軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日出発するつもりだったのだが、エダの婚礼衣装を担当しているお針子から寸法の取り直しをしたいという強い要望があった。

丸一日かかるらしい。

どうして服の寸法を調整するだけのために丸一日も必要なのかさっぱりわからないが、本当なら七日間は欲しいのですがと、ものすごい目つきで言われ、レカンは反論を口の奥に飲み込んだ。逆らってはいけない気がした。

ボウドは学者たちに預け、この日は一日ノーマと話して過ごした。

ノーマがそばにいるとやはり落ち着くな、とレカンは思った。

王都にいると客が多くてわずらわしいし、エダもレカンもいないと、ワズロフ家はよそよそしく感じて居心地が悪いので、早くヴォーカに帰りたいとノーマは言った。

四の月の三十三日、レカンとエダはヴォーカを目指して出発した。

マシャジャインを出てすぐに、ユフ迷宮騎士団と遭遇した。

ずいぶん移動が遅いなとレカンは思ったが、レカンたちの移動が速すぎるのである。

それにユフ迷宮騎士団にとって、ユフの外は珍しく、ましてや王都より北など、まったく経験のない地だ。だから、デロスとダリラに案内させて、見物しながら移動してきたのである。しかも、迷宮のなかではないのだからと、野営はほとんどせずに、宿に泊まりながらの移動だ。時間がかかって当然なのだ。デロスとダリラは、バンタロイを出た所で、たっぷりと報酬をもらって別れたという。

デュオ・バーンが、自分も結婚式に招待してもらえるんだろうなと聞いてきた。レカンの答えは簡潔だった。

「さあ、知らん」

「知らんということはないだろう」

「本当に知らん。あ、そうだ。ちょうどいい。これをことづかってくれ」

「これは……白金貨! しかも十枚もか」

「ユフのライコレス神に献納する。世話になったと伝えてくれ。じゃあな」

「お、おい。おいっ、レカァァン!」

走ってユフ迷宮騎士団から離れたが、そのあとの移動は急がなかった。

途中で少し寄り道をして、ニチア草をたっぷり採取した。今年の一月にも採取して大量の魔力回復薬を作ったのだが、今年はニチア草のできがいい。みのがす手はなかった。

ヴォーカに着いたのは、五の月の二日だった。

二人はゴンクール家の裏門から入り、離れに向かった。

「あっ」

「どうしたの、レカン?」

「しまった。ジェリコとユリーカへの土産を忘れた」

「大丈夫だよ。あたいが用意してるから」

「そ、そうか」

離れに入ったレカンとエダを、ジェリコとユリーカが迎えてくれた。

エダはジェリコに抱きついて再会を喜んだ。

(どこかで前にもこんな光景をみたな)

(ああ、そうか。あのときだ)

(エダがはじめて魔法を使えるようになったときだ)

(あのときもジェリコに抱きついて泣いてたな)

エダは、ジェリコとユリーカに赤くて丸い果物を渡した。

ジェリコは、うほうほうほほと、エダに丁寧に礼を言ったあと、物問いたげな視線をレカンに向けた。

レカンは目をそらした。

ユリーカがジェリコの肩をそっと叩いて首を振った。

そのあとすぐに、カンネルがやってきた。

夕食を当主プラド・ゴンクールとともに取ってほしいといわれたので、あまり乗り気ではなかったが承諾した。

プラドは、結婚式のことについてあれこれ聞いてきた。

ノーマはゴンクール家の家督後継者なのであり、プラドはじめゴンクール家の人々は、花嫁の親族として式に出る。準備は全部しておくので何の心配もいらないとワズロフ家から連絡はあったが、段取りがわからないと、やはり不安だ。

プラドの質問に、レカンは何一つ答えることができなかった。

領主のクリムス・ウルバンが呼んでいるというので、翌日領主館に行った。しばらくみないうちにいっそう立派になっている。

町そのものも発展し、人も多くなっている。

クリムスの用件も結婚式の段取りについてだった。レカンは知らぬ存ぜぬで通した。

クリムスは、右手でこめかみを押さえながらため息をついた。

「そういえばレカン。この町が獣人の軍に襲われたことは知っているかね」

「なにっ。いつのことだ」

「四の月の二十九日のことだ。いや、獣人国の軍が攻め込んできているということは聞き知ってはいたのだが、まさかこの町に攻めてくるとは思わなかった」

「それで、どうなったんだ」

「警備隊の者たちが何人か重傷を負った。また、たまたま城門近くにいた商人が何人かけがをした。ところが巨大な猿のような怪物が二頭現れて、敵を蹴散らし、追い返してしまったのだ」

「二頭の……巨大な……猿」

「しかも、どこからともなく青い光の球が降り注いで、重傷を負った兵士の傷が治ってしまったそうだ。私は現場をみていないのだがね」

(シーラだな)

(シーラがジェリコとユリーカに命じて敵を追い払ったんだ)

(姿を消したまま〈浄化〉も使ったようだな)

(陰から戦闘にも加わったかもしれん)

(それにしても、獣人の軍というのはどこから来たんだ?)

(率いてきたのはあれで全部だとボウドは言っていたから)

(〈牙〉か〈鞭〉か、あるいはその両方が引き返してきたんだろうな)

(どうしてコグルスでなくヴォーカを襲ったのかはわからんが)

レカンがこういう事項では何の役にも立たないことがはっきりしたので、クリムスは早々にレカンを解放した。

この日、レカンはニチア草を乾燥させる段取りを整え、翌日、エダとともに東に旅立った。

パーツ村の近くを通り、山を越えて進んだ。かつてチェイニーの護衛をして通った道だ。あそこであんなことがあった、ここでこんなことがあったと、エダとの会話が弾んだ。

二日でポドの町に着いた。

着いてから気付いたが、ここはチェイニーの護衛を引き受けた町だ。つまりエダと出会った町だ。

エダとレカンはポドの町から北東に進んだ。

エダが首もとに黄色いマフラーを巻いている。

「そのマフラー、久しぶりにみるな」

最初に出会ったとき、エダはこのマフラーをしていた。

「うん。このマフラーはね、ナミちゃんにもらったんだ」

「そうか」

翌日、ボイドの町に着いた。

そこからさらに北東に進んだ。

道らしい道はない。

やがて村についた。山のなかにひっそりとたたずむ、隠れ家のような村だ。

ここがエダのふるさとであるチッコリーの村なのだ。

村には入らず、山のなかを迂回した。

そして墓所に着いた。

といっても、知っていなければ、そこが墓所だとは気付かないだろう。

草むした山の一角に、ぽつんと日当たりのいい草地があり、そこに小さな小さな墓があった。