作品タイトル不明
174 四人目の条件
呼び方についてまとまったところで、話題は今後のことに移る。
つまり宵月加入後、俺たちがどういう風に活動していくか。
具体的にはパーティー編成についてだ。
「俺はソロを続けるつもりだからいいとして、問題は華だな」
その言葉に反応したのはクレアだった。
「確かにそうですね。華さんのユニークスキルの真価が発揮されるかどうかはパーティーメンバー次第です。それに加えてレベルが近く、性格的な相性面も考えるとなると……候補は限られますね」
「限られるってことは、少なくとも何人かはいるのか?」
「はい。今、凛くんの目の前に」
「……ああ、そういうことか」
その言葉を聞き、ようやく得心が行く。
「……わたし?」
「ふえっ?」
視線を向けた先で、零と由衣がきょとんとした表情を浮かべていた。
確かに零はユニークスキルを、由衣も優れたヒーラー系のスキルを幾つも持っている。
相性は申し分ない。ただ問題があるとすれば……。
「レベル差はどうなんだ? 三人の実力がかけ離れているようなら、パーティーを組むわけにもいかないだろ」
以前、零は1000レベルを超えたと言っていた。
華は500ちょいだし、おそらく由衣はそれ以下だろう。
平均レベルがもう少し高ければ、500レベル差くらいは許容範囲かもしれないが……現時点で考えるなら倍以上レベルが離れることになるし、一緒にパーティーを組むのはかなり危険だ。
そんな風に考えた上での発言だったのだが、零は首を横に振る。
「まだ凛には伝えていなかったかもしれないけれど。あの時、管理者討伐報酬によって私たちのレベルは上がった」
「っ、本当か?」
「うん。それでわたしは2000レベルに。華や由衣は1500になった」
「ちなみに私たちのレベルも1000上がったわ。凛くんの活躍を横取りするみたいで、少しだけ心苦しいのだけど……」
零や東雲さんの言葉に、華や由衣も頷く。
どうやらダンジョン攻略報酬と同様、管理者討伐報酬はあのボス部屋にいた全員に与えられたとのことだった。
これは嬉しい誤算だった。
「そんな風に思う必要はないですよ。俺にとっても喜ばしいことですから」
「……そう。凛くんがそう言ってくれるなら、私も重荷に思うのは止めておくわ。それより、話を戻しましょう」
「はい」
頷いた後、俺は続ける。
「確かにそういうことなら、三人でパーティーを組むのもいいかもしれないが……やっぱりまだ一つ不安があるな」
「不安、ですか?」
由衣が首を傾げるのを見て、俺は頷く。
実は以前にも、この三人のレベルが近ければ、相性のいいパーティーになるかもしれないと考えたことがある。
しかし、その時にも思ったのだ。もう1ピースが足りないと。
「一番の実力者として切り込み隊長を務める零、柔軟に対応する華、サポートに徹する由衣……一見バランスが整っているように見えるけど、逆に言えばそのバランスを少しでも崩されれば一気に瓦解する可能性がある」
この中で唯一、自衛の手段を持っていないのが由衣だ。
零や華は、敵から自分の身を守る手段は持っていても、味方を守ることに適しているわけじゃない。
これで由衣の方がレベルが高かったら何とかなったかもしれないが、現実は逆。
そこをカバーできる、守りに特化した人材が一人でもいれば現実味を帯びてくるんだろうが……
「クレア。ギルドの中に、条件に合ったタンクがいたりしないか?」
「……三名と同レベル帯でとなると、少し難しいかもしれません。少なくとも現状、そういった人材はいませんね」
「そうか」
宵月ギルドは少数精鋭。
だがその反面、人材の幅広さという面では優れていないのだろう。
まあ、予想していた通りだ。
こうなった以上、この問題を解決するには外部から条件に合ったタンクを連れてくるのが一番なんだろうが……
「そんな都合のいい奴が突然現れるわけないし――今考えても仕方ないか!」
そう結論を下し、ひとまず今日の話し合いはそこで終わるのだった。