軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72 戦闘開始

~勇者田中貴子視点~

開戦から1ヶ月が経った。

私はというと、ケンタウロス族とアラクネ族の混成部隊の隊長になっている。私にそんな能力があるはずもないんだけど、それでも隊長にさせられたのには事情がある。当初、私は一般隊員として編成される予定だったが、スレイとキラタンといつも一緒にいるので、そんな私に命令は出せないということになり、名ばかりの隊長になってしまった。

戦闘力もないし、軍事的な知識もない私にどうしろと?

当初はそう思ったが、それでも何とかなってしまっている。

まず、私たちは機動遊撃隊という部隊で、主に後方支援を行う部隊だったことも大きい。開戦当初は、物資を運んだり、怪我人を町に運んだりすることがメインだったからね。

最近では、人員が足りない戦場に機動力を生かして駆けつけ、戦う任務も増えた。でもスレイもキラタンも、部隊員のケンタウロスやアラクネたちも強いから、私は後方で待機するだけで何とかなってしまうのだった。

「隊長、D地点に至急部隊員を向かわせてください。防衛線を突破されそうです」

「分かりました!!総員!!D地点まで転進!!」

連絡員である大鷲族の部隊員の報告を受け、部隊に号令を掛ける。まあ、これで私の役目は8割方終わりだ。後はスレイに乗って移動するだけだし、戦闘は各自で考えてやってくれるからね。しばらく戦闘を隠れて見守り、落ち着いた頃に指示を出す。

「人員装備を確認!!異常がなければ帰還する!!」

「「「了解!!」」」

まあ、隊長らしいことは、ほとんどしてないけどね・・・

★★★

名ばかりの隊長だけど、軍議には参加しなければならない。

話し合われていることは専門的すぎて、当初は全く意味が分からなかったが、一生懸命に話を聞いてメモを取っている内に何となくだが、話の流れが分かるようになった。

グリューン王の説明によると、1万の第一陣を撃退して以降、帝国軍は更に1万の増援部隊を派遣してきたようだった。そのため、こちらの防衛兵力が足りず、防衛線を突破されそうになることも多いとのことだった。

「獣王国や近隣の集落から増援部隊が向かっている。しばらくは耐えてもらいたい」

最近、応援で戦闘に参加することが増えたのはそういった事情だったようだ。

「それにしてもタンタカ隊長以下の機動遊撃隊には感謝している。まさに獅子奮迅の活躍だ」

「当たり前だ。我にかかればこんなものだ」

「まあ、それほどでもあるけどね」

褒められてスレイとキラタンは嬉しそうだ。

「それで少し、気になる情報がある。帝国軍が総攻撃を掛けようとしているとの情報だ。我らの増援部隊が到着するまで最低5日は掛かる。それまで耐えきってほしい。負担は掛かるがよろしく頼む」

「「「はい!!」」」

これで軍議は終了となった。戦闘が増えるのかと思うと憂鬱になる。

軍議の後、食料などの支援物資を受け取る。ここではスレイとキラタンが補給隊の隊員に無理な要望を伝えていた。

「もっと人参を多く用意しろ」

「それと干し肉もね。私たちの活躍を考えれば、それくらいしても罰は当たらないよ」

「そ、そう言われましても・・・もう決まっていますし、これでも十分な量かと・・・」

困っているようなので、私が間に入る。

「スレイもキラタンも我慢しなさい。そうしないとウリちゃんに言いつけるわよ」

「そ、それは・・・」

「絶対やめて!!」

最近はこれで何とかなっている。神獣には神獣の序列があるみたいで、スレイとキラタンは末席みたいだから、効果は絶大だ。

その後部隊に戻り、私は隊員たちに軍議の内容を伝達した。

★★★

グリューン王の言っていた通り、戦闘は激しくなった。日に何度も転進することになる。

私たちの部隊はほぼ無傷だったが、それでも疲労は溜まっていく。

「もっと人参を貰わねばやってられん」

「そうだね。甘い物が欲しいな」

スレイとキラタンも愚痴が多くなってきた。

定例の軍議でも負傷者が多数出ているとの報告を受けた。

「残念なことに獣王国にも再度侵攻があり、こちらに来る応援部隊が三分の一になった」

オーダスト帝国はかなりの大国で、まだまだ兵力に余裕があるようで、このまま戦争が続けばこちらが不利になるという。

「ただ、悪い話ばかりではない。というのも、このような状況になっても勇者はまだ現れない。つまり、勇者を戦線に投入できない何らかの事情があると考えられる。そこで、我はある作戦を実行することを提案する。それは・・・」

それって、かなり危険な作戦じゃないのか?

それに私たちの部隊がかなり重要な任務を与えられてるし・・・

「タンタカ隊長。すまないが、よろし頼む。貴殿らが頼りだ。人参やフルーツを多めに支給しよう」

「うむ。我らに任せればよい」

「フルーツをくれるならやるよ」

スレイとキラタンは呑気なものだった。