軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1(ユフ迷宮地図あり)

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広々とした草原を、レカンとエダは走った。

生い茂る草の長さは腰ほどまでしかなく、大地は平らかなので、視界は極めて良好だ。

不思議なほど遠くまでみえる。

今、レカンは、〈生命感知〉を最大限前方に展開している。この世界に下りたころには、半径千歩、直径二千歩の範囲で感知ができた。感知範囲をずらすことはできたが、千五百歩先は不鮮明にしか感知できなかった。

だが、ニーナエ迷宮踏破後は二千歩先もみえるようになった。ツボルト迷宮とパルシモ迷宮を踏破したあとは、二千五百歩先が鮮明にみえるようになり、感知範囲は直径三千歩まで広がっていた。

つまり今のレカンは前方二千五百歩、後方五百歩を感知しながら走っている。

広い草原には、草の生えていない場所もある。ぽつりぽつりと木も生えている。花の咲いている場所もある。

迷宮のなかであるのに、涼やかな風が吹いていて、空気はかぐわしい。

爽快感を感じながら、レカンは走った。

(おっ。魔獣の群れがいるな)

前方に魔獣の群れを見つけたレカンは、右手でエダに合図してから速度を緩め、立ち止まった。まだ〈生命感知〉の範囲外である。この草原では、〈生命感知〉より目視のほうが遠くまで届くようだ。

そのあと、〈生命感知〉が群れを捉えた。

魔獣の群れは斜めに通りすぎかけたが、先頭の数匹が向きを変え、レカンのほうにまっすぐ走り寄ってきた。後ろの群れもそれに続く。

向こうにみつかった以上、戦うしかない。これから先むやみに戦うつもりはないが、戦闘をまったくしないというわけにもいかない。ならば早いうちに戦ってみておいたほうがいい。

レカンは少し後ろに下がった。エダもそれに合わせて後ろに下がる。

草がなく土がむき出しになっている地点まで下がった。エダは後方十歩の位置だ。何の打ち合わせをしたわけでもない。今や二人の連携は練り上げられている。

この位置ならエダの視界を遮るものもないし、足場もいい。

エダは〈退魔の腕輪〉を取り出して左腕にはめ、〈イェルビッツの弓〉を構えた。

魔獣は 木狼(トルジェ) だった。

大きな群れだ。二百匹を少し超えるぐらいの数だ。

魔獣の先頭が前方千歩に近づいたとき、エダが射撃を開始した。

〈イェルビッツの弓〉は魔弓だ。その飛翔速度は〈火矢〉どころか〈炎槍〉よりも速い。

一度に生じる矢の数は一本から五本で任意に設定できるが、エダは常に五本の矢を放つ。矢の威力は込めた魔力に依存するのであって、強く引き絞ったから威力のある攻撃になるのではない。はじめのうちこそ、弦を指でつまんで引き絞らないと魔法矢を生成することも放つこともできなかったが、段々と、指先でぴんとはじくだけで魔法矢を飛ばせるようになった。

今やエダは、右手の四本の指を使って、まるで弦楽器を演奏するように矢を放つことができる。そうやって軽やかに放たれた五本の矢の一本一本には大量の魔力が込められている。つまり貫通力が高い。木狼の顔だろうが頭だろうが胴体だろうが、貫通してゆく。前足などに当たろうものなら引きちぎり吹き飛ばしてしまう。

そんな恐るべき威力を持った矢が雨のように絶え間なく降りそそぐのだ。近づく大群は、みるみるその数を減らしていった。

多大な犠牲を出しながら、ようやく何匹かの木狼がレカンにたどりついた。

レカンは、〈雷竜の籠手〉をしまって、両手で〈彗星斬り〉を持っている。

先頭の木狼が飛びかかってきたとき、〈彗星斬り〉がその胴体を両断した。

エダはレカンの後ろにいるから、レカンの真正面から来る木狼は生き残っている。その真正面から来る木狼たちが、次々に襲いかかってくる。

斬る。斬る。斬る。斬る。

〈彗星斬り〉をひらめかせ、レカンの剣技がさえ渡る。

やや遠い位置に木狼がいて剣が届かないとみるや、瞬間に〈彗星斬り〉の魔法刃を伸ばしてその木狼を斬り、次の瞬間には魔法刃を消し、そしてただちに普通の長さの魔法刃を生成した。ニケがみせたように、いったん長くした魔法刃をたちまちのうちに縮めるのは、今のレカンには無理だ。その代わり、いったん消してから再生成することにしたのだ。そのほうが断然速い。

しばらくして木狼の群れは全滅し、レカンは物足りない思いを抱きながら、魔法刃を消し、〈彗星斬り〉を鞘に収めた。

「〈退魔の腕輪〉を試せなかったね」

「あ」

そのことをすっかり忘れていた。

〈退魔の腕輪〉は、ユフ迷宮で時々得られる恩寵品で、ノッドレインから借り受けた。魔獣が近寄ってこなくなる機能がある。相棒が遠距離専門だと知って、貸してくれたのだ。エダに渡してある。効果を確かめておかねばならないのだが、調子に乗って魔獣を一匹も後ろにのがさず全滅させてしまった。

「ま、次だな」

「そうだね」

「その腕輪、ずっとはめておけ」

「わかった」

「宝箱がいくつか落ちているな」

「拾う?」

「二つだけ拾ってくれ」

「二つ?」

「ああ」

大した敵ではなかったから、宝箱の中身も大したものではないだろう。中身を確認するのに取られる時間が惜しい。だから宝箱は開けない。素材も剥ぎ取らない。だが、確認しておきたいことがあるので、二つだけ中身をみたい。

エダが選んだ二つは、いかにも剣が入っていそうな箱だった。

中身を取り出すと、やはり二つとも剣だった。

レカンは鑑定魔法の呪文を唱えた。

「〈鑑定〉」

だが何も起こらない。

「レカン。ここ、魔法使えないんじゃなかった?」

「そういえばそうだった」

レカンは二つの剣を抜いて、両手で持ち、じっとみくらべた。

確かにちがう。

何かがちがう。

レカンは、二つの剣を撃ち合わせた。

片方の剣が折れた。

(深度だ)

(たぶんこの二本は深度が格段に違う)

(同じ魔獣の群れでも弱い個体と強い個体が混じっていると)

(ノッドレインが言っていたから)

(そうではないかと思っていたが)

(やはりこのユフ迷宮というのは)

(こういう迷宮だったんだな)

昨夜ノッドレインから、いくつかの品の貸与を受けた。

そのうちの多くがこのユフ迷宮で出たものだというが、鑑定してみると、深度百二十のものもあれば深度五十五のものもあった。ユフ迷宮は一階層しかないのに、どうしてこういう深度の恩寵品が出るのか不思議に思っていたが、そのわけが今わかった。

「どうかしたの、レカン?」

「この剣は、例えていえば一本はほかの迷宮なら一階層で得られる品で、もう一本は五十階層とか六十階層で得られる品だ」

「え? おんなじ階層だけど、強さの上ではいろんな階層の魔獣が出てくるってこと?」

「そうだ。そういうことだ。同じ魔獣でも、まるで強さがちがう個体が交じっているから、油断ならんわけだ」

「わかった。気をつける」

前進を再開した。

少し進むと生えている草の長さが長い地帯になったので、速度が落ちた。

読者様ご提供ユフ迷宮地図