軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8 販売

トマトやジャガイモの栽培は順調で、グリューンと住民が協力して計画を立て、順次増産している。

またチーズ作りも例年の3倍以上増産することができているし、「フルーツの木」から採れたフルーツも少しずつドライフルーツに加工している。

そんな状況なので、この冬を凌ぐだけの備蓄食料を確保することができた。

「こんなに安心して冬が越せるなんて、初めてです」

「聖女殿に感謝しかないな」

グリューンとゴブリナの表情も明るい。

「そろそろ行商がやって来る時期だ。今までは買うばかりだったが、今度はこちらからも行商に売れる。行商に売る商品を選定しなければな」

「グリューン様、実は私も販売したい商品があるのです」

「そ、そうか・・・止めはしないが、あまり多く作り過ぎないようにな」

「そうですか?絶対に売れると思うのですが・・・」

ゴブリナが去った後、グリューンが声を掛けてくる。

「我の勘だが、多分売れないと思う。ゴブリナが大損しなければいいが・・・」

「私も売れそうにないと思いますが、損をすることはないので、心配しないでください」

「聖女殿は、ゴブリナが何を売るが知っているのか?」

「一応は・・・」

ゴブリナが販売しようとしているのは、小型女神像だ。

「創造の木」で作っているので、原価はゼロだが売れるとは思えない。ただ、嬉しそうなゴブリナを見ると止めることができなかった。

「なるほど・・・最悪、こちらから行商に金を渡し、形だけでも買ったことにしてもらおう」

「そうですね・・・」

私もそうだが、グリューンもゴブリナに甘い。

グリューンが言うには、グリューンの両親が早逝したのでグリューンは幼少期、ゴブリナと共にゴブリナの祖母に育てられていたらしい。そんな環境だったので、ゴブリナのことを妹のように思っているとのことだった。

「とりあえず、しっかり売れるように頑張りましょう」

「そうだな」

★★★

行商がやってきた。

行商の代表は猫人族のシャムという男だった。ゴブリンぐらい小柄で猫っぽい顔をしている。その後ろに多くの獣人スタッフと、屈強な虎っぽい顔の虎獣人の護衛が3人控えていた。

グリューン以下、住民総出で出迎える。

「シャム殿、遠路遥々ご苦労であった」

「お久ぶりですニャ。グリューン様も元気そうで何よりですニャ」

「細かい商談は領主館でしよう」

「はいニャ」

まあ、領主館と言ってもただのグリューンの家だけどね。

代々この集落の長が住むことになっているそうだ。

領主館に着くと、シャムの笑顔は消え、申し訳なさそうに言った。

「非常に申し訳ないのですが、早めに借金を返してほしいですニャ・・・厳しいの分かっているのですが、こちらも事情があるのですニャ。こういったことは言いたくはないのですが、返してくれないと取引を・・・」

グリューンが言う。

「金はないから、商品で払うということで構わないか?」

「構いませんが、商品の査定は厳しくさせてもらいますニャ」

早速、商品を見せることになった。

前世では商品やサービスのプレゼンをすることもよくあった。明らかに性能の劣る商品を売るのはかなり苦労した。それで言うと、今売ろうとしている商品は質がよく、商品の良さをダイレクトに伝えるだけでいいから、その点は楽だ。

しばらくして、大量の料理が運ばれてくる。

フライドポテト、ジャガバター、ジャーマンポテトなどのジャガイモ料理、トマトを使ったピザとパスタを用意した。

「いい匂いがするニャ。見たことない料理ですが、美味しそうニャ」

「シャム殿も、スタッフたちも食べてみてくれ。旨いぞ」

味は保証する。

ゴブリナなんて、シャムたちを差し置いて、一心不乱に食べている。

こちらは商品を売り込む立場なのに、商談相手より先に食べていることにツッコミは入れなかったけどね。

「う、旨いニャ!!」

スタッフも怖そうな護衛の虎獣人も同じ反応だった。

「どうだ?こちらの聖女殿のお蔭でできたジャガイモとトマトというものだ。それにチーズも旨いだろ?例年の3倍を作れるようになった。今まで世話になった分、好きなだけ持って行ってくれていい」

「それは有難いニャ。でもこの商品なら、借金をチャラにするだけでは、こっちが儲けすぎてしまうニャ。少し計算をするから、待ってほしいニャ」

食事の後、グリューンとシャムで話合い、商談がまとまったようだ。

「いい取引ができたニャ。こうなったらこの集落に支店を作ることにするニャ。おい、ソマリ!!君が支店長をするニャ」

「ええっ!?私がですかニャ?」

「早く店を持ちたいと言っていなかったかニャ?いい機会ニャ」

「私にできるでしょうか・・・」

「スタッフ2人と護衛にトラコを付けるニャ」

「だったら・・・」

ソマリと呼ばれた猫獣人の少女は、戸惑いながら承諾していた。

「ところで、そちらの方はどなたかニャ?人間に見えるし、先程「聖女」と・・・」

「実はな・・・」

グリューンが説明しようとしたところ、ゴブリナが遮った。

「こちらはミドリ・スズキ様です。なんと女神ネフィス様が遣わせた緑の聖女様なのです。聖女様が来られてから奇跡の連続で、多くの民を救い・・・」

ゴブリナの有難い話が始まってしまった。

シャムはというと、流石は商人といったところで、顔は引きつっているが笑顔は絶やさず、話の合間合間で絶妙な相槌を打っている。それがゴブリナをヒートアップさせる。

堪り兼ねたグリューンがそれとなくゴブリナを止める。

「そういえばゴブリナ、シャム殿に見てほしい商品があったのではないのか?」

「そうでした!!シャムさん、これを見てください。この女神像は・・・」

またゴブリナのマシンガントークが始まった。堪り兼ねたシャムが言う。

「もういいニャ。100個全部買うニャ。1体銀貨1枚でどうニャ?」

そ、そんなに?

銀貨1枚が日本円で1000円くらいだから、約10万円の売り上げだ。原価はゼロだし、ゴブリナが言うような有難いご利益なんてあるはずがないのに・・・

前世のことわざ「坊主丸儲け」っていうのは本当のようだ。

グリューンが小声で話掛けてきた。

「売れてしまったな。それもそこそこの値段で・・・変な自信を持たなければいいが・・・」

「そうですね。それとなく注意はしようと思いますが・・・」

★★★

5日間シャムたちは滞在した。

売り上げは必要経費を差し引いて残った分を均等に住民たちに分配した。その住民たちも町にできたソマリの店で遣ったり、神殿の賽銭箱に賽銭を入れてくれる。賽銭をもらった私たちも住民のために使うので、景気が格段によくなった。

ただ、ソマリの店に並べてある小型女神像は全く売れてなかった。神殿に来れば、 無料(ただ) で貰えるからね。

なので、小型女神像の大半はシャムが持って帰ることになった。

シャムが小声でスタッフに愚痴を言っていたのを聞いてしまう。

「こんな物を大量に買ってしまったのは不覚ニャ。商人として恥ずかしいニャ」

「でも会長、そうしなければ延々と訳の分からない話を聞かされてましたニャ。必要経費ですニャ」

「それにしても、銅貨1枚にすればよかったニャ・・・」

可哀想になった私は、自作したドライフルーツを手渡すことにした。

「ドライフルーツのおまけとして売るのはどうでしょうか?流石に悪いので、ドライフルーツは 無料(ただ) で差し上げます」

「なるほど・・・それなら他の場所で売れるかもしれないニャ。聖女様は本当に素晴らしい人ニャ」

流石に前世のカルト教団みたいなことはしたくないからね。

色々とあったが、何とか冬は越せそうだ。