軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13 布教活動

私たちは最近、付近の集落を周っている。

ゴブゾウたちの集落の危機を救ったことで、周辺の集落からも私たちに助けを求めてくるようになり、その求めに応じている。グリューンは、できるなら助けたあげたいという考えだし、私もその考えには賛同している。また、ゴブリン自体が助け合いの精神を大切にしていることと、私たちの集落に余裕があるのも大きい。

やることは大体同じだ。各集落に赴いて、その集落で栽培可能な作物を植えていき、住民たちに栽培方法を指導する。

不思議なことに集落ごとで、栽培可能な作物が違っていた。トウモロコシ、人参、大根、大豆、カボチャ、ホウレンソウなど、多岐に渡る。赤ドラと白ドラは前世が人参と大根だから、人参と大根を植えた時はいつも以上にテンションが高かったけどね。まあ、私も食卓を彩る食材が増えて、嬉しいかぎりだ。

復興が一段落すると、ゴブリナが有難い話して、小型女神像を販売する。余裕がある集落はその後、神殿を建設する流れになる。

ここまでは特に問題はない。しかし、ここからが少し憂鬱になる。

その日もゴブリナが住民を前に声を張り上げる。

「さあ、皆さん!!今回の奇跡を起こしたメンバーをご紹介します。まずは精霊様!!」

とてとてと、赤ドラと白ドラが住民たちの前に出て、紹介を受ける。

「精霊様は愛らしい」

「可愛いわね」

「触ってもいいですか?」

赤ドラと白ドラは大人気だ。

続いて、グレートボアのウリが紹介される。ゴブリナが勝手に神獣にしてしまっている。

「神獣様!!」

「バナナですよ。食べてください」

「こっちもどうぞ」

「キュー!!」

ウリは大喜びだ。

よく分かってなさそうだけど、住民が食べ物をくれるからこのイベントが好きなようだ。

「そして、そして、そして!!緑の聖女様であらせられる、ミドリ・スズキ様です!!」

どこの集落に行っても、最初はあまり反応がよくない。

三十路手前の私に赤ドラや白ドラ、ウリたちのような可愛さがないのは自覚している。

「人間だ・・・」

「ゴブリナちゃんたちは騙されているんじゃないのか?」

「だが、聡明なグリューン様も同行されているし・・・」

それに私がゴブリンではないことも、関係している。

「皆さん!!聖女様の髪に注目してください。私たちと同じ緑です!!」

私はこの世界に来て、どういう訳か髪が緑色になった。

ゴブリナはこれを最大限利用することにしたのだった。ゴブリナは、こういったプレゼン能力が、かなり高い。

「緑の髪の人間なんて、そうはいないぞ」

「間違いなく、女神ネフィス様の御使い様だ」

「そうだな。祈らなくては・・・」

これだけで、私を信じるなんて、ゴブリンたちが心配になってくる。

その後、私はスピーチをしなければならないのだ。ただ、スピーチをするだけならいいのだが、ゴブリナが無駄にハードルを上げるので辛い。仕方なく、実の無いそれっぽい話をする。

「・・・皆で仲良く、力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずです!!」

ブラック企業お得意の精神論をそれっぽく話す。かなりウケがいい。

涙を流している者もいる。

多少、恥ずかしい思いはするものの、多くのゴブリンたちを助けられているので、よかったと思うことにしている。

★★★

そんなある日、トカゲっぽいリザードマンとカエルっぽいフロッグ族の集団が訪ねてきた。

グリューンと共に応対する。グリューンがリザードマンの代表者に声を掛ける。

「久しぶりだな、ザード。うちの集落は最近、聖女殿のお蔭で少し余裕ができたから、滞っていた魚の代金も払えるぞ。今年もお前たちの魚を楽しみにしていたんだ。これは我だけでなく、集落の者全員がな。今年は少し多めに買おうと思う」

「そ、そうか・・・だが、今年は貴殿らに魚を持って来られそうにない。漁獲量が激減し、俺たちが食べる分も確保できない状態なんだ。それで・・・」

「やはりか・・・最近、この付近はどこも異常気象で深刻な食糧不足に陥っているからな。だが、今は聖女殿がいる。困ったときはお互い様だ。何とかしよう」

「すまんな・・・」

この流れだと、リザードマンの集落に行くのだろう。

まあ、断りはしないけどね。

3日後、私たちはリザードマンの集落に向かった。

今回はオークの御一家も同行する。聞いたところ、元々リザードマンもフロッグ族もオークと共に獣人の国に住んでいたそうだ。それで繋がりがあるし、リザードマンの集落にも別のオークの家族が住んでいるから、どうしても彼らの力になりたいとのことだった。

奥さんのオークナさんが言う。

「リザードマンたちも、私たちも獣王国を追い出されたからね。その時から力を合わせてやって来たんだ。困ってたら助けたい。当たり前じゃないか。頼むよ、聖女ちゃん」

「は、はい・・・」

責任重大だ。

今のところ、他の集落ではスキルで出した作物が上手く育っているが、リザードマンの集落に適した作物が育てられるかは、行ってみないと分からない。

上手く育てられなかったらどうしようと不安に思いながら集落を目指した。

2日程で集落に到着した。

リザードマンの集落は湿地帯だった。人口の7割がリザードマンとフロッグ族で、2割がゴブリン、残りの1割が他の種族といった構成だった。規模としては、私たちの集落より少し小さいが、この付近の集落では大きいほうだ。

早速、適した作物を捜すため、土壌を調査する。

(米が作れるね)

(米が最適だ)

「米!!」

思わず叫んでしまった。

私も日本人だ。米と聞いてテンションが上がらないわけがない。転生してから食べてなかったからね。

「聖女様!!「米」とは、新たなお祈りの言葉でしょうか?早速、皆に広めなければ・・・」

「祈りの言葉じゃなくて・・・」

ゴブリナの誤解を解くのに苦労したことは、言うまでもない。