軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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一階の食堂の奥まった席に、小柄な老婦人がちょこんと座っている。その周りには大勢の従業員が立って待機している。彼らの顔にはありありと敬意が浮かんでいる。

おそらくジザは、この町の人々にとって英雄なのだ。とりわけ迷宮関係者にはそうなのだろう。それはジザ自身の功績によるものでもあるが、ジザの母や祖母の功績も含め、モルフェス一族がこの町で特別な位置にあることを示している。

「おばば。久しぶりだ。前回の探索では世話になった」

ジザはしわの刻まれた顔をくしゃりとゆがめて笑顔を浮かべた。

「ひょっ、ひょっ、ひょっ。また会えてうれしいよ、レカンちゃん。そして、八十階層到達おめでとうさん」

「ああ」

レカンがジザの向かいの席に座ろうと椅子を引くと、ジザがこう言った。

「出ようかの」

レカンは動きを止めた。

(ははあ)

(人に聞かれたくない話をしたいんだな)

「わかった」

ジザはすっと立ち上がり、立てかけてあった杖をとって、とことこと入り口に向かって歩き始めた。

レカンがそのあとに続く。

宿の従業員たちがそのあとに続く。

ジザが入り口を出たあとも、何人かの従業員がついてこようとした。

「ついてこんでええよ」

ジザの言葉を受けて従業員たちは立ち止まり、深く礼をして、歩き去るジザとレカンをみおくった。

ジザは森のなかに入っていった。

宿や受付の建物がまったくみえない位置まで進むと、ジザは立ち止まって振り返った。

「ヴィドゲライプスヤーナ」

意味のわからない言葉をジザが発すると、ジザとレカンを魔法の結界が取り囲んだ。

(古代語魔法だな)

(防御障壁のようではないが)

(消音結界かもしれんな)

「レカンちゃんや。おぬしと一緒に八十階層までもぐった探索者たちは、そこから先に進む気はないと聞いた」

どうしてそんなことを知っているのだろうかと一瞬思ったが、考えてみればジザはこの迷宮都市で高い地位にあり、各方面に顔が利く。ジザが受付の係員たちにレカンの動向を報告するようにと命じれば、レカンに関するあらゆる情報が、その都度ただちに報告されるだろう。

「ああ」

「じゃがおぬしはその先に進みたいと思っておる」

「ああ」

「同行者に当てはあるのかの」

「今のところ、エダとユリウスだけだ。この二人は一緒の穴にもぐらせるつもりだから、最低でもあと三人はいる。依頼を出してみつけるつもりだ」

「わしを連れていかんか」

「あんたは八十階層より下に潜ることを禁じられているだろう」

「ひょっ、ひょっ、ひょっ、ひょっ。知っとったか。というても理事会が導師に命令を発することはできんでな。要請にすぎんよ。ただし、この要請に背いたら、魔法研究所の施設の使用を禁じるとともに、わしをパルシモの町から追放するよう領主に要請するという条件がついておるがの」

「それはまずいんじゃないか?」

「パルシモ迷宮の百五十一階層を踏破できたら、何を失おうが、町から追放されようが、わしはかまわん」

レカンはじっとジザの目をみた。

みつめ返すジザの眼光は鋭い。

「おんしが言うた通りじゃ。わしは迷宮踏破を一度も諦めたことはない。来る日も来る日も踏破の夢をみながら、ひたすら牙を研いで待ち続けておったのじゃ。わしの同行者たるにふさわしい力を持った探索者が現れるのをな」

「オレはあんたのお眼鏡にかなったか」

「かのうたとも。おんしは、わしの最後の希望じゃ」

老いは肉体と精神を弱らせる。牙を研ぎ続けたといっても、今のジザは全盛期に比べれば弱いはずだ。とはいえ、この老女がけた外れの力を持った魔法使いであることはまちがいない。

(待てよ)

(おばばはトルーダと知り合いだったな)

知り合いどころか、〈魔矢筒〉の開発をともにおこなったのだから、ある意味同志だ。そしてジザは〈魔矢筒〉の発明者なのだから、トルーダにとって敬仰すべき先達であり恩人だ。さらにいえば、ジザはトルーダに〈自在箱〉を与え、恩を売っている。トルーダからジザにレカンの情報が流れていても何の不思議もない。とすると、八十階層まで一人で穴に潜り続けて危なげなく五頭の魔狼を倒してきたことも、たぶんジザは知っている。そこからレカンの物理および魔法攻撃力を評価しているのだ。

(考えてみたらトルーダのパーティーと共同探索できたのも)

(ゾイルのパーティーと共同探索できたのも)

(裏でおばばが糸を引いていたのかもしれんな)

「あんたが加わっても、まだ人数が足りん」

「そうじゃの。この迷宮を探索するには、最低でも五人はいるのう。じゃがな、レカンちゃん。五人が五人、希代の強者である必要はなかろう。わしとおんしがおれば、最下層の主に挑戦できる。結局、ほかのメンバーは人数合わせじゃて」

「ふふふ。強気だな、おばば」

「今すぐにでも迷宮に飛び込みたいぐらいじゃよ」

「オレ、あんた、エダとユリウス。これで枠が三つだ。あと二つはどうする」

「わしに心当たりがある。魔法使い三人と物理職三人を連れて来る」

「ほう」

「どうじゃな、レカンちゃん」

「乗った」