軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

194 誓ったわけ

迷宮崩壊後、簡単な事後処理を終えた後。

クラシオンに戻ってきた俺と七海さんは、一室で向かい合うように座っていた。

話したいこととは一体なんなのだろうか。そう思っていると、おもむろに七海さんが口を開く。

「まずはお疲れ様、天音くん。君のおかげで被害を最小限に抑えられた。心から感謝するよ。しかし本当によかったのかい? ラストボスを討伐したのが私だということにして」

「はい。その方が俺にとっても都合がいいので」

「……そうかい。何か理由があるのだろうし、深くは訊かないでおくよ」

一つ間を置き、七海さんは続ける。

「さて、ここからが本題なわけだが……君に一つ訊きたいことがある」

「はい」

「君は彼女を……クレアくんのことをどう思っているんだい?」

「……へ?」

予想外の問いに思考が停止し、無意識のうちに素っ頓狂な声を零してしまう。

そんな俺の反応を見た七海さんはくすりと笑った。

「すまない、訊き方が分かりにくかったね。クレアくんの冒険者としての実力について、君がどう思っているのか尋ねたかったんだ」

「なるほど、そういう意味ですか」

「君が望むのなら、色恋沙汰の相談に乗るのもやぶさかではないがね」

「……間に合ってるので大丈夫です」

適当に流したのち、どう答えるべきかを考える。

とはいえ、答えることなど初めから決まっているが。

「……強いとしか言いようがありませんね。どう足掻いても勝ち目が見出せないくらいに」

「そうか。それは私が抱いた感想と全く同じだね」

「七海さんもですか?」

七海さんはSランク冒険者であり、超常的な力を持った中の一人。

それこそイフリートやケルベロスと比べても群を抜いているだろう。

そんな彼女が敵わないと思えるほどにまで、クレアの実力は圧倒的なのか。

いまいち実感できない内容に首を傾げていると、七海さんは告げる。

「クレアくんとは何度か共にダンジョンを攻略したことがあるが……常に他人とは一定の距離を置いているような印象だった」

「……七海さんとはかなり仲が良さそうでしたが」

「うん、かなり頑張って距離を詰めさせてもらったからね」

そう言って七海さんは楽しそうに笑う。

「ただ今でも、他人と必要以上に近付かないでおこうとする壁のようなものは感じるよ。クレアくん自体が故意にそうしているんだろう……だからこそ興味が湧いたんだ。そんな彼女が君だけ、他とは違う柔らかい反応を見せることに」

「…………」

「親近感、いや期待感といった方が近いだろうか。君がどんなふうに彼女の信頼を得たのか、よかったら聞かせてくれないかい?」

ふむ、困った。

他人から見たクレアの姿を聞くのは、東雲さんに続きこれで二回目だろうか。

俺の印象以上に、彼女が周りと距離を置こうとしていたことがよく分かる。

仮に七海さんの言う通り、クレアが俺に対して親身に接してくれるとして。

その理由がどこにあるのかは分からない。

ただ一つ、彼女の内面に踏み込んだ瞬間があるとするなら――

「誓ったんです」

「誓った?」

「はい。いつの日か必ず、お前に追いつき、そして追い越してやるって」

「……君は、彼女の強さを知っているんじゃなかったのか?」

「ええ。 だ(・) か(・) ら(・) 誓ったんです」

「――――――」

七海さんは大きく目を見開く。

まるでその答えを全く想定していなかったように。

だけどそれもほんの一瞬で。

七海さんはすぐに「ふふふ」と笑い声を零し始めた。

「なるほど、ようやく理解したよ。それは確かに、彼女が君に興味を持つには十分すぎる理由だろう」

「七海さん?」

「私は諦めた。彼女の背負うものの重さを測り切れず、最後の一歩を踏み込むことができなかった。けれどきっと君なら……」

最後はボソボソと言っていたからよく聞こえなかったが、七海さんの表情は明るかった。

そして顔を上げて俺を見る。

「質問に答えてくれてありがとう、天音くん。私としても、君の誓いが実現することを心から願っているよ」

「……ありがとうございます」

結局、七海さんの用事はそれだけだったようで、その後すぐ俺たちは解散することになった。

そして俺はクラシオンを後にし、帰路につくのだった。