軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「さてと、どうするか」

レカンは、これからの行動について考えた。

ニケとエダがこの町に帰り着く前に、状況を告げて相談する必要がある。

二人が西門をくぐる前に合流しなくてはならない。

レカンの探知能力をもってすれば、この町のなかからでもニケを察知することはできる。なにしろ、けた外れに大きくて特徴的な魔力の持ち主なのだ。

ただし、町のなかには邪魔な気配も多く、うっかりみのがす危険もないとはいえない。

「ふむ」

いろいろと考えたすえ、結局西門から出た。

野営には慣れている。それに街中ではできないことをやりたかった。

左手での〈 炎槍(バンドルー) 〉の練習である。

西門から五千歩ほど離れた場所で街道をはずれ、丘に囲まれた地形をみつけて野営の準備をした。そしてひたすら、〈炎槍〉の練習をした。

存外むずかしい。

もちろん発動自体は問題ないし、威力もじゅうぶんにある。

だが正確さが足りないし、発動速度ときてはお話にならない。

繰り返し繰り返し撃って、魔力が尽きてきたところで昼食にした。

それから少し寝た。

起きると魔力が回復していた。

「ふうむ。最初から〈炎槍〉の練習をしても、操作が荒くなるだけかもしれん」

そこで、左手を使った〈 灯光(パーム) 〉の練習に切り替えた。

もうレカンは、呪文を唱えるだけで好きな場所に〈灯光〉を発現できるのだが、あえて指先に光をともした。

魔力が体のなかから抽出され、ぐるりと回って左腕を通り、指先に集まっていくのが、はっきりとわかる。

何のことはない。魔力を回すところまでは問題がないのだ。左腕を通して指先に集めようとする段階で、操作がぎこちなくなる。これがスムーズに流れるようになればいいのだ。

いろいろ試してみて、腕や指自体を動かして狙いをつけようとすると、コントロールがむずかしいことに気づいた。

そこで、左腕をだらんと垂らし、指を握り込んで人差し指だけを立てて、その指先に光を集めるよう、練習した。

最初はそれでも制御がうまくいかなかったが、だんだんとタイミングや光量を思い通りに操れるようになっていった。

そうしているうちにすっかり暗くなったので、たき火をして肉を焼き、酒を飲んで夕食を楽しんだ。

今日のうちに帰ってくるとは、最初から思っていない。今夜ニケとエダは、ゴルブルとヴォーカのあいだで野営するはずだ。もしかすると、ゴルブルでもう一泊したかもしれない。

翌朝目覚めてから、レカンは左手による〈灯光〉の練習を、思う存分繰り返した。今いる場所は街道からはずれているし、四方を丘に囲まれていて、旅人の目にはつかない。そもそも、ゴルブルとヴォーカのあいだを行き来する旅人はあまり多くない。人目を気にする必要はないのだ。

昼食のあとは、左手で〈 火矢(ベイアーツ) 〉の練習をした。これは、腕をだらんと下げたままではうまくいかなかった。だらんと垂らした左手の手のひらから〈火矢〉を撃つと、発動が異様に遅いし、方向の制御もうまくいかない。自分でも感心するほど、でたらめな方向に飛んだ。

次に、だらんと下げた左手の指から撃とうとしたが、これもだめだった。魔力の通りが、ひどく悪い。

いろいろ試してみた結果、結局、左手を持ち上げ、人差し指だけを突き出して撃つのが、やはり最も発動が速く、制御もうまくいくことがわかった。

右手を曲げて、その拳の上に左腕を乗せ、肩から人差し指がまっすぐに伸びるようにして撃つと、断然速く、そして正確に撃てる。シーラの魔力回復薬を飲んで練習を続けた。シーラから五つの魔力回復薬をもらったが、これが最後の一個である。

たき火をたいて夕食を取っていると、魔獣が三匹近づいてきた。〈 緑狼(オージェ) 〉だ。

レカンは串に刺さった肉をほおばり、串を投げ捨てると、もぐもぐと咀嚼しながら、右手を剣の柄に添えた。

三匹の緑狼が気配を殺して忍び寄る。レカンは、ふと、あることを思いついた。

魔獣三匹が飛びかかってきた。

「〈火矢〉」

ぼそりとレカンがつぶやくと、自然に折り曲げた左手の、人差し指と中指と薬指から〈火矢〉が飛び出して、三匹の緑狼の体をそれぞれ貫いた。二匹は即死したが、残る一匹は足に被弾しながらも、レカンの喉元に食いつこうとしてきた。

レカンはひらりと身をかわし、剣で狼の喉を切り裂いた。

以前の剣であれば、委細構わず頭をたたき砕いただろうが、この剣には自動修復の機能がない。不必要な負担を剣にかけないようにしたのだ。

「ふむ」

これは使える、とレカンは思った。

同時に複数の〈火矢〉を使ったことはない。だが使えるような気がして、ふと使ってみたのだ。すると、できた。

基本の形で発動を繰り返し練習したおかげで、左手での魔力の通りがかなりスムーズになった。だから、突然の思いつきを実現できた。

「待てよ」

たしかシーラから、一度に何百本もの〈火矢〉を使った魔法使いがいた、という話を聞いたような気がする。だが、一人の人間に、手の指は十本しかない。

レカンは、新しい肉串を地面から引き抜いて、じゅうじゅうと脂が焼けている、その焦げたところをかじり取り、うまみを口のなかで味わいながら、左手の人差し指を立てた。

「〈火矢〉」

人差し指の先から、五本の〈火矢〉が飛び出して、夜の空に消えていった。

「おお」

こんなことができるのだ。ということは。

レカンは、左手を前方に突き出し、五本の指を広げた。そして五本の指のそれぞれから五つの〈火矢〉が飛び出していく光景をイメージした。

「〈火矢〉」

二十五本の〈火矢〉が飛び出した。たかが〈火矢〉ではあるが、これだけの数が同時に発動したのだから、〈炎槍〉をも上回るまぶしさだ。

〈火矢〉は、たき火の上を通過して、正面の丘に撃ち込まれ、丘を大きくえぐり取った。

これは使える、とレカンは思った。

数日前の戦いで、背後からレカンを襲ったギドーは、〈炎槍〉をかわしてのけた。あれは目でみてかわせるものではない。しかし、かわした。恐ろしく勘がよく、そして素早い男だった。

ああいう敵とは、今後も出会うだろう。それは人間かもしれないし、魔獣かもしれない。

二十五本といわず、百本の〈火矢〉を同時に撃ち込む広範囲攻撃ができれば、ああいう敵に、非常に効果的だ。

レカンは串の肉をほおばって串を捨て、もぐもぐとかみしめた。そして、ごくんと飲み込んだ。肉の塊が喉を通り腹に落ちてゆく充足感をじっくり味わう。

立ち上がった。

両手を高々と天に差し伸べ、指を開いて、放つべき魔法をしっかりとイメージした。

「〈火矢〉!」

地上に太陽が現出したかと思うほどの発光が起き、百とはいわないまでも、それに近い数の〈火矢〉が虚空に消えていった。

(できた!)

喜びがわいた。

そして、頭がくらっとした。

(あ、しまった)

そのまま意識を失って、レカンは倒れた。