軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンは驚きの目で、再会したジンガーをみつめたのだが、ジンガーのほうでも、レカンを間近でみて、驚きを顔に浮かべた。

「左目が。治ったのですな。おめでとうございます。それにしても、なんとりりしく力強いお姿か。失礼ですが、その鎧はいったい」

「ああ。ユフで手に入れた大炎竜の革だ。ユフの腕利きの職人が仕立ててくれた」

「大炎竜! ユフ迷宮で倒されたのですか?」

「ああ。エダと二人でな」

「お二人で大炎竜を。お見事です」

ずいぶんジンガーのしゃべり方と態度が丁寧だ。他人行儀な感じさえする。それに違和感を覚えたレカンだが、すぐに気付いた。

(オレを持ち上げることによって)

(ノーマの格を上げたいんだろうな)

ノーマは、ワズロフ家の多くの人々にとって、印象の薄い、縁遠い存在だ。だがこれからはワズロフ家と関わらずにいることはできない。だから、ノーマの夫となるレカンに、ワズロフ家筆頭騎士である自分が腰を低くして接することによって、ノーマが高貴な姫であることを、周りに印象づけているのだ。

「これがワズロフ家当主殿からの手紙だ」

さすがに、マシャジャイン騎士団の幹部がいるこの場では、マンフリーの名を呼び捨てにするのは、はばかられる。

レカンが差し出した手紙を、ジンガーは目の前で開いて一読した。

そして後ろにいた騎士に渡した。その騎士は手紙を読み、横にいる騎士に渡した。手紙を読んだ騎士たちは、目に驚きを浮かべ、レカンとエダをみた。

「敵と接触するまで一緒に行動させてもらう。戦いが始まったらオレとエダは勝手に動く。戦場まで、よろしく頼む」

レカンは、陣を構えた将軍にたった一人で突撃するほど無謀ではない。腕利きの護衛もいるだろうし、周りの獣人も邪魔になる。数の暴力で押し包まれたら、いかにレカンでもなすすべはない。軍と軍が激突した混乱のなかにしか、ボウド将軍と接触する機会はない。

いっそ使者として平和裏に会談を願い出ることも考えた。だが、それはいい選択肢だとは思えなかった。

まず、立場がむずかしい。ザカ王国を代表するような立場には、当然ながら立てない。かといって、マシャジャイン侯爵の使者と名乗ってしまうと、マンフリーに責任が及ぶ。国の了解を得ずして勝手に侵略軍と交渉を行うなど、いかにワズロフ家でも許されないだろう。

しかも、ザック・ザイカーズが獣人王国の秘宝を所持しているかどうか、本当のところはまだわからない。

ボウド将軍が、本当にレカンの知っているボウドなのかどうかもわからない。もし別人だとすると、グィド帝国軍に単身乗り込んでいくという選択肢は、ただの自殺だ。

そもそも、もしも平和的交渉が可能だとマンフリーが思ったのなら、そうレカンに指示したはずだ。あの男がその道を選ばなかったということは、その道は無理筋なのだ。

やはり、狙うのは第一にボウド将軍の殺害だ。そのなかで対話をする余地があれば対話を試みてもいいし、ザックのところに行って事実関係を確かめ、秘宝の引き渡しを交渉するのを待ってもらえるなら、そうしてみてもいい。

(だがこうして考えてみると)

(もう戦争は始まっているというのに)

(そんな悠長な交渉なんかできる気がしないな)

(というかめんどくさい)

(オレの得意な分野は戦闘であって)

(交渉ではないんだ)

(よし。決めた)

(獣人軍の総指揮官があのボウドであろうとどのボウドであろうと)

(まず殺す)

(あとのことはそれから考えればいい)

この時点でレカンは、交渉という可能性を、ほとんど諦めていた。

「では、お座りください」

「うん? 何か話があるのか?」

「状況説明をさせていただきます」

(オレはジンガーについていくだけなんだがな)

(細かいことを聞いてもよくわからんし)

(相談されても答えられん)

少し怪訝に思ったが、レカンは勧められるまま机の前の椅子に座った。

「エダ様も」

「うん」

エダもその横に座った。

反対側にジンガーが座った。他の騎士六名は、その後ろに立っている。

一人の騎士が地図を出して机の上に広げた。

「マシャジャイン騎士団が円卓会議から受けた命令は、敵に気付かれぬよう迂回して待機し、次回の戦闘で敵の横腹か背後を突け、というものです。地図をごらんください」

ジンガーが指で現在地点をさす。

「ここニクヤの町からアプラスの町までは、緩やかで長い下り坂になっていて、こんなところを行軍したら敵にみつかってしまうでしょう。つまり迂回作戦を行うためには、ここからすぐに森に入らなくてはなりません。レカン様は、戦況についてはどの程度ご存じですか」

「アスポラに集結したこちらの軍勢は、総勢で二千七百人以上いたが、四の月の十三日、十五日と二度の戦闘を行い、四百人程度戦力が減った。敵はもともと千人近くいたが、その人数はあまり減っていない。オレが知っているのはそのぐらいだ」

「十七日にも戦闘が行われました。こちらは二百人ほど死ぬか戦闘不能になりました。われわれがここに到着したのは、昨日夕刻のことです。つい先ほど、物見から、今日も戦闘が始まったという報告がありました。われわれの到着は、連絡役に雇われている冒険者により、すでにアプラスに伝えられています。今から迂回しても間に合わないので、われわれの参戦は次回の戦闘ということになります」

「ふうん」

どうも悠長な考え方に思われるが、こうした事柄には、レカンよりジンガーのほうが確かな見識を持っているだろう。レカンは意見を言わなかった。

「ところが問題があるのです。レカン様のご意見をお聞きしたい」