軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンの穴

学校を停学処分にされてから一晩経過した。

寝る前は「自分は悪くない」と怒り心頭だった。

けれど、一晩寝たら意外とすっきりした気分になっていた。

これも、スーちゃんのおかげかもしれない、と思った。

僕の魔力を寝ている間にも食べてくれていたようで、一晩中、 超集中(ゾーン) の状態が続いていたらしい。

そのおかげで、体だけでなく気分まで軽くなっていたのかもしれない。

なんにせよ、僕はもうさほど停学になってしまったことについては気にならなくなっていた。

気になるのは、やっぱり渚のことだ。

僕は昨日渚を取り囲んでいた連中と喧嘩をして相手を倒すことには成功した。

けれど、それで問題が解決したとは思えなかった。

僕が喧嘩に勝ったところで、相手はそれを逆恨みして余計に渚を攻撃することだってあるかもしれない。

そういう心配があるのだけれど、僕のスマホには夜中に何度も渚からメッセージが送られてきており、そこには感謝の言葉と、一緒に渚の気持ちも綴られていた。

いじめをしてくる連中に僕が立ち向かう姿を目の前で見て勇気をもらえた。

自分もそうなりたい。

僕のようになりたいから、これからも一緒にダンジョンに行って穴掘りをして体を鍛えたい。

そんな内容だった。

いい考えだと思う。

暴力で物事を解決するのはよくないとは言われるけれど、実際のところ相手からの暴力をはねのける力があればいじめられる可能性は低くなるはずだ。

少なくとも肉体的な暴行は減ると思う。

そういう意味では渚は体が華奢すぎるから狙われやすいだろうし、力をつけるのはいい考えだと思う。

別にダンジョンで穴掘りにこだわる必要はないかもしれない。

けれど、魔力操作に慣れて 超集中(ゾーン) が使えるようになったほうが、ほかの運動をするのにもいい影響があるはず。

だから僕は、いつでも大歓迎だと返信しておいた。

さて、渚のことは心配ではあるけれど、僕にできることは限られている。

いつでも渚の味方になることは確実として、僕自身はこれまでどおりダンジョンへ行こう。

スーちゃんのおかげですっきりの寝覚めで早朝に起きた僕は、早速家の冷蔵庫にある食べ物をあさり、お腹いっぱいまで食べて出かけることにした。

自宅謹慎を守る気はあんまりない。

今日も今日とて朝早くからダンジョンで遊ぼう。

こうして、僕はお母さんが起きるよりも早くに朝ごはんを食べて家を出た。

今日は自転車に乗ってダンジョンへと向かう。

ただ、なんとなくお地蔵さんの前を通るときには自転車を降りて手を合わせ、軽く掃除をしておいた。

そうして僕は、週の半ばのただの平日の朝早く、まだ日も昇らぬ薄暗い時間帯にダンジョンへと入った。

そしていつもどおり穴を掘る。

この時は、まさかこんなことになるとは思わなかった。

いつものように気が済むまでダンジョンの壁を掘り、穴を広げて土を持ち帰る。

それだけのつもりだった。

まさか、ダンジョンの壁に掘っていた穴の底が抜けるだなんて思いもしなかったのだ。

意気揚々と穴掘りを進めていた僕の目の前のダンジョンの穴。

それが、何の前触れもなく、崩壊した。

僕は、ダンジョンに開いた漆黒の穴へと体ごと落ちてしまったのだった。