作品タイトル不明
褒める
「よし。お前の名前はスーちゃんだ。いいな、スーちゃん、これから僕が呼んだときにはすぐに来るんだぞ。わかったら体をブルブル震わせてみてよ」
足元にいる動く泥であるスライム。
本来は人間の敵となるスライムだが、なぜだか僕はそのスライムに親近感が湧いてしまった。
楓ちゃんのようにスライムの体の中にあるであろう魔石を抜き取るなどすれば多分倒せるのだろうけれど、そうはせず、逆に名前なんかを付けて呼びかけまでしてしまった。
僕がスーちゃんと名付けたスライムが呼びかけに答えてブルブルと震える。
これは、きちんと言うことを聞いてくれたということでいいんだろうか。
でも、なんでだろう?
スライムはどう見ても脳みそなんかない動く泥なのに、人間の言葉を理解する知性なんてあるんだろうか。
わからないけれど、とりあえず僕の言うことを聞いてくれたことには変わりはない。
なら、これからどうすればいいんだろう。
ふと思い浮かんだのは、動物の飼育だ。
たしか、動物に芸を仕込むときには命令したことが上手にできれば餌をあげてほめてあげていたように思う。
そうすれば相手もうれしいだろうし、次も同じように頑張ろうとして、言うこと聞いてくれるようになるはずだ。
スーちゃんも、ちゃんと僕の言うことを聞いて震えてくれた。
なら、同じようにほめてあげないといけないよな。
「よしよし。よくできたね。偉いよ、スーちゃん。……触ってもいいかな? 触るよ。僕のことを溶かして食べようとしないでね」
しっかりと相手にわかるように褒めてやろうと、声を掛けながら手を伸ばす。
が、スライムがダンジョンに残されたものをその体で溶かして食べてしまうという話を思い出して一瞬手が止まった。
だが、触ってもいいかと聞いたら、なんとなく「いいよ」と言われた気がして、恐る恐る手を伸ばしてスーちゃんの体のてっぺんを触る。
うーん、泥だ。
まぎれもなく僕が作ったダンジョンの土と水を混ぜて作った泥でできた体だ。
撫でてみても、特に気持ちいいわけではなく、手が汚れるのが気になってしまう。
だが、手で触れているスーちゃんからは僕がなでなでしたことを喜んでくれているように感じた。
なんだろうか、この感覚は。
出会ったばかりのモンスターであるスーちゃんの気持ちがわかる気がするというのは、おかしいんじゃないだろうか。
毎日ダンジョンで穴ばかり掘っているせいで、頭がおかしくなったんだろうか。
ま、いいか。
もしそうだとしても、目の前にスーちゃんがいて、僕に懐いてくれているのは間違いのない現実だ。
だから僕は、スーちゃんをさらに撫で、ペットボトルから追加できれいなお水をあげたり、魔力を与えたりして可愛がることにした。