軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「裏切り者?」

「はい。メイス商会長ケラスが、ムッズのことをそう呼んだのを、商会の店員が聞いております。ただしその言葉は、ムッズではなくムッズの妻のことを指していた可能性もあります」

「何を裏切ったんだ?」

「わかりません。ただ、ムッズの妻は、ムッズと結婚する以前、一時期ケラスと恋仲であったようです」

「なるほど」

ニルフトがチャダに派遣した密偵は優秀であり、しかもレカンが渡した大金を惜しげもなく使って、短い日時のあいだに密度の濃い情報を集めてきた。

ボルドリン家前当主カッサンドラが蟄居に追い込まれたとき、多くの密偵たちがボルドリン家を去った。チェイニーのもとに身を寄せたニルフトは、資金を与えてもらい、そのうちの優秀な者三人を部下として引き込んだのであり、今回チャダに派遣されたのは、その三人のうちの一人だった。

「そこから先は、尋問で明らかになっていたな。ゼアハドは馬車がいつどこを通るかを調べて、それをケラスに伝え、大金をもらって行方をくらませたわけだ」

「はい。ところが行方をくらませたふりをして身を隠し、ケイブンと結託して、盗まれた財宝の一部を持ち出したのです」

「それで名を変え、顔を変えてロトルに来たと」

「はい」

「逃げるには近すぎる町だな」

「はい。機会をみて、ケラスから金を引き出すつもりだったようでございます」

「ふうん。ケラスには何かゆすられるような弱みがあったということか。そういえばケラスには大望がある、とあの二人は尋問で言ったそうだが、その大望の中身は何だったかわかったのか」

「それは尋問でもはっきりいたしませんでした。今調べさせております。もう少しお時間を頂きます」

「宝物はどこに行ったんだ」

「ケラスのもとにあると思われます。チャダの町に置いてあるか、別の場所に置いてあるかはわかりませんが」

「その宝物を、ケラスは何に使うつもりだったんだろうな」

「そこにこの事件の核心があるかと思われます」

「それと、襲撃の実行犯が領主の兵だったということがよくわからん。自分の領民だぞ。襲って殺してどうするんだ。有力な商会が一つなくなれば、それだけ町の力が弱くなるだろう」

「どうもこの件は、領主様のご存じないところで起きたようです」

「なに?」

「まだはっきりしたことは申し上げられません。それと」

「うん?」

「ケラスがチャダ領主様に仇討ち許可証の発行を願い出た事実はないようです」

「やっぱりな。そんなことだと思った。しかし、わからんな」

「何がでございますか」

「ケラスは、もともと同じ店で働いていたムッズか、あるいはムッズの女房が自分を裏切ったと思っていた。これはいい」

「はい」

「それが荷駄隊を襲って人間を皆殺しにして、宝物を残らず奪うにあたいするようなことだったのかどうかは、よくわからんが、とにかくケラスはムッズを憎んでいた。そしてたぶん何かの目的のために金が欲しかった。だからケラスが襲撃を決意したところまでは、一応わかる」

「はい」

「わからんのはそのあとだ。なぜケラスは殺したムッズの女房や息子に援助を申し出たんだ? やつがムッズに対してしたことと、リントスから聞いたやつの態度は、まるでちぐはぐだ」

「未亡人のもとを、ケラスはたびたび訪れたようですね。もしかすると、まだ好きだったのかもしれません。あるいは好き嫌いの感情ではなく、奪われたものを取り返したかったのかもしれません。そこはケラス本人に聞くしかないでしょう。ただ、気になる情報があります」

「ほう、何だ」

「ケラスはリントス殿のことを、自分の息子だと思っているふしがあります」

「なにっ。そうか。そういうことなのか」

「いえ。いろいろなことを考え合わせますと、リントス殿がケラスの息子である可能性はないと思われます」

「なに? ではケラスは勘違いをしているのか?」

「勘違いではなく、あえてそう思いたかったのかもしれません。自分の愛した、あるいは所有した女の産んだこどもは自分の子でなければならないと」

「ううむ。よくわからんな」

「人の心はわかりにくいものです」

「そうだな。魔獣のほうが素直でわかりやすい」

「そこは同意しかねます」

数日中に続報が入るというので、あらましをリントスにも伝え、レカンは宿に帰って寝た。ロトル領主に紹介された高級な宿で、同じ宿にチェイニーも泊まっている。

その日の夜、ニルフトがレカンの部屋に忍び込んできた。

「何の用事だ、ニルフト」

「事態が急変しました」

「ほう」

「ケラスの娘は、前チャダ領主様の息子を産みました。この孫をチャダ伯爵にするのがケラスの狙いです」

「謀反か」

「前チャダ領主様の弟君は兵力の四分の一を抱えています。ただしこの四分の一は固定任務を持たない自由な兵力です。この弟君とケラスは手を組んだのです。いつ反乱を起こすはずだったのかはわかりませんが、それが早まりました」

「いつだ」

「早ければ明日の明け方です」

「なに!」

「ホータンの正体がケイブンであり、ヌーガの正体がゼアハドであること、そして二人がロトル領主様に捕縛されて尋問を受けたことを、ケラスは知ったのです。そして、尋問によって得られた情報が、近いうちにロトル領主様からチャダ領主様に伝わり、自分は破滅するということを」

「だから反乱か」

「はい」

リントスはレカンに、仇討ちの手伝いを頼んだ。それが〈白魔の足環〉を譲り受ける条件だ。リントスの真の仇はケラスだった。チャダ領主がどうなろうと知ったことではないが、ケラスを裁けるのはチャダ領主だ。だからレカンが〈白魔の足環〉を手に入れるには、チャダ領主を助けて恩を売るのが一番いい。

「今すぐロトルを出発して、お前の足なら明け方までにチャダにつけるか?」

「それは少しむずかしいです」

「体力回復薬をやろう。途中で〈回復〉もかけてやる」

「は?」

「オレも一緒に行く」