軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「ありがとうよ。それで、皆への報酬じゃがの」

「モルフェス導師」

「何かの、アリオス殿」

「私は〈自在箱〉を、ユリウスは〈自在箱〉と〈インテュアドロの首飾り〉という貴重な品をいただきました。報酬はこれで充分です」

「そう言ってくれるかの。もちろんアリオス殿にお渡しした首飾りも、すでにあなたのものじゃ。あ、そうじゃ。皆に言うておく。迷宮を出る前に、〈インテュアドロの首飾り〉は隠しておくのじゃ」

「なに?」

「皆に渡した首飾りは、希少で高価な素材を使い、成功率の低い工程をいくつも踏んでできる品で、製法の一部はわししか知らん。ほかの導師がみたら、きっと欲しがる。どんな理由をつけてでものう」

「ほう。そういう品だったんだな」

「ウイーもわかったの」

「はい」

「アリオス殿、ユリウスちゃん、エダちゃん、ウイーの四人には、一人白金貨二枚を報酬とさせてもらいたい」

「えっ。おばばさま。私はおばばさまに雇われたわけではなく、ともに迷宮を攻略したのです。報酬など」

「これからのあんたの生き道を切り開くため、金はあって困るものじゃない」

「え」

「迷宮を出たあと、わしはそうひどいことにはならんと思う。なんというてもわしはモルフェスじゃし、六十二年ぶりのパルシモ迷宮踏破者が犯罪者だというのでは外聞も悪いからのう。むしろ英雄として祭り上げられるかもしれん。じゃが、あんたはそうはいかん」

「はい」

「魔法騎士団は、団の面子をつぶしたあんたを絶対に許さん。表向きはつくろうじゃろうがの。あんた、使いつぶされるぞ」

「……はい」

「じゃからのう。みずから追放刑を望むのじゃ。伯父から譲り受けた財産は全部放棄してじゃ。そうすればあんたは外に出られる」

「おばば、さま」

「外に出たあと金がいる。じゃから白金貨二枚、もらっとくれ。頼む」

「おばばさま。ありがとう、ありがとうございます。でも、ここを出て、いったいどこに行けば」

「私たちの里に来ませんか」

「えっ」

「どこにあるかは秘密ですが、いいところですよ」

「わ、わたしを? イリーズの一族の里に?」

「そこでなら、あなたはさらに剣を学ぶこともできるし、魔法を学ぶこともできます。私の祖母は、かのマザーラ・ウェデパシャ様の直弟子なのです」

「なにっ。なんじゃと?」

「おばばさま?」

「ウイーよ。エラ・モルフェスの師が、そのマザーラ・ウェデパシャ様なのじゃ」

「えっ」

「その直弟子がまだご存命とは。そうか。長命種じゃったか。なんと、なんと。ウイー。これは天の差し向けじゃ」

「おばばさま」

「やれやれ。これでわしも安心じゃ。もう何の心残りもない」

マザーラ・ウェデパシャの名が出たとき、ジザもイリーズの里に行きたいと駄々をこねるのではないかとレカンは思った。だが、そうはならなかった。

今のジザは疲れ果て、気力を失っているのだ。ただしそれは満足感に満ちた幸せな脱力感であるにちがいない。

「来ていただけますか。私のもとに」

「は、はい」

「よかった。私たちはあなたより先にこの町を出ることになると思います。ロトルの町に、〈野兎の悲鳴亭〉という宿があります。そこで落ち合いましょう」

「はい。アリオス殿」

「うん、うん。よかった、よかった。あ、皆に頼みがある。百五十一階層に出たのは〈混沌の魔狼〉だったということにしておいてくれんか。百五十階層の主は真っ黒な魔狼じゃったことにしての」

「うん? どうしてだ?」

「わからんことが多すぎる。領主や一部の導師、理事には真実をこっそり伝えるが、それもどこまで信じてもらえるか。最下層の主は〈混沌の魔狼〉なのだという定説を否定するようなことを言えば、よぶんな混乱が起きる。それにレカンちゃん。白炎狼が出たなどと知られたら、その毛皮はまちがいなく取り上げられるぞ」

「よし。最下層の魔獣は〈混沌の魔狼〉だった。間違いない」

「それにしても、レカン。倒したら毛皮になってるって、不思議だよね」

「ちょうどいい宝箱がなかったんだろう」

「なるほど。そうだったんだね」

「はは。あ、そうだ。モルフェス導師」

「何かの、アリオス殿」

「百五十階層に跳べる条件について仮説があるのです」

「なんとな」

「単なる思いつきですが、聞いていただけますか」

「ぜひ聞かせてほしい」

「何日間か泊まりがけで探索しないと百五十階層に跳べないのではないでしょうか」

「なん……じゃと」

「百五十階層に跳ぶ確率だけが異常に低いというのは、どうもふに落ちないのです。それより、一定の条件を満たさないと百五十階層が候補にのぼらないと考えたほうが納得できます」

「あ。そうか。外から来た冒険者だったら、何日間か泊まり込むのも当たり前だもんね」

「オレたちは七日間泊まり込んだから、必然的に百五十階層に跳んだのか?」

「うーん。そこはよくわかりません。何日か泊まり込んだら必ず百五十階層に跳ぶというのも妙な気がしますし。ほかにも条件があるかもしれませんし」

「考えもせなんだ。わしは研究者失格じゃ。その可能性に気がつかなんだとは。そうじゃ。そうにちがいない。エラ・モルフェスが迷宮を踏破したときも七日間かかった。あれはメンバーの一人が百階層に達しておらなんだためだったのじゃが、そこに鍵があったとは。アリオス殿。よいことを教えてもろうた。さっそく検証に着手しますわい」

「エラ・モルフェスが七日間かかって百五十階層に行けたんなら、おんなじことをやってみようとは思わなかったのか?」

「レカンちゃん。エラもそのときは百五十階層に行けるとは思っておらなんだのじゃ。百階層に行けたから、〈転移〉で地上に戻ろうとして、転移先の候補をみたら百五十階層があった。いったん外に出れば、自分も仲間に加えろとか、うちの派閥の者も参加させろと言い出す者が出る。じゃがエラはメンバーをいじられたくなかったので、そのまま最下層に挑戦した。踏破はできたが仲間が四人死んだ。そのことを悔やんだエラは、百階層以下に行くときは、万全の状態を調えるようにと、皆に厳しく言い残したんじゃよ」

「なるほどな」

「アリオス殿。しかしそうすると、迷宮の主が白炎狼に変わったことも、何か条件があったのじゃろうか」

「おばば」

「何じゃな、レカンちゃん」

「迷宮では、時々特殊な個体が出ることがある。特に迷宮の主の場合、何十回か何百回に一度、変わった種類の主が出ることがある。何かの条件があるはずだと決めてかかると、落とし穴にはまるかもしれんぞ」

「なるほどのう。迷宮の熟練者ならではの助言じゃな。忘れんようにしよう。しかしまさか〈白炎狼〉が出るとは。言い伝えはそういう意味じゃったのか」

「言い伝え?」

「そうじゃよ、レカンちゃん。この迷宮は〈狼の迷宮〉と呼ばれるが、それは出現する魔獣が魔狼であるからだけではないのじゃ」

「ほう?」

「この迷宮の守り神、そしてパルシモの町の守り神は、白炎狼じゃといわれておるのじゃ」

「ほう。すると守り神様を倒してしまったわけか」

「うわあ。そりゃ公表しにくいよね」

「そういうことじゃよ、エダちゃん」