軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

(最終話)後悔するならご勝手に

「フレディ殿下! これは一体どういうことですか!」

私がフレディ殿下と話をしているところへライアン様が息を切らしてやって来た。

フレディ殿下が私に話しかけた時から中庭には人が増え続けていて、今はフレディ殿下と私の話を聞いている生徒達で溢れていたけれど、ライアン様がいらしたら自然と道が出来てライアン様はすぐに私の隣まで辿り着いた。

「デイジー。大丈夫だったかい?」

ライアン様は、心配そうに私に聞いてくださった。

「はい。フレディ殿下に、ルーラ様とお幸せになってくださいとお伝えしたところです」

「ははっ。それはとても大切なことだね」

笑顔で答えた私の言葉に、ライアン様も笑ってくださった。

だけどすぐに厳しい顔をして、フレディ殿下を見た。

「詳細はデイジーにも確認しますが、フレディ殿下が『王命でライアンと婚約を結ばされて可哀想なデイジーを迎えに来た』とデイジーに詰め寄っていると知らせてくれた者がいます。このことは、正式にサマセット公爵家から王家に抗議しますから覚悟してください」

これだけたくさんの目撃者がいるうえに、公爵家から正式な抗議がきたら、フレディ殿下の立場はもうないだろうと容易に想像が出来た。

顔色をなくしたフレディ殿下は、ただ呆然とライアン様を見て『違う……僕は……』と聞き取れないほどの小さな声で口を動かしていただけだった。

それは、いつも自信に満ち溢れていたフレディ殿下の初めて見る姿だった。

「フレディ殿下。デイジーを手放したことを、後悔するならご勝手に。けれどどんなに後悔しても、デイジーがフレディ殿下の許に戻ることは二度とありませんよ」

厳しい顔をしたままライアン様は、まっすぐにフレディ殿下を見て告げた。

フレディ殿下は、今にも膝から崩れ落ちそうに見えた。

そんなフレディ殿下を見ても、私はもう何も感じなかった。

「そうだろう? デイジー」

先ほどまでの厳しい顔から一転して、蕩けそうなほど甘い顔をしてライアン様は私を見つめた。

その顔に周りの女子生徒達からは黄色い歓声が上がったし、私も頬が熱くなるのを感じた。

「はい。私は、一生ライアン様と生きていきます」

私もライアン様を見つめた。

なぜか今度は男子生徒達の歓声が上がって、ライアン様は顔を赤くした。

そして、気付くと中庭は、集まっていた生徒達の拍手で溢れていた。

「これは……?」

戸惑う私にライアン様が笑いかけた。

「きっと皆、僕達を祝福してくれているんだよ」

私達を祝福してくれている? こんなにたくさんの生徒達が?

私はなんだかくすぐったくなって照れてしまった。フレディ殿下の婚約者としてパーティー等に参加したことは何度もあったけれど、こんなにたくさんの人達から純粋に祝福されたのはきっと初めてだわ。

「デイジー。今日は青空だよ」

ライアン様の言葉に、私は空を見上げた。そこには白い雲と真っ青な空が広がっていた。

「デイジーは今、青空の下で日差しを浴びながら皆から祝福されているんだ」

「……私は、これからきっと青空が好きになります……」

私の言葉にライアン様は、とても嬉しそうに笑ってくれた。

「これからも一緒に、デイジーの好きな物をもっと増やしていこう」

私はきっと、ライアン様と一緒に見たもの、ライアン様と一緒に食べたもの、ライアン様と一緒に聞いたもの、そのすべてを好きになってしまうのではないかしら? ライアン様と一緒にいると、私の世界が好きなものだらけで溢れてしまいそう。

……それは、なんて幸せなことなのかしら。

お父様の命令だけを聞いてフレディ殿下のために尽くすだけだった今までの私の人生では、決して感じることの出来なかったであろう喜びと期待で胸が溢れた。

お父様やフレディ殿下がこれからどうなるのかなんて、ライアン様が言ったように後悔をするのかなんて、二ヶ月の眠りから目覚めた後の私にとってはどうでもいいことだった。

だって、私の人生は今、初めて輝き出したのだから。

これから私は、自分のために生きていく。

私に生きる希望を与えてくれたライアン様と一緒に。