軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

元通り

「おう、坊主。精が出るな。今日もダンジョンの壁を殴りに来たのか?」

ダンジョンの入り口で声を掛けられる。

監視員のおじさんだ。

この人はいつもここに立っているんだろうか?

どうやら顔を覚えられてしまったみたいだ。

初めてダンジョンに入り、壁を殴った。

日常の生活で溜まるストレスを発散するためにやったことだ。

正直、また来るとは自分でも思わなかった。

ダンジョンの壁を無心になって殴り、外に出たら暗かった。

外に出ると、すでに暗くなっていた。

その時は、もうやめたほうがいいかもしれないと思った。

だけど、そんな僕がまたここに来たのはまたしても母さんの言葉がきっかけだった。

「こんな時間までどこをほっつき歩いていたんだ」

「宿題はやったのか」

玄関をくぐった瞬間、顔を合わせるなりそれだ。

せっかく発散できたはずのストレスが、あっという間に振り切れてしまったのは言うまでもない。

というわけで、僕は昨日に引き続き、今日もダンジョンにやってきたというわけだ。

昨日と同じように指ぬきグローブをはめた上から軍手を重ねて手をガードしている。

実は、ちょっと手が痛かったりする。

手袋で拳を守っていたとはいえ、やっぱり何度も壁を殴っていたら傷がついていた。

ひりひりする感じだけど、今日も壁を殴れるだろうかと自分でもちょっと心配はしている。

まあ、あんまり痛かったらそのときに考えよう。

監視員のおじさんに適当に返事をしてダンジョンの入り口から中へ入っていく。

そして、昨日壁を殴った場所に再びやってきた。

……たしか、この辺だったよね?

同じ場所だと思うけど、もしかしたら違うかもしれないという不思議な感じに襲われた。

昨日は何度も壁を殴っていたからか、同じ場所を殴り続けたために周囲のほかの壁とは見分けがつくようになっていたように思う。

だけど、今日同じ場所に来たら、昨日僕が殴っていた壁は殴る前と同じ状態に戻ったのか、そのほかの壁とは見分けがつかなくなってしまっていた。

昨日、何度も何度も拳を叩きつけたはずの場所。

表面が崩れ、色が変わり、見分けがついていたあの部分。

それが――ない。

まるで、最初から何もなかったみたいに。

もしかして、ダンジョンの壁って壊しても元通りに戻ったりするものなのかな?

そうかも。

だから、入口にいた監視員のおじさんは僕がダンジョンの壁を殴ると言っても全然気にしていなかったのか。

もしも、壁が壊れてしまうんだったら、普通に考えれば止めるだろうし。

ま、気にすることないか。

同じ場所を何度も何度も殴っていればその土の壁の表面が少し崩れて周囲とは見分けがつくようになるからといって、別に本当に壁を壊しているわけじゃないし。

家の壁みたいに穴が空くわけでもないんだ。

なにも気にすることなく、今日も僕は昨日と同じように壁を殴り、ストレス発散を行い続けた。