作品タイトル不明
223 クレアからの手紙
合獣ダンジョンの踏破後、俺はその足で【宵月】に戻り、ギルドマスターに今回の一件を報告した。
最後まで聞き終えたギルドマスターはこめかみに手を当て、疲れ切った様子で項垂れる。
「……天音。お前は本当に、行く先々で面倒ごとに巻き込まれるな……」
今回はさすがに、俺のせいじゃないと思うんだが……
などと考えていると、ギルドマスターは切り替えるように「ふう」と息を吐く。
「まあ、よくやってくれたよ。はっきりとした事の経緯が分からずしまいなのはアレだが、お前がいなかったら斎藤たちは間違いなく殺られていただろうからな」
「知り合いなんですか?」
「そりゃ、トップギルド同士付き合いはあるからな。後のことはこっちに任せておけ。お前のことがバレない範囲で事情を探ってみる」
「助かります」
これで正真正銘、解決と言っていいだろうと胸を撫で下ろす。
しかしそんな俺とは裏腹に、ギルドマスターは困ったような表情を浮かべていた。
数秒程の間を置いた後、彼はゆっくりと口を開く。
「にしても、合獣ダンジョンに引き続き、これで複数のSランク魔物討伐者になったのか。それなら確かに、もう止める理由はないな……」
そう呟きながら、ギルドマスターはデスクの引き出しを開け、一枚の封筒を渡してきた。
「ほれ、受け取れ」
「これは……?」
「ついさっき届いたばかりのクレアからの手紙だ。これを読んでどうするか、あとはお前自身で決めてくれ」
「……クレアから、ですか」
クレアは今、Sランク冒険者として特別な長期任務に向かっているはず。
わざわざ手紙を送ってくるということは急用?
いや、それなら普通に電話などで連絡してくるか。
けど、だとするなら一体……
「読んでみます」
疑問に思いつつも、俺はその手紙を受け取るのだった。
◇◆◇
帰宅後、俺はさっそく封を開け、クレアからの手紙を読み始める。
まずはいたって普通の挨拶から。
しかし本文に入ると、驚くことが書かれていた。
『今回、凛くんに伝えたいのはSランクダンジョンの存在についてです』
「Sランクダンジョン……?」
それはあまり聞き馴染みのないワードだった。
通常、この世界に存在するダンジョンのランクはA止まり。
迷宮崩壊時など、一時的にSランクといって差し支えない難易度まで跳ね上がることはあるが、続きを読んでみたところ、どうやらそういうのとは異なるようだった。
Sランクダンジョン。
一言でいうと、ダンジョンボスのレベルが10万を超えているダンジョンのこと。
表には明かされていないが、なんと日本には常設のSランクダンジョンが一つ存在するのだという。
仕組みも通常のダンジョンとは異なり、一人ずつしか入場することができず、一週間の 再挑戦期間(スパン) は 全(・) 員(・) 共(・) 通(・) 。
その代わり、莫大な攻略報酬が貰えるようになっている都合上、Sランク冒険者が順番に攻略していくことになっているのだという。
そして、ここからが本題。
一週間後にクレアの番が迫ってきているが、長期任務がもう少しかかることもあり、当日まで俺が代わりに攻略するのはどうかと書かれていた。
もちろん、協会には秘密で――という補足付きでだ。
「これがクレアの言っていた、重要度の高さから秘匿されているダンジョン情報の一つってわけか」
Sランクダンジョンなだけあり、当然、難易度は高い。
ボスの情報も記載されているとはいえ、実際に戦ったら何が起きるかなど分からず死ぬ可能性もある。
そのため最後の判断は俺に任せると、最後にはそう綴られていた。
――ただ、
「答えはとっくに決まってる」
いくらリスクがあろうと、今さらそんな理由で退く自分ではない。
強くなるための近道があるのなら、俺は迷うことなくその道を突き進む。
「よし」
その目標に辿り着くためにも。
さっそく明日から、俺はSランクダンジョンへ挑戦することにしたのだった。