軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10 グレートボア

会議が始まった。

グレートボアは、イノシシ型の大きな魔物だ。

かなり力が強く、まともに突進攻撃を受けたら、ゴブリンなんて一溜りもないらしい。

グリューンがゴブゾウに問う。

「グレートボアが集団で集落を襲うなんて聞いたことがないぞ」

「グリューン、俺たちも初めての経験だ。これは推測だが、グレートボアの食い物が少なくなったのが、原因かもしれん。明らかにドングリや木の実の量が例年よりも減っていたからな」

「となると・・・ゴブゾウの集落を襲った後、こちらに来るかもしれんな」

ダークエルフのダークが言う。

「我らが偵察に出よう。攻撃魔法が使え、遠距離攻撃ができるのは我らしかいないからな」

「頼めるか?」

「ああ、しかし武器がなあ・・・碌な弓がない」

これにはダークドワーフのフリンが食って掛かる。

「それは私たちに対する当てつけッスか?こっちも材料がなくて、カツカツなんスよ」

「配慮が足りなかったな、すまない。そういった意図はない」

「こっちもいい弓を作ってあげたいんスけど・・・」

グリューンが二人の会話に入る。

「ダークエルフの弓だけでなく、ゴブリン用の武器も欲しいところだ。俺以外で戦えるゴブリンは数えるほどだしな」

「そうッスねえ・・・なかなかいいアイデアが浮かばないッス」

そん中、自信満々に話し始める者がいた。ゴブリナだ。

「そんなことはすぐに解決しますよ。女神ネフィス様に祈りを捧げればね」

「ゴブリナは何でもかんでもネフィス様に頼りすぎッス。確かに食料事情は改善したッスけど・・・」

「そういうことです。ですよね?聖女様」

ここで私に振るのか・・・

前世が普通のOLだった私に戦闘の知識なんて皆無だ。歴史はそこそこ好きだったので、有名な合戦の戦術なんかを多少知っている程度でしかない。

それなのに、ゴブリナに感化された者たちがキラキラとした目で私を見てくる。

どうしようもなくなった私はその場をやり過ごそうとして、曖昧な返事をしてしまう。

「とりあえず、ダークさんたちの弓、ゴブリンが使えるような武器を作ればいいんですよね?やれるだけやってみますが、期待しないようにしてくださいね」

「流石は聖女様です。さあ皆さん、祈りを捧げましょう」

私に向かって、みんなが柏手をパン、パンと2回打って拝んでくる。

絶対に変な方向に向かっている気がする。

★★★

私は「創造の木」の前に立ち、まずは弓をイメージした。

ただの弓ではない。コンパウンドボウだ。普通の弓と違い弓の両端に滑車が付いていて、効率よく弓を引くことができる。そして最大限に引き絞って保持した時に必要な力も少なくて済むので、精度も上がる。ただ、細かい構造なんかはよく分からない。

(レベルが上がったから、細かいイメージが無くても大丈夫だよ)

(創造の木が調整してくれるよ)

赤ドラと白ドラのアドバイスに従い、とりあえず魔力を込めてみる。

1時間くらいでコンパウンドボウが完成した。とりあえず、フリンとダークに見せてみた。

「変わった弓ッスね」

「うむ。見たことがないな」

「えっと・・・この滑車がポイントで、少ない力で・・・」

私はコンパウンドボウの拙い説明をした。

「試作品だから、とりあえず試し撃ちをしてください」

ダークが試し撃ちを始めた。

全く的を外さなかった。見事なものだ。

「これは凄いな。射程も威力も格段に上がった気がする。この弓があればハイエルフも凌駕することができるな。ただ、若干の調整は必要だと思うがな」

「こんな発想は無かったッス・・・ただ、類似品ならすぐに作れそうッス」

「フリン、私は細かい調整ができないから、改良はよろしくね」

私は再び、「創造の木」の前に戻って、今度はゴブリン用の武器の開発を行う。

ゴブリンは総じて、力が強くない。基本的に戦闘に向かない種族だ。となると・・・

私が思いついた武器は二つ。一つはクロスボウだ。

これなら力が無くても何とかなる。ただ連射はできないけどね。

そしてもう一つは長槍だ。これは強力な重装騎兵中心のイングランド軍を農民の寄せ集めの歩兵中心のスコットランド軍が討ち破ったバノックバーンの戦いをヒントに考えたものだ。

スコットランド軍の唯一と言っていい戦術が長槍を使った槍衾作戦だった。ゴブリンは集団行動が得意だから、クロスボウとセットで戦えば、それなりに戦力になるはずだ。

長槍とクロスボウを持って、グリューンを訪ねる。

クロスボウは大絶賛されたが、長槍については怪訝な顔をされた。

「そんな戦い方があるのか・・・魔族の常識では考えられん」

魔族は基本的に戦闘力が高い種族が多い。グリューンもホブゴブリンなので、戦闘力は高いほうだ。

色々と聞いたところ、魔族は集団で戦うことに慣れていないという。オーク一家の訓練を見せてもらったが、近くにいる味方が巻き添えになりそうな戦い方をしていた。強いのは強いんだけどね。

とりあえず、槍衾を作って移動してもらった。

まあ、呼吸を合わせて移動するだけだが、ゴブリンたちは上手くやれている。

「これなら、グレートボアといえども、迂闊に近寄れんな。その間に遠距離攻撃と・・・」

グリューンは色々と考えているようだった。

ゴブリナはというと、槍衾の訓練をしているゴブリンたちを鼓舞していた。

「恐れてはなりません。私たちにはネフィス様の加護があるのです!!さあ、前へ!!」

グリューンが呟く。

「指揮官としては、俺よりもゴブリナのほうが適任かもしれんな」

「でも、ちょっと怖い気がしますね」

「うむ・・・」

急遽だが、何とか戦えそうだ。