軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「さてと。じゃあ次はあたしの用事だ。まずこれを渡しとくよ」

シーラが取り出したものをみて、レカンはそれが何かすぐにわかった。

「おい」

「なんだい。うれしそうじゃないね。せっかくあんたの無理な注文を聞いてやったってのに」

「これは何だ」

「みりゃわかるだろう。白炎狼の毛皮で作った外套だよ」

「オレは鎧を作ってくれと言ったはずだ」

「やろうとはしてみたんだよ。だけどだめなんだ。切り刻んだり毛を抜いたりすると、魔法防御の効果も消えちまう」

「なに?」

「こいつの最大の特徴は、魔法それ自体を通さないってことさ。そのうえ、物理攻撃でもほとんど傷つかず、しかもある程度魔力をそそいでやれば、ついた傷も修復される」

「ほう。やはり魔法防御は高いんだな」

「高いなんてもんじゃないよ。遮断しちまう。といっても、魔法攻撃で生じた衝撃はほとんど素通りしちまうし、熱やなんかもある程度しか防げないけどね」

「遮断だと。それはいい」

「その特徴を生かすためには、切り刻むわけにはいかなかったんだよ。というか、ここまでするのにも、とんでもなく大がかりな仕掛けとややこしい手順がいったんだ。とてもじゃないけど、鎧になんかできない」

「あんたがそう言うんなら、そうなんだろう」

「こいつの下に、物理防御の高い鎧を着けるんだね。そうできるように、少しゆとりを持たせてある」

これは願ってもない話だ。もうすぐマシャジャインに、大炎竜の革鎧が届く。あれと組み合わせればいい。

「わかった。文句を言って悪かった。これは何よりの品だ。これが最上の仕上げ方だと納得した。あんたには世話になってばかりだな。これを受け取ってくれ」

レカンは、机の上に置いたままになっていた王竜アトラシアの魔石をシーラのほうに押しやった。

「おやおや。こんな貴重なものをくれるのかい」

「前にも言ったが、オレが持っていても魔力壺としてしか使えない。これの価値を本当に理解し、有効に使えるあんたに贈りたい」

「じゃ、ありがたくもらっとくよ」

シーラは巨大な魔石を持ち上げてしばらくみつめたあと、どこへともなくそれをしまった。

「こんないいものをもらったあとじゃ言いにくいんだけどね。あんたに頼みがある」

「言ってみてくれ」

「ヤックルベンドに会ってやってほしいんだけどね」

「断る」

「そう言わないでさ。あいつにも悪気はなかったんだよ」

「悪気以外何もなかったの間違いだろう」

「ほんのちょっとした冗談だったんだよ」

「王宮で魔道具を爆発させ、オレの身内を爆殺すると脅したんだぞ」

「口べたなところがあってね。ぜひ招待を受けてほしかったんで、ついあんなことやっちまったけど、ノーマやエダを傷つける気持ちは、これっぽっちもなかったんだよ。第一あの二人に手を出したら許さないと、ずっと前にあたしから言い渡してあるからね。手を出すわけがない」

これは新情報だった。

ヤックルベンドの行動原理はまったく読めないし、攻撃力や防御力も、それどころかどういう相手なのかという実体もまだつかめていないが、シーラから本気で報復されたらただではすまないだろう。ならば、うかつにシーラを激怒させるようなことはしないはずだ。

(あの脅しがただのはったりだというのか?)

(王宮で爆発を起こしたんだぞ)

「屋敷に着くなり、オレを拘束して毒を注入してきた」

「あれは薬だったんだ」

「なに?」

「あたしもその薬をみせてもらった。確かに薬だ。疲れを取り、体力を回復させる薬さ。しかも一眠りして起きたら、筋肉がより強靱になってるって、なかなかいい薬だった。感心したよ」

「その一眠りしているあいだに、やつは何かをしようとしていた」

「そこは否定できないねえ。あんたの体と持ち物を調べる気満々だったみたいだ」

「オレの同意なくして、オレの体や所持品を調べるのは、敵対行為でなくて何だ」

「ごめんよ。そこは申し開きのしようもない。悪かったよ」

「あんたに謝られてもしかたがない。というか、何であんたが謝るんだ?」

「ヤックルベンドにあんたのことを教えちまったのはあたしだし、あんたの折れた剣をヤックルベンドに預けたのもあたしだからね。そして、この剣についてた〈自動修復〉の機能をヤックルベンドが解析したんだけど、そこでわかったことはあたしも教えてもらえる。それはあたしに、きわめて貴重な知見を与えてくれるはずさ。そしてできるものなら、あんたがもとの世界から持ち込んだ物品を、もうちょっと分析させてほしいんだ。それにはヤックルベンドの力がいる」

レカンは、自分がかなり興奮していると気付いたので、取りあえず干し肉を口に運び、ワインを飲んだ。

その味を味わっているうちに、少し心が落ち着いてきた。

(ヤックルベンドを信用することなぞできんが)

(ヤックルベンドが優れた研究者であるのは間違いない)

(現にオレの愛剣を見事に修復してくれた)

(シーラでもできないと言っていたのにだ)

ゴブレットにワインをそそぎ、それを一気に飲み干した。

(ヤックルベンドは信用できないが)

(シーラは信用できる)

(オレの持ち物やオレ自身に)

(シーラは大きな関心を持っていたはずなのに)

(根掘り葉掘りオレのことを聞き出そうとはしなかったし)

(オレの持ち物をみせろと迫ることもしなかった)

(それにしてもシーラはどうしてこんなに)

(ヤックルベンドをかばおうとするんだ?)

「あんたはヤックルベンドとはどういう関係なんだ?」

「付き合いが長すぎて、あたしにもそこがよくわからなくなっちまった。殺したいほど憎んだこともあるし、深刻な対立関係にあったこともある。手を組んで大仕事をしたこともある。今あたしにとって、研究で行き詰まったときに意見を聞きたい、ほとんど唯一の存在だね」

「ふうん」

レカンはもう一度ワインをそそぎ、一気に飲み干した。

「会ってもいい。だが、条件がある」

「条件てのは、何だい?」

「まず、やつの屋敷に入るのはいやだ」

「無理もないね。わかったよ」

「やつと会うときにはあんたが同席して、やつにおかしなことをさせないと約束してくれ」

「これまた当然だね。わかったよ」

「やつと何か約束をすることがあったとして、その約束が守られることを、あんたが保証してくれ」

「それはこちらからお願いしたいくらいだ。わかったよ」

「それから、これだ」

レカンは〈貴王熊の外套〉の残骸を取り出して机においた。

「うわあ。ずいぶんぼろぼろにしちゃったねえ」

「直せるものならこれを直してもらいたい。それを、前回やつがオレにしたことの償いとみなす」

「わかった。預かっとくよ」

レカンは外に食事に出て、その夜はシーラの隠れ家に泊まった。

翌日の午後、シーラの隠れ家で、ヤックルベンドと会うことになった。