軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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斜め上から振り下ろされた攻撃である。

左肩に鈍い衝撃を感じた。

胸に強い圧迫感を感じた。

右腰で、身体の一部が壊れたような感覚を覚えた。

ボウドは振り抜いたバトルハンマーをくるりと旋回させ、今度は右横奧側から攻撃を加えようとしている。

レカンは左手を持ち上げて〈炎槍〉を放とうとした。

だが左手が言うことを聞かない。

〈突風〉で背後に逃げようとした。

だが声が出ない。

バトルハンマーが迫る。

レカンは聖硬銀の剣をふるった。

狙いは迫り来るバトルハンマーの巨大な鎚頭を支える柄の部分である。

ボウドがくるりと鎚頭を回してみせた。この戦いで二度目の小技だ。

聖硬銀の剣が、バトルハンマーの鎚頭と激突した。

甲高い音を立てて、聖硬銀の剣が折り砕かれる。

バトルハンマーがレカンの腹を打ち据えた。

後ろに吹き飛びながら、レカンは念じた。

(治れ! 治れ!)

(治れぇぇぇぇぇ!!)

〈自己治癒〉が発動し、声が出るようになった。

背中から草原に墜落した。

大炎竜の鎧のおかげで、墜落のダメージは大きくない。

「〈回復〉!」

右手を左肩に当てて〈回復〉を発動すると、くるりと左に身をひねって跳ね起きた。

間一髪でバトルハンマーが大地を打ち据える。

レカンは走った。

だが、先ほど受けた打撃は足腰にも大きな損傷を負わせていたようで、思うように走れない。

ボウドが後ろから走って追いかけてくる。

このときレカンは〈立体知覚〉に意識を集中するような余裕はなかったが、ボウドが追っていることは、そんな技能に頼らなくてもありありとわかった。

前方には観戦している獣人たちがいる。

ずいぶん人数が増えている。

すぐ後ろにボウドがいる。

もつれる足をなんとか制御しながら、必死で走った。

獣人たちが驚いた顔で避難し始める。

(邪魔だ!)

(どけ!)

レカンが獣人たちの隙間に走り込もうとしたら、その真ん前に飛び出した獣人がいた。

次の瞬間、木の根に足を取られてレカンが前のめりに転倒した。

その頭上をバトルハンマーが轟音を上げて通り過ぎ、不運な獣人に命中して吹き飛ばした。

レカンは右に回転しつつ起き上がり、そのまま観戦者たちのなかに逃げた。

(観戦しているやつらは木や石と同じだ)

(つまり障害物だ)

(障害物のなかを縫って走り抜ければ)

(距離が稼げる)

なぜか観戦者がひどく多い。

人間も多い。

少し不思議に思ったが、今はそれどころではない。

〈立体知覚〉を駆使して、レカンは障害物のあいだを駆け抜けた。

しばらく逃げてから後ろに意識を向けた。

(少しは距離が稼げたか?)

稼げていなかった。

ボウドはレカンのすぐ後ろにいた。

邪魔な獣人や人間を体当たりで吹き飛ばし、引っつかんで放り投げ、突き倒して乗り越え、まっすぐレカン目指して突進してくる。

レカンはなおも逃げようとした。

目の前にヴィスカー・コーエンがいた。

目をみひらいている。

素早くヴィスカーの後ろに回った。

さらに奥に進もうとしたが、人が密集していて、〈立体知覚〉でも走り抜けられる道がみつからない。

目の前に、デュオ・バーンがいた。ユフ迷宮騎士団長だ。どうしてこんなところにと思ったが、今はそんな場合ではない。

レカンは振り返った。

ボウドが左手で騎士を突き飛ばしつつ、ヴィスカーの脇にバトルハンマーの柄頭を引っかけ、右手一本でぶうんと振り回して、ヴィスカーを遠くに放り投げた。

レカンはボウドに飛びかかり、バトルハンマーを持つボウドの右肩を左手で押さえて、奇怪な兜の顔面部分を右手でつかんだ。

「〈火矢〉!」

四本の〈火矢〉が兜の内側で生成され、ボウドの両の目に突き刺さった。

レカンは〈火矢〉を自分の体から少し離れた位置で発現できる。そしてボウドの兜には魔力が通るだけの隙間があったようだ。

レカンは素早く後ろに跳びすさる。

ボウドがうめき声を上げながら、左手を兜の顔の部分に当てる。

レカンは〈収納〉から赤大ポーションを五個ほど一つかみにして取り出すと、首もとで握りつぶした。

赤ポーションが鎧の下に流れ込んでゆく。

さらに上を向いて大口を開け、赤ポーションを絞り、口に落ちてきたポーションをごくごくと飲み込む。

「〈回復〉! 〈回復〉! 〈回復〉!」

自分に〈回復〉をかける。

目の前ではボウドも〈収納〉から赤大ポーションをいくつかつかみ出し、絞って顔にかけていた。

「〈風よ〉! 〈風よ〉!」

レカンは人のいないほうに走った。つまり、もともと二人の戦場だった場所の中央に向かって移動した。

たちまち五十歩ほど走った。

魔力が体に流れ込んできた。

(〈巫女の守護石〉か?)

恩寵無効の範囲外に出たということなのだろう。

ということは、ボウドの近くではやはり恩寵無効は働いているということだ。

ちょうどそこに白炎狼の外套が落ちていたので、拾って着た。

ボウドがバトルハンマーを肩にかつぎ、悠然と歩いてくる。

レカンは〈収納〉から〈アゴストの剣〉を取り出した。

そしてそれを左手に持ち換え、右手で〈収納〉から〈ハルフォスの杖〉を取り出し、〈驟火〉の準備詠唱を始めた。

ボウドが歩み寄ってくる。

準備詠唱が続く。

ボウドが歩み寄ってくる。

半分ほどの距離になったとき、準備詠唱が終了した。

「〈驟火〉!」

本来は広範囲攻撃である〈驟火〉が、ボウドとその周辺に降り注いだ。