軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23 移住者が増えました 3

まず私がやったのは、情報収集だった。

研修先や住民の評判を聞き、一緒に移住して来た獣人たちからも話を聞いた。すると、ある事実が判明した。

元々、狐人族は他の獣人たちからの評判がよくなかった。オークやリザードマンたちが獣王国を去ったことで、オークやリザードマンが担っていた仕事が滞り、獣王国は混乱したという。そして、狐人族が彼らを追い出したという噂が広まり、狐人族を毛嫌いする獣人も増えたという。移住者の中にも露骨に嫌っている者も多かった。

そして、その噂が住民たちにも広がり、住民たちも狐人族を色眼鏡で見ていたという。

ただ、フックスたちにも悪い点はあった。

フックスの父親は獣王国の宰相で、フックス自身も父親の仕事を手伝っていた経緯があり、能力は高いがプライドも高い。それで、研修先で指導者の間違いを指摘したり、改善策を提案したりしていたそうだ。

ある程度の社会人経験があれば、理解できると思うが、いきなり研修生がそんなことをすれば、指導しているほうが腹を立てても仕方がない。

それで、悪い噂と相まって、研修先のソマリの商店をクビになったりしたようだ。

とりあえず、グリューンたちと相談だね。

それに過去のわだかまりが原因のようだから、オークナさんたちにも話をしないとね。

★★★

グリューンをフックスたちと訪ねた。

事前に話をしていたので、オークナさんだけでなく、リザードマンのザードやフロッグ族のケロッグにも来てもらっていた。

私はフックスに話を振る。

「フックス、獣王国の事情を話してあげて。そして、なぜモフモフ至上主義なんていう制度を作ったかを説明しなさい」

「はい・・・実は・・・」

獣王国は国力が、かなり落ちているようだった。

度重なる人間の国との領土争いもそうだが、農業生産が激減したことも大きい。フックスの父である宰相ルナールは、何とか国を立て直そうと奮闘していたそうだ。まず国内を安定させるため、長年争ってきた虎人族と獅子族の争いをやめさせるため、新たな勢力を作ることにしたようだ。それが餓狼族を中心としたグループで、天下三分の計ではないが、三竦みの状態にすることにより、迂闊に相手に手を出せない状況を作ることにしたようだった。

ただ、餓狼族だけでは戦力的に対抗できないので、餓狼族の陣営にリザードマンやオークを引き入れることにした。

そこでモフモフ至上主義という制度を導入、怒ったリザードマンやオークに交渉を持ち掛け、モフモフ至上主義撤廃のために餓狼族との共闘を促すという策を講じた。しかし、結果はリザードマンもオークも獣王国を出て行ってしまった。それにフロッグ族までも。

宰相のルナールはこの責任を取ることにし、自身の失策を公表したというわけだ。

オークナさんが怒鳴る。

「そんなまどろっこしいことなんてせずに、素直に『協力してくれ』って言えばよかったじゃないか。私たちだって、協力したと思う」

「同感だな。我らも協力しただろう」

「そう言われましても、餓狼族もプライドが高く、素直に協力を求めるとは思えませんでした。それならば、『モフモフ至上主義の撤廃のために俺たちが協力してやる』という形にするほうがいいと、父上も考えたのです」

策士、策に溺れるということらしい。

オークナさんが言う。

「もう過去のことだし、今はここや周辺の集落で皆楽しくやっているから、もうどうでもいいけどね」

「我もだ。獣王国に居た時よりも、良い暮らしができている」

グリューンが言う。

「事情は分かった。その後、餓狼族が失脚し、再び虎人族と獅子族の争いが激化したということだな?」

「その通りです」

「それでこれからのことだが、すぐに住民たちの誤解を解くことは困難だ。よって、貴殿らは我の元で働いてもらうことにしよう。最近、書類仕事が増えてな。碌に訓練もできんし、我の仕事を手伝ってくれ」

「もちろんです」

グリューンのお蔭で、何とか狐人族の仕事先を確保することができた。

★★★

仕事先は確保できたが、フックスの少し上から目線の態度が気になったので、私たちも彼を教育することにした。

フックスは優秀だが、獣王国では、すぐに父親の後継者としてある程度重要な仕事を任せられた経緯があり、下積みを経験していない。なので、下積みを経験させることにした。まあ、若いからね。

教育係はゴブリナだ。今日も厳しく指導している。

「もっと心を込めて、磨きなさい」

「心を込めたところで、何になるんだよ?奇麗になればいいんだろ?だったら、効率を重視して、やればいいんだよ。ただの雑用なんだから」

「それは違います。この世界に雑用という仕事はありません。雑にするから雑用なのです」

「神官っていうのは、口だけは達者だな・・・」

文句を言いながらも、やることはやっている。まあ、きちんとした礼儀が身に付くのは、まだ先だろうけどね。

そんな様子を私とフックスのメイド二人は、微笑ましく見ていた。

「ここに来て、本当によかったと思います。獣王国ではフックス様に指導できる者はいませんからね」

「そうですよ。私たちが注意したとしても、聞いてはくれません。10倍言い返されるのがオチですよ」

「貴方たちも大変ね・・・」

まあ、当面の問題は解決したと思っておこう。