作品タイトル不明
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ポーションも売っている薬屋に案内された。
赤ポーションと青ポーションと金ポーションは売っていなかった。赤ポーションと青ポーションは一般販売はされないのだという。金ポーションは、取得した騎士が使わせてもらう慣例のようだ。もちろん神薬も売っていない。神薬はすべて領主が使い道を決める。
ほかのポーションは一通りあった。よそではあまりみかけない銀色のポーションも売っていた。
「銀ポーションがたくさんあるな」
「ああ、騎士団が使った余り物ってことだね」
「騎士が銀ポーションを使うのか?」
「騎士じゃないよ。迷宮騎士団の従騎士さ。なりたてのね。訓練を始めたばっかりのころ、こいつを飲み続けると、あとでものすごく強くなれるんだ。ある程度強くなっちまうと、銀ポーションの成長促進効果はほとんどなくなっちまうからね」
「なるほど」
当たり前のように魔力回復薬や体力回復薬を売っていたので驚いた。試しに一個ずつ買って飲んでみた。
ほかの薬もよさげにみえた。多種多様な薬があるのに感心させられた。薬草も状態がいい。処理が丁寧なのが一目でわかった。
食料品を売っている店に行くと、野菜はどれも立派だった。葉物野菜はみずみずしいし、根菜は滋養たっぷりにみえる。山ほど買い込んだ。
野菜はエダの担当だ。品を選ぶのも保存するのもエダの役割なのだ。〈自在箱〉のなかには種類別の品を入れたたくさんの〈箱〉が入っている。その〈箱〉を引っ張り出しては野菜を収納していく。
騎士フーツラは目をむいた。
「その〈箱〉は、いったいどうなっているのですか。そんなにたくさんの品を入れたのに、少しもふくらんでいない」
「ああ、これは最近パルシモで開発された〈自在箱〉というものだ。小さな〈箱〉に大きなものを入れることができる。そのなかでもこれは特製でな。今みた通り、ほかの〈箱〉を何個も入れることができるんだ。入れ子式の〈自在箱〉だな」
「大きなものが入る小さな〈箱〉。それに入れ子式の〈箱〉。そんなものがパルシモにはあるのですか」
「しかも、今エダが使っている〈自在箱〉には、食べ物が腐りにくい効果がある」
「えっ。そ、それはパルシモに行けば買うことができるのですか」
「いや、無理だろうな。オレたちは、パルシモ魔法研究所の導師ジザ・モルフェスという人からもらったが、今はまだ一般には売ってないと思う」
そうこうしているうちに、魔力回復薬と体力回復薬の効果は消えた。やはりシーラの作り方に比べて持続時間がかなり短い。しかし、ツボルトで買った何とかという薬師の魔力回復薬に比べれば、ずっと優れている。しかもはるかに安い。
昼食を取ったあと、魔力回復薬と体力回復薬を買いあさった。五年ほどたつと薬効が落ち始めるというので、自家製のものより先にこちらを使っていくことにする。
そういえば、シーラから作り方を教えてもらった魔力回復薬と体力回復薬は、どのくらいもつのだろう。聞いたことがあったような気もするが、忘れた。
時間稼ぎをする目的もあって、いろいろな食料品の店に行った。野菜を買いすぎた。いくらなんでもエダと二人では食べきれない。そもそも野菜は、マシャジャインとソプデモアで充分以上に買いそろえてあったのだ。
どこかで大量に消費する必要がある。レカンは食べ物を腐らせたり粗末に扱ったりするのが大嫌いだった。
魔獣素材の農具や日用品を売る店があった。品は質がよく、値段は安い。
(食べ物もたっぷり売っているし)
(日用品や農具も上等なものが行き渡っているようだ)
(ユフは豊かだな)
「そういえば、騎士フーツラ」
「何でしょうか」
「迷宮の地図は売っていないのか」
「それは売っておりません。迷宮内部のことは秘匿されていて、地図を持っているのは迷宮騎士団の幹部だけです」
ユフには三つの騎士団がある。迷宮騎士団と治安騎士団と領主騎士団だ。
迷宮騎士団は騎士百人と 強力隊(ごうりきたい) と呼ばれる輸送部隊で構成される。迷宮騎士団の騎士は一騎当千の精鋭ぞろいだという。迷宮騎士団が迷宮から得る品が、ユフの豊かさを根幹で支えている。
一方、治安騎士団は騎士五百人と従騎士千人、魔法士五十人で構成される。周辺の魔獣や野獣を定期的に狩ったり、住人のもめごとを解決したりするのがおもな仕事だ。
領主騎士団は、二つの騎士団に比べるとずっと騎士の数が少ない。ユフ城に勤務している。
このほか、各貴族家直属の騎士もいるが、騎士団と呼べるほどの規模はない。
「出てくる魔獣の種類は多いのか」
「それはもう。他の大迷宮に出現する魔獣は、ワード迷宮の〈 魔食い鳥(イグボアフィー) 〉やエジス迷宮の〈 塩玉(ウィリジ) 〉などの固有種を除いて、ほぼすべてユフ迷宮にも出現します。そして、ユフ迷宮にしか出現が確認されていない魔獣もおります」
「ほう。ユフ迷宮固有の魔獣か。どんな魔獣だ」
「何種類かの魔獣は固有種だと思いますが、なかでも迷宮の奥のほうに出現するある種の魔獣は、ほかでは決して出現しない魔獣です」
「何という名だ」
「それは部外秘となっております」
たぶん、その固有種の魔獣が神薬を落とすのだ。そしてその固有種は、迷宮の奥のほうまで進まないと出てこないようだ。もっともレカンとしては、むしろ大炎竜に興味があった。
「大炎竜はどこに出るんだ?」
「確か岩山のほうではなかったかと思いますが、私は迷宮には入ったことがないので、詳しいことは知りません」
「そうか。それはそうと、ユフ迷宮では魔法が使えないそうだな」
騎士フーツラが笑顔をみせた。人のよさそうな笑顔だ。
「はい」
「それは隠さないんだな」
「入ればわかることですから」
ユフ迷宮では魔法が使えないと聞いた。どうもそれは事実であるようだ。
「魔道具は使えるのか?」
「さあ。使えるものもあるとは聞いています」
「使えないものもあるのか?」
「いえ。そういうわけではありません。よく知らないのです」
ユフ迷宮は、とてつもなく広いと聞いている。やみくもに探索しても大炎竜には出会えないだろう。
(岩山か)
(どこまで信用できるかわからんが)
(手がかりではあるな)
「楽しそうですね」
「うん?」
「迷宮のことを考える貴殿は、とても楽しそうです」
レカンはにやりと笑った。
「ああ。楽しいな」