い……。

瞳があるのとないのとでは人の印象は随分変わる。

「結構ハンサムだな」

「分かる、格好いい」

「じいさんが好みなのかよ」

「目って重要だな」

「多分、五十歳ぐらいだぜ」

「でも髪の毛は真っ白よ」

「喋り方もじじいって感じだしな」

数人の若く張りのある声が耳に入ってくる。

声を潜める事もせずに、大きい声で会話している。

貶しているのか、褒めているのか、よく分からない。

おじいさんというよりおじさんって感じだ。

「ウィルおじいさん」

アリシアが落ち着いた声で静かにそう言った。

あの様子だと、彼女はもう分かっているのだ。

アリシアは目でじっちゃんに語りかけている。

じっちゃんもアリシアの言いたい事が分かったみたいだ。

あの時……確かに見覚えがあると思ったんだ。

だから、デュークに聞いたんだ。

王宮に飾られている壁の絵は誰と誰なのか、と。

「わしの名前はシーカー・ウィルじゃ」

空気が引き締まるような威厳のある重く低い声が響いた。