軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「むむむ。ならばなおさらだ。レカン、頼む。敵の総指揮官を殺してくれ。君は常識では考えられない速度で移動できるはずだ。今すぐに出発すれば、わがマシャジャイン騎士団が戦闘に入るのに間に合うのではないか」

レカンは〈加速〉という魔法と〈回復〉という魔法を使い、また体力回復薬の力も借りて、長時間高速で移動し続けることができる。それをマンフリーに教えてはいなかったが、マンフリーは今までレカンとの付き合いから得た情報を分析して洞察したのだろう。

地図をにらみつけた。

ヴォーカからツボルトまで三日間で走り抜けたことがある。その距離に比べれば、マシャジャインからアスポラまでは、ずっと近い。しかも、行程のほとんどはダイナ街道を通れる。今はさびれているし戦時なので、閑散としているはずだ。

「二日で着ける、と思う」

「おお! 頼む。すまないが、すぐに出発してもらえるか」

「その前に、あんたに話しておくことがある」

「なに?」

「エダ」

「はい。マンフリー様。私たちは、グィド帝国の秘宝のありかについて、心当たりがございます」

「どういうことかな、エダ殿」

「手短に申し上げます。王国暦百十七年の三の月、ノーマ様と私は、ザック・ザイカーズというかたの治療を行いました。ザック様は呪いにむしばまれておいででした。ザック様は、大森林に分け入って、古代神殿のようなものを襲い、あまたの宝物を手に入れたのですが、おそらくはその名も知れない神の呪いであったと思われます。ザック様に近しいかたは、その呪いが現れたのは、十七年ほど前だとおっしゃっておられました。つまり今から十九年ほど前です」

ノーマとエダは、ザックの治療をするにあたり、その病変がいつごろから生じたかなどについて、かなり踏み込んだ質問をして、ザックに近しい人々から事情を聞いていた。また、ザックのうわ言から、断片的ながら興味深い情報を得ていた。ザックが帰還したあと、ノーマとエダはお互いの聞いたことを突き合わせ、領主クリムス・ウルバンと協議して、情報を整理した。さらにエダは、その後帰還したレカンがリプリンで聞いてきた竜滅剣をめぐる顛末ともすりあわせて、ザックが何をしたかについて、かなり詳しく知っていたのだ。

「ザック・ザイカーズ。その名は知っている。そうか。そんなことがあったのか」

「この古代神殿への襲撃については、その前段となる出来事もございますが、詳しいご説明は、また必要なときにさせていただきます」

「そうなのか。いや、確かに今はわずかな時間も惜しい」

「うまくすれば、グィド帝国軍に帰ってもらうことができるかもしれんな。まあ、やつらがおとなしく話を聞いてくれて、ザックのところまでついてきてくれて、そこで秘宝とやらを取り戻せたとしての話だが」

「レカン。依頼を修正する」

「うん?」

「どんな形でもいいからグィド帝国軍を追い払ってくれたら、白金貨二十枚を払う。ただしその場合、ボウド将軍や他の将を殺していても、そちらの報酬はない」

レカンは、ザックのことを知った以上、マンフリー自身がザックと交渉するのではないかと思ったが、もちろん先にグィド帝国軍を何とかしなければならないのであり、それができるのはレカンだけということになるのだろう。

「わかった。だが、あんた一人がそんな負担をする理由は何だ?」

「私はこの国の高位貴族としての責務を放棄するつもりはない。また、これはわが騎士団を守るためでもある。それに、もし君が成果を挙げてくれるなら、王宮も私に報いないわけにいかない」

「なるほど。よくわかった。エダ、すぐに着替えるんだ」

「はい」

「ちょっと待ちたまえ。まさかエダ殿を連れていくつもりか」

「もちろんだ」

マンフリーは何かを言おうと口を開きかけたが、何も言わずに閉じた。

「それが君の判断であり、エダ殿も同意するなら、私に言うべきことはない。君は最善の道を選んだのだと信じるだけだ。何か私にできることはあるかね」

「水を袋か筒に入れて何本か用意してくれ。それから、料理しなくても食える食料を頼む」

「手配しよう。フジスル」

「は」

「鎧もだ」

「は」

フジスルは会釈して部屋を出た。

マンフリーが話の続きを始めた。

「まずニクヤの町に立ち寄ってもらいたい。騎士団に君を待つよう指示するわけにはいかないが、君が合流することは伝えられる。君が着くより前に騎士団がニクヤを出発しているとしても、案内できる冒険者を手配することはできるだろう。ニクヤの町に何人か騎士が派遣されているので、ワズロフ家のメダルをみせるとよい」

「わかった」

「マンフリー様。では失礼いたします」

「ああ」

エダが部屋を出た。

「ユフから君の鎧が届いている。今ここに持ってこさせる」

「おおっ。できたか」

「それから、これを預けておく」

「何だ? この袋は」

「神薬だ。五つ入っている。ユフから贈られたものだ。必要ができたら使ってくれ。残ったら返してもらいたい」

「太っ腹だな。ありがたい。預かっておく」

部屋の外から声がした。

「入ってもよろしいでしょうか」

「よろしい」

入ってきたのは、騎士リーガン・ノートスだった。リーガンの後ろには大きな袋を持った従騎士がいる。

「あれ? 騎士リーガンは居残りか? じゃあ、誰が騎士団を統率してるんだ」

「ジンガーだ」

「なにっ。どうしてまたそんなことになった。腰は大丈夫なのか?」

「いろいろ事情があるのだ。腰は大丈夫らしい」

それ以上レカンは事情を聞かなかった。それより、従騎士が目の前に置いた荷物が気になった。

開けてみると、鎧だった。

大炎竜の革だけで造られた、素晴らしく美しい鎧だ。

「おおお」

生きていたときの大炎竜は、黒ずんだ緑色にみえたが、この鎧の色は、深く落ち着いた青だ。

間違いなく、これはいい鎧だ。だがレカンはそれ以上鎧をみることもなく、袋に戻し、その袋を〈収納〉にしまった。

「そんな大きさのものがあっさりと入るのだな。試着はしてみなくていいのか」

「ユフでは時間をかけて寸法調整もやったし、職人たちは、オレにいろんな動きをさせて、細かいところを詰めていたからな。信用している。試着は道中で休憩するときにするさ」

水と食料が用意され、レカンは次々に〈収納〉にしまった。

それから軽装に着替えたエダがやってきて、レカンに大きな袋を渡した。自分の持つ〈箱〉には入りにくい品を詰め込んであるようだ。このあたりは慣れたもので、レカンは何も言わずその大袋を〈収納〉にしまった。

マンフリーは、少し目をみひらいて驚いたが、何も言わなかった。

そのあとレカンは、別の部屋で待っていたユリウスと話をした。

正直に言って、ユリウスが一緒に来てくれれば助かる。ユリウスは、対人戦での技量は高い。そしてレカンやエダとは高度な連携が取れる。

しかし、多数の魔獣を殺してその血にまみれるのと、大勢の人間を斬り殺してその血にまみれるのは、まったく別のことだ。

だからレカンは率直に話をした。するとユリウスも、このことについてはアリオスに尋ねないといけないと言った。

そこでユリウスは里に帰らせることにした。もし戦いに参戦できることになったら、アスポラの町に来いとレカンは言ったが、間に合うように来るのは不可能だとわかっていた。

ユリウスが去っていくのをみおくったあと、マンフリーとフジスルと騎士リーガンにみおくられ、レカンとエダは出発した。日はすでに傾きかけていた。