作品タイトル不明
天井貫通
「出た……! 出られた。やったよ、スーちゃん」
どれほどの時間が経ったのだろうか。
もう、それを知る術はない。
スマホの充電が完全に切れてから、何度も何度も諦めそうになる精神を奮い立たせ、スーちゃんと一緒に穴掘り作業を続けていた。
穴の中は完全な暗闇だった。
音もない。
あるのは、僕の体が動く感覚と、掘る音だけだ。
正直、ダンジョンの不思議な力で穴の中の空気が無くならなかったのはこれ以上ない幸運だったと思う。
普通だったら、とっくに窒息していただろう。
そんな時間感覚の無くなった空間で疲れたら寝て、起きたら穴を掘り、お腹が空いたらスーちゃんの体を食べさせてもらう。
どれほどの時間を過ごしたのかもわからない。
もう何年も経ったのではないかと思うくらいに時間感覚が狂ってしまった――そのとき、光が差した。
横穴から頭上へと穴を掘る向きを変えてスコップを突き上げたときに、その先からほんのわずかな光が、確かに差し込んだ。
あとは、ただひたすらに頭上を掘り続けた。
僕の体に降り注ぐ土も気にせず、穴を広げ少しでも光を見ようとスコップを動かし続ける。
そして――僕は外へ出た。
ダンジョンの天井を抜け、その先の地面へとたどり着いた。
「草原……って感じでもないけど、荒野でもないな。土は乾燥気味だし、イメージ的にはサバンナのようなフィールドなのか」
穴から這い上がった僕は周囲を見渡す。
今更ながら、危険だったかもしれない。
全く未知の空間に出てきたのに、穴から出られる喜びで周囲の安全確認をせずに飛び出してしまった。
まあ、それも仕方ない。
だって、暗闇の中は本当に気が狂いそうだったのだから。
テンションが上がるのも仕方がない。
しかし、改めてみると、ここはどこなんだろうか。
最初に落ちた草原とも違うし、そのあとに超巨大なモンスター同士の戦いで変わってしまった荒野とも違う風景がそこにはあった。
短い草が生えていて、ところどころに木があるこの風景はなんとなくサバンナっぽい雰囲気がある。
ダンジョンの中にはこういう場所もあるのか。
ということは、ここはまだダンジョンの入り口近くとはほど遠い場所に位置するのではないだろうか。
ダンジョン入口を入ってすぐは洞窟エリアだったし、多分しばらくは同じようなフィールドが続くはずだと聞いている。
もしそうならば、ここからまた移動しないといけないのか。
出口はどこだ?
誰かいないのか?
ようやく暗闇の中から脱出できた僕は――また、迷子になった。