軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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手紙を読み終わったデュオは、レカンのほうに視線を向けながら声を上げた。

「ブラック!」

近くにいた騎士がやってきた。この男もなかなかの豪傑だ。

デュオはその騎士に開いたままの手紙を渡した。読め、ということだ。

ブラックとかいう名の騎士が手紙を読んでいるあいだも、デュオの目線はレカンに据えられている。

「レカン殿。一つ疑問がある」

「何だ」

「殿下とノッドレイン様の手紙は、二の月の七日となっていた。今日は二十三日だ。これはどういうことだ」

「オレがその手紙を北の塔で預かったのが二の月の七日だった。オレとエダは、二の月の八日にユーフォニアを出て、迷宮の入り口まで走り、その日の昼に迷宮に入った。そしてここまで走ってきた」

「走ってきた? 魔獣と遭遇せずにか」

「何度かは戦闘したが、ほとんどの場合は魔獣をよけて走った。オレは、魔獣を遠方から探知する技能を持ってるんだ。そのことは手紙に書いてなかったか?」

レカンの問いにデュオは答えず、じっとレカンの目をみつめた。

デュオの射抜くような視線を浴びても、レカンの心はざわつかなかった。静かな、しかし揺るぎのない心で、レカンはデュオの目をみつめ返した。

「ブラック!」

「はい、団長」

「狩りは終わりだ」

「わかりました。おおい! 野郎ども! 魔獣を殺せ! 宝箱を拾え! 素材を採取しろ!」

「ブラック!」

このときになって、やっとデュオはレカンから視線をそらした。

「はい」

「素材の採取はなしだ。皆をここに集めろ」

「はい。おおい! 素材は取らなくていい! 宝箱の中身だけ回収だ。しかるのち集合! 急げ!」

騎士たちは手際よく魔獣を仕留め、宝箱からポーションを取り出し、ブラックの前に集合した。全員が集まると、騎士ブラックがデュオに報告した。

「団長。全員集まりました」

「よし。みんな、聞け! ここにいるのは、ワズロフ家のレカン殿! ツボルト迷宮とパルシモ迷宮を踏破した男だ」

ざわめきが起きたが、すぐに静まった。

「レカン殿が! アシッドグレイン様とノッドレイン様の手紙を! 持ってきてくれた! 俺たちの留守に! 治安騎士団が宮殿を襲い! 領主様と、エストファリン殿と、サルジレイン様を、拘束した!」

デュオは、ここで少し間を取り、この驚くべき知らせが騎士たちの頭にしみ込むのを待った。

「アシッドグレイン様と、ルビアナフェル様は! ノッドレイン様と、側近数人とともに、北の塔に、立てこもった!」

デュオが恐ろしい目をして騎士たちを 睨(ね) め回した。

「ただちに! ユーフォニアに、向かう! 領主様をお救いし! 殿下と、御方様を、お守りするのだ!」

うおおおおー、と怒号のような声が騎士たちから上がった。

この場に満ちた気合いは、どんな強力な魔獣をもひるませるほどのものだ。

(こいつら騎士臭くないな)

(まあ迷宮で魔獣ばっかり相手にしてたら)

(お上品な作法じゃやっていけんだろうがな)

迷宮騎士団は神殿に向かって行軍をはじめた。

レカンとエダは、団長デュオ・バーンと一緒に歩いた。

巨大神殿の門の近くまできたとき、レカンが聞いた。

「デュオ。このまま神殿を迂回して赤砂に向かうわけにはいかんのか」

「レカン。迂回しても、そこに赤砂はないぞ」

「なに?」

「地図にある赤砂はな、神殿の門から入って三巨人を倒し、そしてその部屋から出たときにだけたどり着けるんだ」

「ほう」

「このことに気づくまでは、神薬を手に入れたら入り口まで帰ってたそうだ」

「それは大変だな」

「そういうことだ」

神殿の巨大な石の扉にあるいくつかの穴に、大魔石がはめ込まれた。

すると石の扉は重々しい音を立てながら左右に開いた。

なかはまるで迷路のようだった。

通路は広く、騎士が横に十人並んでも歩くことができたろう。実際には迷宮騎士団の騎士たちは、五列縦隊で進んでいる。一人一人が充分に間隔を取り、何が起きても対処できるゆとりを持っている。

いたるところに大きな扉がある。そのなかにはとびきり強力な魔獣が待ち構えていることをレカンは察知していた。

先頭から二列目を歩く騎士団副団長ブラック・オルモアは地図をみながら進行方向を指図している。

迷宮騎士団の精鋭に囲まれて移動しながら、レカンは頼もしさを感じていた。まだ出会ってわずかな時間しかたっていないが、彼ら迷宮騎士団の強さと気質を感じ取ることはできた。

彼らの強さは本物だ。一人一人も精強だが、まるで百人が一つの生き物であるかのような動きをする。そして彼らの気質は、気取った騎士というよりざっくばらんな冒険者のそれに近い。

(もう大丈夫だ)

(ノッドレインの見立てでは、ここまで三十四日かかるはずだったが)

(半分以下の十六日で到達した)

(あとはデュオ・バーンと迷宮騎士団に任せておけばいい)

(日にちはたっぷり残っている)

(もう何の心配もない)

(オレはルビーを守ることができたんだ)

レカンは深い安堵と達成感を感じていた。

「デュオ」

「何だ」

「神殿を抜けるのに三日かかると聞いた。三巨人とやらにたどりつくまでに三日かかるということか?」

「はっはっは。レカン。確かにこの神殿は広いし、順路も複雑だが、地図があるんだ。三巨人の部屋まで一刻もかからんよ」

「うん? それじゃあ、どうして三日かかるとノッドレインは言ったんだ?」

「三巨人との戦いに三日かかるんだよ」

レカンは驚いた目でデュオをみた。

デュオはにやりと笑った。

「三巨人のうち一人は剣を持ち、一人は盾を持ち、一人は杖を持っている。騎士団では、騎士を六人入れて、まず杖を持った巨人を倒す。魔法が厄介なんでな。これに二日かかる」

「その六人は、二日間戦い詰めか?」

「いや、まさか。六人の騎士は、一人ずつ外で待機している騎士と交代する」

「ああ、なるほど」

「杖の巨人が倒せたら、あとは楽だ。騎士八人で戦って、剣を持った巨人を倒す。そして最後に十人の騎士が盾の巨人を倒す」

「百人が入れ替わり立ち替わり戦うわけか」

「いや。騎士百六名のうち、三巨人の相手ができるのは四十人ほどだ」

「最初は六人が限度なのか」

「それ以上入れると、動きが取りにくい。無理やり大勢を入れれば短時間で三巨人を倒せるが、こちらにも死者が出る」

「六人で戦えば死者は出ないのか」

「時々、出ることは出る」

デュオは、おどけたように片目をつぶってみせた。

(うん?)

(精鋭騎士の戦死は冗談事ではないはずだが)

(今の表情はどういうことだ?)