軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日、レカンはまたもエザクを訪ねた。気になることがあったのだ。

「エザク。ガスコエル殿は、今ユフとの連絡が途絶していると言ったが、あれはどういうことだ」

「よく知らんのだが、昨年王家からユフ侯爵家に向かった勅使が侯爵に会えなかったそうで、返礼の使者もないらしい。そしてユフ侯爵家からの新年の挨拶がないらしい」

「ふうん?」

「ガスコエル様がルビアナフェル様に出した手紙も返事がないらしい。そして最近ユフに行った商人は、関所が閉められていたと言っているらしい」

「妙だな」

どういうわけかわからないが、このときレカンの心に、ユフに行くべきだという強い思いが生じた。

思えば、ルビアナフェルが招いてくれたから、ザイドモール家に行くことになった。そこで一年間過ごすあいだに、言葉やそのほかの知識も得た。資金も手にした。この世界で生活する基盤は、ザイドモール家が与えてくれたのであり、ルビアナフェルには恩がある。

そのルビアナフェルが何かの問題を抱えているかもしれない。会って確かめるべきだ。そう思えた。

「私たちはこれからユフに行く。領主様の親書を預かっているんだ。注文してある贈り物がそろい次第、それを持ってユフ侯爵様を訪問する」

「オレもユフに行く」

「え? いや、しかし」

「いや、一緒に行くわけじゃない。別行動だ」

「そ、そうか。しかし何か手形か身元証明のようなものがないと、関所は通れないぞ」

「それは何とかする。オレはユフ大迷宮で大炎竜の素材を手に入れたい。そのついでに遠くからでもルビアナフェル姫の元気な姿をみれば安心できる」

白炎狼の毛皮で鎧を作ってもらっているのだから、どうしても大炎竜の革鎧が必要なわけではない。だが持っていれば役に立つこともあるだろう。いずれにしても、そのうちユフ大迷宮には行ってみたいと思っていたのだ。

「お前、姫にはずいぶん引き立ててもらったからなあ。レカン」

「うん?」

「ユフに行けばわかることだから打ち明けておくが、ルビアナフェル姫は、ユフに行ってから〈浄化〉を発現された」

「なに」

「そしてライコレス神殿から〈癒やしの巫女〉に認定されたそうだ」

(なんてことだ)

(絶対面倒事に巻き込まれているな)

「エザク。世話になった。旅の無事を祈る。会えるものならユフで会おう」

「会えてうれしかったよ、レカン。昨晩はごちそうになったな。祝い金、ありがとう。今度は私がおごるよ」

「楽しみにしている」

「それにしても、あんな大金を。……いや、二つの大迷宮を踏破したんだものな。ありがたくもらっておくよ」

「ああ」

「レカン、また会おう」

「ああ」

エザクと別れたレカンは、マシャジャインに向かった。

ノーマとエダはワズロフ家に帰っていた。

「レカン! 大丈夫だった?」

エダは、心配のあまり、話し方がくだけている。

もっとも、今は豊かな赤髪を肩まで垂らしているし、すっきりとした服を着ているので、身内のくつろいだ場なのかもしれない。

「ああ。何とか生きて王都を出られた」

「いったい何があったのかな。あなたがそんなことを言うなんて」

「ああ、実は、こういうことなんだ」

レカンは、マンフリーとエダとノーマに事の次第を説明した。

マンフリーは憤慨した。

「こんなひどい話は聞いたこともない。トマト卿のやり方は、あまりといえばあまりだ。君がワズロフ家の姫と間もなく結婚する人物だということを、あらためてトマト卿に伝えておく」

「まともに話を聞く相手じゃないぞ。あんまり関わらないほうがいい」

「それでもだ。そしてこの次何かあったら、私としても黙ってはいられない」

「そうか。その気持ちはありがたい」

ノーマが心配そうな顔で言った。

「レカン。私はアーマミール様のところに行かないといけない」

「ああ。たぶん大丈夫だと思う。だが腕利きの騎士をつけてもらえ。決して一人になるな」

「わかった」

「さて、今説明したように、ユフで何かが起きたらしい。気になるので様子をみに行く。ついでにユフ迷宮で大炎竜を狩ってくる」

エダが、目を輝かせながら言った。

「レカン。私も一緒に参ります」

「なに」

「私はきっとあなたのお役に立ちます」

レカンはしばらくエダの顔をみた。

若さと命の輝きに満ちた美しい顔だ。

自分の意思を持つ者の顔であり、自分が何を言っているのかよく承知している者の顔だ。

「よし、来い。一緒に行こう」

「レカン。君には私からユフ侯爵殿への親書をことづけよう。通行証も発行する。役に立つようなら使ってくれ」

「ありがたい」

「馬車を出そうか」

「いや。せっかくだが、それはいい」

「無粋だったな。地図は用意させる」

「助かる」

「ところで結婚式だが、六の月の十三日ということで調整しようと思う。よろしいか」

「六の月の十三日だな。それまでになんとか踏破して帰ってくる」

「無理だろう。ユフ迷宮は、大規模な騎士団を投入しなければ探索できないと聞いているし、踏破には何か月もかかるという」

「ほう。それは面白そうだ。あ、そうだ。思い出した。すまんが王都ケレス神殿の副神殿長マルリア・フォートスに、今回スマーク侯爵がしでかしたことが伝わるように取り計らってもらえるか」

「マルリア・フォートス? ああ、そうか、あのかたか。君とは縁があったのだったな。なるほどそれは愉快だ。ぜひそうしよう。ところで、これを渡しておく。王家から君への贈り物だ」

マンフリーは緑色のメダルをレカンに差し出した。

「うん? 何だ、このメダルは」

「これがあると、君と君の仲間は、自由にフィンケル迷宮に入って探索することができる」

「ああ、なるほど。目印というわけか。王国法では誰でも迷宮に入れると定めてあったと思うんだが、フィンケル迷宮に入るには、王の許しがいるのか?」

「フィンケル迷宮は王家が所有する迷宮だから、王国法は適用されない。探索には陛下の許しがいる。そもそも王家の土地のなかにある迷宮だから、陛下のご裁可がなくては近づくことができん」

(王は法の外にあるわけか)

(なるほど、法治じゃないな)

「また、このメダルがあると、君と君の仲間は王宮に出入りできる」

「ほう?」

「フィンケル迷宮の探索を許可なさるというだけなら、もっと格式の低いメダルでもよかったんだがね。このメダルは本来、無爵の領主か、勅任騎士のうち一定以上の役職にある者に渡されるものだ。王陛下は君を中級貴族なみに遇しておられる」

「ほう」

「興味なさそうだな」

「ああ」

「ところで、家名はどうする」

「家名?」

「君はナルーム王家とやらの家名を名乗ってもいいし、ワズロフの家名を名乗ってもいい。新たな家名を名乗ってもいい」

「ふむ。家名などなくてもいいが、そうすると二人の妻を持てなくなるか」

「そういうことだ。スマーク侯爵のようないいがかりをつける者もある」

「そのうち気が向いたら家名は考える。今はワズロフ家のレカンということにしておいてもらえるか」

「わかった」

翌日は、食料をはじめ必要なものを片っ端から〈収納〉にしまっていった。

また、ユフについての説明を受けた。

その翌日、ワズロフ家の玄関に、レカンとエダの姿があった。ノーマほか何人かがみおくりに出ている。

エダは伸びていた髪を短く切り詰めている。侍女が泣きながらやめさせようとしたらしい。

二人とも小火竜の革鎧を身につけ、レカンは貴王熊の外套を、エダはゴルブルの最下層で出たマントを羽織っている。

「では、行ってくる」

「行ってきます」

ノーマは笑顔をみせた。

「うん。あなたたちのことだから、どんな困難も乗り越えられると信じているよ。でもここに毎日あなたたちの無事を祈っている者がいることは、忘れないでほしい」