軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4

飛び掛かってきた白炎狼は、物理障壁に激突した。

白炎狼の牙は物理障壁に食い込み、障壁は破壊され、粉々に砕けて消えた。

ただし白炎狼も空中で体勢を崩している。

「〈 刺突(シュピーレ) 〉!」

右手の〈トロンの剣〉を白炎狼の首筋に突き込んだ。

それなりの手応えはあった。

だが、白炎狼の首筋の毛皮を突き破ることはできなかった。

(なにっ?)

今の体勢で、スキルを使った突きの攻撃である。まさか通らないとは思わなかった。

着地した白炎狼は、後ろに跳んだ。

追撃しようとしたレカンの膝が、がくんと崩れた。

〈トロンの剣〉を地に突き刺して支えにし、完全に倒れてしまうのは防いだ。立って前に進もうとするが、足が思うように動かない。

右手を〈収納〉に差し込むと、赤ポーションと体力回復薬をつかみだして口に放り込み、がりがりっとかみ砕いて飲み下した。

この四日間で何度も飲んだため、もう効かなくなっているが、それでも飲まないよりましなはずだ。

(わずかでいい)

(オレの筋肉に力をくれ!)

白炎狼は、顔を憎々しくゆがめ、ぶるぶると身を震わせている。

レカンは、足の筋肉にわずかに力が戻るのを感じた。

右手に力を込め、〈トロンの剣〉を杖代わりに立ち上がる。

白炎狼の体が魔力をまとっている。あの体をぶるぶる震わせる動作は、体の底から最後の魔力を引き出すためのものだったのだ。

白炎狼が、口をぱかりと開いた。

「〈展開〉!」

手甲に戻してあった〈ウォルカンの盾〉を展開しつつ、レカンはくるりと振り向いた。

目前に白炎狼が転移してきて、魔法攻撃を放った。

レカンは、〈ウォルカンの盾〉で頭部を防御しつつ、〈トロンの剣〉を目の前の白炎狼に向かって突き込んだ。

剣がわずかでも魔法攻撃に触れることができれば、その魔力の大部分を散らすことができるはずだった。

しかし白炎狼は、〈トロンの剣〉を避けるかのように、集束した魔法攻撃を、レカンの足に撃ち込んだ。強い威力を保ったままの魔法攻撃が、レカンの足を直撃した。

(しまった!)

膝から下が失われる、とレカンは思った。

だが、両脚に履いた〈白魔の足環〉は、白炎狼の魔法攻撃に耐えた。耐えられなかった靴は焼け焦げてちぎれ飛び、レカンは両方の足の甲に深刻なダメージを受けた。

「〈刺突〉!」

レカンは前方に倒れ込みながらも、〈トロンの剣〉を白炎狼の顔に突き立てたが、剣は固い顔面の骨にはじかれ、折れた。

白炎狼が消えた。転移だ。

レカンは振り返った。二十歩ほど離れた場所に白炎狼がいる。

顔をゆがめ、身をぶるぶると震わせている。最後の力を振り絞って、魔力を体の奥底から引き出しているのだ。

(どうしてだ)

(どうしてやつの体に傷を付けられないんだ)

パルシモ迷宮では、レカンの攻撃が白炎狼を直撃し、額を割った。

あのときと今日とでは、何が違うのか。

(そうか!)

(〈アゴストの剣〉か!)

〈アゴストの剣〉は、竜を滅する剣である。すなわち、神獣を倒すことができる剣だ。だから白炎狼にも傷をつけることができたのだ。

だが、今のレカンでは、長大で重厚な〈アゴストの剣〉を自在に振ることはできない。振ったとしても、そんな鈍重な動きでは、白炎狼には通用しない。パルシモ迷宮では、仲間たちが白炎狼の動きを封じ、注意を引いてくれたから〈アゴストの剣〉を当てることができたのだ、

白炎狼の身の震えが止まった。

射抜くような目の光がレカンにそそがれている。

先ほど〈トロンの剣〉が折れたとき、そのまま爪か牙で攻撃してきていたら、レカンは死んでいた。

だが、白炎狼は転移して距離を取った。

レカンの攻撃を恐れたのだ。

ということは、剣は折れたものの、レカンは白炎狼を追い詰めていたのかもしれない。

今や白炎狼は、再び魔力を練っている。とどめとなる攻撃をするために、力をためているのだ。

「〈回復〉! 〈回復〉!」

両足の甲に〈回復〉をかけたが、ほとんど効かない。ずたずたになったままだ。

(治れ! 治れ!)

念じてみたが、自己治癒のスキルは発動しない。

(発動条件を満たしていないのか?)

レカンは、〈収納〉に手を差し入れ、折れた〈トロンの剣〉をしまい、別の剣を引き出した。

長く重い剣だ。

どさり、と音を立てて剣先が地に落ちる。

〈アゴストの剣〉である。

白炎狼が魔力を練っている。

最後の最後に強大な魔法攻撃を放ってくるつもりなのだ。たとえ〈トロンの剣〉で威力の大部分を無効化できても、残った破壊力だけでレカンを殺すには十分だろう。なにしろ今のレカンは逃げることができないのだから。

防御に回ったのでは死ぬしかない。

白炎狼は、なおも魔力を練っている。だが魔力の量はそれほど多くない。白炎狼にしても、今はぎりぎりの状態なのだろう。

レカンは、長大な剣を持ち上げ、右足を一歩前に踏み出した。

足の感覚がにぶい。

左足を一歩前に踏み出した。

(よし。ここだ)

力をためた白炎狼が、口を大きく開けた。これ以上レカンが接近するのを許すつもりはないのだ。

白炎狼が死闘に決着をつける魔法攻撃を放とうとした瞬間、レカンは顔を伏せ、押し殺した声でささやくように呪文を唱えた。

「〈ゾルアス・クルト・ヴェンダ〉」

次の瞬間、レカンの体は前方に二十歩転移し、〈アゴストの剣〉の長大な剣先が、白炎狼の大きく開いた口のなかに、深々と突き込まれた。

レカンの目の前には白炎狼の顔がある。

〈アゴストの剣〉を飲み込んだその顔は、まるで人間のように驚愕の表情を浮かべている。

レカンは、にやりと笑って意識を手放した。